院内カフェ の商品レビュー
相田亮子は大して売れない作家活動の傍ら、土日は病院内のカフェでバイトしている。 受付カウンターの隣にある、そのカフェはチェーン店で、病院だからと言って特別メニューを出すわけではなく、他の支店と同じラインナップだ。 仕切られているわけでもなく、もちろん入り口ドアも無い。 ベージュ...
相田亮子は大して売れない作家活動の傍ら、土日は病院内のカフェでバイトしている。 受付カウンターの隣にある、そのカフェはチェーン店で、病院だからと言って特別メニューを出すわけではなく、他の支店と同じラインナップだ。 仕切られているわけでもなく、もちろん入り口ドアも無い。 ベージュのリノリウムの床が、こげ茶のフローリング風味に変わるところ…そこが境界線。 入院患者も来るし、家族や、見舞い客も来る。 医師や看護師、もちろん病院とは関係ない人が外から来ても構わない。 皆、平等に“お客様”である。 病院内にあって病院ではなく、しかし完全に日常の街ではない、ある意味、病院に存在する“異物”かもしれない。 亮子はつい、お客様の言動が気になってしまう。 大声で同じことを繰り返す、黄緑のジャンパーの小男、スマホから目を離さない毛深い医師。 夫に飲み物をぶちまけた、品のいい中年女性。 亮子は夫との間に子供ができない。 自分の遺伝子は要らないと、神様に言われているような気がする。 バイトの村上くんが語る、人類には無用の長物となった免疫反応の話。 免疫障害で起きる深刻な病気の話が出るのも、舞台が病院らしいところ。 しかし、医療小説ではなく、それぞれの日常の、人生の話である。 境界のあいまいさがこの本の優しいところだ。 変わったものも、いらないと思われるようなものでも、等しく存在を許され、世界に肯定されている。 独立してそこにあり、誰も拒まないカフェのように。 もう一杯、好きなものをこれで。 残ったら「歳末助け合い」の箱に。 メリークリスマス。
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病院は異空間。あの中に足を踏み入れると例え家族の付き添いでも健全な世間とは隔離されたような気持ちにさせられます。 そんな中で唯一世間に戻れた気になるのが病院内のカフェでした。 あの頃の気持ちを何年も経って偶然手に取った小説で思い出すとは。 変わらないあの場所にほっとしたことがある人なら、きっと苦しいほど共感してしまう小説。 登場人物をみんな応援したくなるお話。 なぁーんだ、これも“いい話”じゃないの(*^^*)
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2017.03.25 病院に併設されたコーヒーショップでの群像劇。 読みながら自身と重ねてしまい、涙。 30代の今。これから年を重ねて60歳になることを理解していながらまだ遠い先の事、と考える事を放棄していたが、しっかり想像してみた。
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今、母親が通院してる中でリアルに感じる。 何度も見舞いに行った父親の時も、ただ、食堂に行くのと後にできたカフェに行くのが楽しみなんだと・・介護から、自分自身も病んでしまう人(頑張って介護したのに本人がくも膜下のようで、何も家事が出来なくなった人) 患者と距離取れない医者、甥が亡く...
今、母親が通院してる中でリアルに感じる。 何度も見舞いに行った父親の時も、ただ、食堂に行くのと後にできたカフェに行くのが楽しみなんだと・・介護から、自分自身も病んでしまう人(頑張って介護したのに本人がくも膜下のようで、何も家事が出来なくなった人) 患者と距離取れない医者、甥が亡くなったときの助けれなかったことに憔悴していた医者。 細々と病院で起きること。 全部の病院にカフェテリアでもカフェでもあれば良いなと、思う。 感想は本文中のものではありません。
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総合病院に併設されたカフェで働く作家の相田さんと村上くんや、一風変わった常連客、入院患者やお見舞いの方などなど、カフェを中心とした短編集です 短編はそれぞれの登場人物の心のうちが丁寧に描かれていき、うまく繋がっていきます 病気や介護、不妊など因果応報などではなく、理不尽でも受け...
総合病院に併設されたカフェで働く作家の相田さんと村上くんや、一風変わった常連客、入院患者やお見舞いの方などなど、カフェを中心とした短編集です 短編はそれぞれの登場人物の心のうちが丁寧に描かれていき、うまく繋がっていきます 病気や介護、不妊など因果応報などではなく、理不尽でも受け入れなくてはならないことに対する考え方、気持ちの持っていき方が素敵でした 私も身近に介護問題も不妊問題もあるため、考えさせられる部分と共に、救われる部分もあったり… 病院にありながら、病院ではない存在の【カフェ】の強さを私もいつか必要とするかもしれないなと思います
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病院のなかにあるカフェ。 カフェで働く小説家で不妊の相田さんと同僚の村上くん。 両親の介護のすえに看取った喪失感を抱えたまま、今度は夫の難病にすれ違う藤森夫婦の気持ち。 無神経そうに見えるカフェの常連医師、ゲジデントと 同じく常連の挙動不審なウルメの意外な関係。 病院という場所で、日常と同じような空間を漂わせるカフェ。 どんな生き物でも、生まれてきた価値はあると。 相田さんと夫が不妊についての会話と カフェで相田さんと村上くんとのやり取りが好き)^o^(
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図書館で借りたもの。 病院内のカフェに集う人々の連作短編集。 勝手にほっこり系かと思ってたけど、病院にあるカフェだもんね。そんな訳なかった。 親の介護かぁ~いつか私にもその日がくるのかな。自信ないわ。 ラストがいまの時期にぴったりで、なんだか嬉しかった。
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総合病院の1階にあるチェーン店のカフェ。そこで働くバイトの売れない作家、そこに集まる客・患者・病院関係者。 カフェで起こるちょっとしたドラマや、その背景を追っていく。 最後のクリスマスのエピソードで、全部のストーリーや登場人物がそれぞれに、ちょっとハッピーな気分になれて終わる。
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総合病院内にあるチェーン店のカフェ。7編の短編だがそれぞれ登場人物がつながっている。病院という閉鎖空間の中のカフェなので、入院患者やその家族が訪れそれぞれ病気や苦悩を抱えているが、カフェ店員さんのサービスは町のカフェと同じ、それよりも優しくてほっとする。カフェ行きたいと思った。「...
総合病院内にあるチェーン店のカフェ。7編の短編だがそれぞれ登場人物がつながっている。病院という閉鎖空間の中のカフェなので、入院患者やその家族が訪れそれぞれ病気や苦悩を抱えているが、カフェ店員さんのサービスは町のカフェと同じ、それよりも優しくてほっとする。カフェ行きたいと思った。「お湯のSください」ってくすっと笑えた。
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院内のカフェに来る不思議な人たちが、少しずつつながっていく、優しくて温かいお話。読み終わった後も幸せな気持ちが残ります。病気と向き合うこと、寄り添うこと、色々考えさせられました。
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