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ヒトラーとナチ・ドイツ の商品レビュー

4.2

46件のお客様レビュー

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2018/05/29

◆今こそ読むべきは、ドイツ・ナチス党の権力掌握過程。本書を読むに、如何にこれを反面教師にできるかは、読み手の想像力にかかっていることは確か◆ 2015年刊行。 著者は東京大学大学院総合文化研究科教授(地域文化専攻)。  チャーチル評伝の後は、ヒトラーかスターリン、又はルーズ...

◆今こそ読むべきは、ドイツ・ナチス党の権力掌握過程。本書を読むに、如何にこれを反面教師にできるかは、読み手の想像力にかかっていることは確か◆ 2015年刊行。 著者は東京大学大学院総合文化研究科教授(地域文化専攻)。  チャーチル評伝の後は、ヒトラーかスターリン、又はルーズベルト、で紐解いた本書。  ただし本書はヒトラー評伝と言うより、ナチス党の形成・拡大・権力掌握過程、その権力機構と実際の政治活動・政策遂行を軸に展開する(勿論、中核たるヒトラーが等閑視されはしない)。  読後感は唯々全く笑えず、顔が引きつるというもの。そう思うのはユダヤ人や非ナチ派、自由主義者への共感に拠るのとは少し違う。  では何故か?。10年代日本での読了だから。  さて、本書の印象的な箇所。  一つは「我が闘争」読破時も感じた、ユダヤ人と共産主義者(というよりボルシェヴィキ)とを根拠なく同一視する論法の無思慮性(ここではロシア革命をユダヤ人陰謀論で語る点)。  発言の根拠の提示を求め続ける心構え、行動の必要性を痛感したところ。  そして、ヒトラー首相就任時、閣僚的には少数のナチ党だが、内相ポストを押さえたことの意味(=危険性)が明快に。  現代日本なら国家公安委員長(内閣府の外局)のポストと実権の掌握者如何となろうか。  さらに、キリスト教改宗者を包含すべく、人種・血の故をもってユダヤ人の差別立法を数多成立せしめた。  この点、法規範的には、ユダヤ人が、祖父母3人以上の場合は真正ユダヤ人、2人で一級混血、1人で2級混血で、それ以外は非ユダヤ人と区分けする。ところが、科学的技術的にユダヤ人とアーリア人とを区別する手段はなく、外形・外貌では区別が不可能である。要はユダヤ人との証拠がないのだ。そして結局は血で区別するとしながら、ユダヤ教のコミュニティへの帰属如何、宗教的紐帯への帰属如何で区別するという矛盾を抱えていた。  そして権力分立制(自由の砦)と議会の権限(政治行動の民主的正当性)を奪った授権法の歴史的意味も感得できる。

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2018/03/18

どうやってヒトラーはドイツのトップに立ち、ドイツがあの暴走に至ったのかを初めてきちんと知れた気がする。「ヒトラーのカリスマ」だけでは説明しきれない政治的な流れもあったし、色んな人の思惑が結果的にヒトラーに権力を集中させていた。ホロコーストを理解する上で、この本はとても有用なことを...

どうやってヒトラーはドイツのトップに立ち、ドイツがあの暴走に至ったのかを初めてきちんと知れた気がする。「ヒトラーのカリスマ」だけでは説明しきれない政治的な流れもあったし、色んな人の思惑が結果的にヒトラーに権力を集中させていた。ホロコーストを理解する上で、この本はとても有用なことを教えてくれた。

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2018/03/11

本書はドイツにおいてナチ党(国家社会主義ドイツ労働者党)の党首アドルフ・ヒトラーが政権を担っていた1933年から1945年、いわゆるナチ時代及びそこに至るまでの過程を取り上げたものである。 筆者の石田勇治は東京大学大学院教授、近現代ドイツの研究者であり、本書以外にも『ナチスの「手...

本書はドイツにおいてナチ党(国家社会主義ドイツ労働者党)の党首アドルフ・ヒトラーが政権を担っていた1933年から1945年、いわゆるナチ時代及びそこに至るまでの過程を取り上げたものである。 筆者の石田勇治は東京大学大学院教授、近現代ドイツの研究者であり、本書以外にも『ナチスの「手口」と緊急事態条項』(集英社新書、2017年)や『20世紀ドイツ史』(白水社、2005年)などの著書があり、メディアでもヒトラーやホロコーストに関する解説として出演している。 本書の特徴はヒトラーとナチズム、ホロコーストに関する最新の歴史研究の知見をコンパクトにまとめている点にある。そもそも、そうした研究は冷戦終結後の1990年代になって一気に進展したという背景がある。それに関して本書では「旧ソ連・東欧圏の文書館資料が閲覧可能となり、長らく不明とされていた歴史の細部に光があてられるようになったこと、またそれまで自国の負の歴史の解明に必ずしも熱心でなかったドイツの歴史学が、研究者の世代交代も相俟って、若手を中心に積極的に取り組むようなったことに負っている(本書5頁引用)」 とある。 このように、第一次世界大戦終戦から100年を迎える現在、ドイツ・ナチ時代の研究の成果を読む事は、今の時代を見る視点を養う事でもあると思う。ナチ時代に本当に何が起きたのか。それを考察する現代的な意味は大きい。  全体の構成は全7章で構成される。1~2章はヒトラーの登場からナチ党の台頭、1910年代からナチ党がその得票率のピークを迎える1932年7月の国会選挙までを描いている。3~4章ではヒトラーが首相に任命され、ヒトラー政権が成立した1933年からのその権力基盤が確固とした1934年末にかけての1年半に起きた社会の「ナチ化」の過程を取り上げる。5~7章では1933年から1945年までの「ナチ時代」を扱う。1939年の第二次世界大戦勃発までを前半とし、その評価の難しい「平時」における人々の捉え方、つまり「比較的良い時代だった」という声を雇用の安定と国民統合という観点から捉える。後半、つまり戦時において起きた国家的メガ犯罪と筆者が表現する「ホロコースト」に帰着した要因を、レイシズム、反ユダヤ主義、優生思想の発展とともに検討している。  非常にまとまっている上にどの章にも気になる点があるのだが、ここでは二つ気になる点を取り上げる。  第1章のヒトラーが従軍していた時代の話で、「過酷な塹壕戦の中で生じた無二の戦友愛と自己犠牲。階級や身分、出身地を超えて堅く結びついく兵士の勇敢な戦い」(本書26頁引用)を基に民族共同体の原風景を描いた、という部分だ。しかし、実際にはそれを経験していないヒトラーの矛盾という形で本書の指摘はあるように思われる。むしろ、実際に経験していないからこその「民族共同体」という幻想を生み出すことが可能とも考えられる。つまり、「戦争を経験していないからこそ戦争を美化する(できる)」という現代にも見られる現象がここにはあるように思えた。  第6章において反ユダヤ主義の法律「ニュルンベルク人種法」の中でユダヤ人の定義に関する矛盾がでてくる。これはユダヤ人を宗教ではなく人種として規定してきたナチスが結局帰属する信仰共同体によって判断するという矛盾だ。こうした矛盾とまではいかないが違和感は現在でも国際ニュースを見ていて感じるときがある、それは今でもユダヤ教徒をユダヤ人と呼称するからだ。その理屈であれば、イスラム人やキリスト人もいなければならないのでは?と思ったりもする、そんな違和感を感じた。

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2018/01/02

 本書を読むまではヒトラーが物凄いカリスマ性を持ち合わせた人物というイメージを持っていたが、読み終えてみると様々な人が、自らの欲望を満たすためにヒトラーを上手く使おうとしていたに過ぎないような印象を持った。  最終的にヒトラーは、それらの人を足場にして台頭していくことになるが、台...

 本書を読むまではヒトラーが物凄いカリスマ性を持ち合わせた人物というイメージを持っていたが、読み終えてみると様々な人が、自らの欲望を満たすためにヒトラーを上手く使おうとしていたに過ぎないような印象を持った。  最終的にヒトラーは、それらの人を足場にして台頭していくことになるが、台頭を許すことになったドイツ国内情勢についても言及されており、多くのことを学ぶことができた。

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2017/11/11

第1次大戦後~第2次大戦終結までのドイツに対するなぜなぜを概括的に解き明かしてくれる入門書。  共和制政治の人気が落ちていったのは経済政策の不成功に対する大衆の失望に起因し、それをプロバガンダで巧妙に惹きつけたのが隆興時期のヒトラー。大統領と首相を兼ねる総統に上り詰めるや、憲法停...

第1次大戦後~第2次大戦終結までのドイツに対するなぜなぜを概括的に解き明かしてくれる入門書。  共和制政治の人気が落ちていったのは経済政策の不成功に対する大衆の失望に起因し、それをプロバガンダで巧妙に惹きつけたのが隆興時期のヒトラー。大統領と首相を兼ねる総統に上り詰めるや、憲法停止の授権立法を頻発し、かつ、共産党などを徹底的に弾圧してもはや誰もモノを言えなくした政治手法。  安倍自民党の圧勝が(見せかけながらも)経済政策の成功による集票の成功にあることと似ているのが少し怖い。結局、国民は経済政策に長けてる政府しか支持しないのはドイツも日本も同じようで、皮肉にも政治家が読むと役立つ本なのかも

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2017/08/14

ひどい差別思想で初めは集会が禁止されていたナチ党。ベルサイユ条約への国民の怒りに取り入り、右翼左翼に激しくふれる地方都市バイエルンでの一揆(失敗)、逮捕(名誉監獄)を経て30%超の支持獲得に至り、保守派大御所のヒンデンブルクと連携する、本来その程度の支持ならありえない首相指名獲得...

ひどい差別思想で初めは集会が禁止されていたナチ党。ベルサイユ条約への国民の怒りに取り入り、右翼左翼に激しくふれる地方都市バイエルンでの一揆(失敗)、逮捕(名誉監獄)を経て30%超の支持獲得に至り、保守派大御所のヒンデンブルクと連携する、本来その程度の支持ならありえない首相指名獲得を得る。。。共産主義者による議事堂炎上やユダヤ人少年によるドイツ人外交官射殺を、国民感情を煽るのに巧みに利用し、「非常時だから仕方ない」「極端な危険思想に染まらなければ弾圧されることはない」と思わせて基本権の停止や授権法を実現する。 ヒトラーは集会や宣伝の大切さを大事にして弁士をコツコツと育てるという実直さも持ち合わせていた。相手によって演説の内容を変えたり、想定問答を作って地道に共感を得る努力を重ねる。演説は国の現在を悲観するところから始まり、激しく怒りを代弁し、必ず解決すると約束するパターン。国連やユダヤ人を敵扱いしてののしる。現代のポピュリズムにも通じるところがある。 景気回復や領土奪還などところどころで国民の支持をつかみ「この人がいなくなったらまた状況が悪くなる」と思わせるあたりは、こういうところに乗せられてはいけないなと肝に銘じてしまった。「一鍋日曜日」のような一見、慈善活動以外の何ものでもない活動もしだいに協力しないでは済まされないイベントになり、国民を全体主義に巻き込んでいくのに活用されてしまう。こういったものにいかに「参加しない自由」が大切か感じさせられた。 国際会議で他国から「移民を受け入れられない」というコメントをわざわざとってからユダヤ人を迫害したり、悪さをするときにも何かと伏線をはる。在外ドイツ人を呼び戻し、家を確保するため、失業アーリア人を就業させるため。。。ホロコーストは自分の思い込みでやめなかったが、それでも隠しながらやった。一人ひとりが自分の考え方をあきらかにできる社会であることが本当に大切だと思った。

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2017/08/01

ドイツ近現代史の研究者による本だけに、ナチス・ドイツの成り立ちについて、勉強になる内容だった。一弱小政党であったナチス党とヒトラーが国のトップに上り詰めていった経緯について(前半)は、特に価値があると思う。 後半、ヒトラーにとっての戦争とは、対ユダヤ戦争だった、と強く印象に残る...

ドイツ近現代史の研究者による本だけに、ナチス・ドイツの成り立ちについて、勉強になる内容だった。一弱小政党であったナチス党とヒトラーが国のトップに上り詰めていった経緯について(前半)は、特に価値があると思う。 後半、ヒトラーにとっての戦争とは、対ユダヤ戦争だった、と強く印象に残る内容記載となっているが、これは本書だけでは表現しきれない内容のため、特に強調したかった点が印象に残っているせいかな、と思っています。 読みながら強く興味を惹かれたのは、ヒトラーの人となり、です。本書では、ヒトラーの思想形成に影響を与えた人物などについては触れられていますが、ヒトラー個人の「中身」についての深い言及はありません。 (この点だけで内容が膨大になってしまうから、かとは思いますが) 今後、ナチスドイツに関する書を手に取るとするなら、このあたりでしょうか。 近頃、日本でもレイシズムという言葉を頻繁に聞くようになったからこそ、なったからこそ、ナチスドイツは深く知りたいテーマです。

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2017/07/09

ヒトラーの首相就任以降の物事の進み方のスピードに改めて驚かされる。 あと、そうする意図はないつもりだが、どうしても安倍政権との共通点を随所に見つけてしまう。 個人的には、ナチ時代のドイツ国民がユダヤ人迫害に声をあげなかった理由が興味深かった。 ・人口の1%にも満たないユダヤ人の...

ヒトラーの首相就任以降の物事の進み方のスピードに改めて驚かされる。 あと、そうする意図はないつもりだが、どうしても安倍政権との共通点を随所に見つけてしまう。 個人的には、ナチ時代のドイツ国民がユダヤ人迫害に声をあげなかった理由が興味深かった。 ・人口の1%にも満たないユダヤ人のことはドイツ国民にとって大きな問題とはならなかったということ ・あからさまな反ユダヤ主義者ではなくても、多くのドイツ国民がユダヤ人迫害から何らかの利益を得ていたということ 現代の日本と沖縄の関係に似ているな、と。

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2017/05/12

ドイツ史の本は今までほとんど読んでいないが、本書を読むと歴史を学ぶことの重要性が身にしみる思いがする。 現在からはヒトラーのジェノサイド政策や恐怖政治は皆が知ってる事実だが、同時代にはカリスマとして君臨しており、戦後もこの時代を良い時代として懐かしむ人々が多いことに驚く。 その理...

ドイツ史の本は今までほとんど読んでいないが、本書を読むと歴史を学ぶことの重要性が身にしみる思いがする。 現在からはヒトラーのジェノサイド政策や恐怖政治は皆が知ってる事実だが、同時代にはカリスマとして君臨しており、戦後もこの時代を良い時代として懐かしむ人々が多いことに驚く。 その理由を知る入門書として本書は読みやすくわかりやすいと思えた。 著者は本書の続編として「過去の克服ーヒトラー後のドイツ」を上梓しているそうだ、こちらも読んでみよう。 2017年5月読了。

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2017/04/15

以前からナチスやヒトラーには興味があったが、小説に出てくる程度で満足していた。何故か自分でもよくわからないが、きちんと知っておきたいという思いが、この頃強くなってきた。 いくつか読んでみたい本がある中で、まずはこちらを読んでみた。 ヒトラーが歴史の表に登場する前から、権力を掌握...

以前からナチスやヒトラーには興味があったが、小説に出てくる程度で満足していた。何故か自分でもよくわからないが、きちんと知っておきたいという思いが、この頃強くなってきた。 いくつか読んでみたい本がある中で、まずはこちらを読んでみた。 ヒトラーが歴史の表に登場する前から、権力を掌握し戦争、ホロコーストと突き進み自殺するまでを書いている。 ヒトラーに明確な政治思想は無かった。 それなのに、何故ドイツ国民は彼に国家を委ねてしまったのだろう。 第一次世界大戦に敗れ、対外的に弱い立場となり、国民に希望が喪われていたドイツにとって、巧みな話術で強いメッセージを伝えるヒトラーに未来を託したくなっても不思議ではないのかもしれない。 今、日本を含めた世界中があの頃のドイツと同じ状態になりつつあるように感じてならない。 自国の発展のみを考え、自分たちの苦労を誰かのせいにしようとする政治家に躍らされている。 わたしは今まで、ヒトラーが選挙により首相に選任された頃は、国民の圧倒的支持を得ていたと思っていた。 しかしどうやら当時ナチ党は、一定の支持は勿論あったが、頭打ちの状態にあったようだ。 ヒトラーが首相に任命されたのは、ヒンデンブルク大統領の政治的な考えによるものだった。ヒトラーを利用しようとしていたヒンデンブルクが、結果としてはヒトラーに利用されたと言っても良いだろう。 国民の中にはヒトラー政権に不安を憶える者もいたとは思う。しかし国民の多くが様子を見ていたり、流れに乗ったり、目先の利益に目がいっている間に、ヒトラーは独裁体制を調えてしまう。国民の多くが不安と恐怖を間違いようのない現実と気づいたときには、反対の声をあげることさえ出来なくなってしまった。 こういうことはドイツに限らずどこの国でも起こり得る。 しかし、人間は見たくない現実からは目を逸らす。自分たちはドイツのようなことにはならないと、根拠もなく信じている。 ヒトラーよりも国民のほうが、遥かに恐ろしいくらいだ。 歴史は絶妙なタイミングで、主要な人物をふさわしい場所に送り込む。 確たる思想もなく日和見に生きていた平凡であるはずの男を、世界中の誰もが知る有名な歴史上の人物にしてしまう。 歴史は繰り返す。 きっといつか第二のヒトラーが現れる。 もう、既に現れているのかもしれない。

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