「学力」の経済学 の商品レビュー
タイトルに惹かれ手に取った一冊。 教育や学校において、タブー視されていた内容に切り込んでいます。これまで妄信的に信じられたきたことが、データをとって比較検証することで、必ずしも見込んでいた結果と異なることが多いことが良く分かります。 ただ、教育というものは、個人それぞれ受け止め...
タイトルに惹かれ手に取った一冊。 教育や学校において、タブー視されていた内容に切り込んでいます。これまで妄信的に信じられたきたことが、データをとって比較検証することで、必ずしも見込んでいた結果と異なることが多いことが良く分かります。 ただ、教育というものは、個人それぞれ受け止める側の問題、教師の問題、家庭環境、学校やその周辺の環境、友人などの人間関係など、ばらばらであるため、このような統計結果のとおりになるわけではありません。そういう意味での実証は難しいのですが、教育を投資で考えた場合、どの方法がより効果があるのか、という視点を持つことは、どのような分野であっても重要であり、教育分野のみ異なるというものではないでしょう。 そういう当たり前でありながら、そこに踏み込めない現状にメスを入れる、提言であるといえます。 最後に著者が言っていたように、多くの統計データを開放し、様々な立場で研究が進むことで、よりよい方向に進んでいくことを期待します。 ▼教育経済学=教育を経済学の理論や手法を用いて分析することを目的としている応用経済学の一分野 (例)ご褒美で釣っても「よい」 ほめ育てはしては「いけない」 ゲームをしても「暴力的にはならない」 「どういう教育が成功する子どもを育てるのか」という問いについて、その原因と結果、すなわち因果関係を明らかにすること ▼ご褒美は「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべき(アウトプットにご褒美を与える約束をしても、子どもはどうしていいか分からない) ▼「能力をほめることは、子どものやる気を蝕む」 具体的に達成した内容をほめること ▼子どもや若者は、反社会的な行為について、友人からの影響を受けやすい ▼もっとも収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)。人的資本への投資はとにかく子どもが小さいうちに行うべき ▼どんなに勉強ができても、自己管理ができず、やる気がなくて、まじめさに欠け、コミュニケーション能力が低い人が社会で活躍できるはずはない。一歩学校の外へ出たら、学力以外の能力が圧倒的に大切 ▼「どういう学校に行っているか」と同じくらい、「どういう親のもとに生まれ、育てられたか」ということが学力に与える影響は大きい ▼学校で平等を重視した教育―「手をつないでゴールしましょう」という方針の運動会などーの影響を受けた人は、他人を思いやり、親切にし合おうという気持ちに「欠ける」大人になってしまう ▼国民の税金を投じて収集されたデータは政府の占有財産ではない。国民の財産であるべき <この本から得られた気づきとアクション> ・どのような政策にしても、それを実証する裏付けがなければならい。それを明らかにしていくこと ・教育うだけでタブー視せず、その姿勢を持ち続けること <目次> 第1章 他人の〝成功体験〞はわが子にも活かせるのか? データは個人の経験に勝る 第2章 子どもを〝ご褒美〞で釣ってはいけないのか? 科学的根拠に基づく子育て 第3章 〝勉強〞は本当にそんなに大切なのか? 人生の成功に重要な非認知能力 第4章 〝少人数学級〞には効果があるのか? エビデンスなき日本の教育政策 第5章 〝いい先生〞とはどんな先生なのか? 日本の教育に欠けている教員の「質」という概念
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【ココメモポイント】 ・因果関係・・・Aという原因によってBが生じた 相関関係・・・AとBが同時に起こっている P.21 ・「インプット」にご褒美が与えられた場合、子どもにとって、何をすべきかは明確です。 一方、「アウトプット」にご褒美が与えられた場合、何をすべきか、具...
【ココメモポイント】 ・因果関係・・・Aという原因によってBが生じた 相関関係・・・AとBが同時に起こっている P.21 ・「インプット」にご褒美が与えられた場合、子どもにとって、何をすべきかは明確です。 一方、「アウトプット」にご褒美が与えられた場合、何をすべきか、具体的な方法は示されていません。 P.36 ・子どもが、1日1時間程度、テレビを観たりゲームをしたりすることで息抜きをすることに罪悪感を持つ必要はありません。 P.57 ・「勉強を見ている」または「勉強する時間を決めて守らせている」という、自分の時間を何らかの形で犠牲にせざるを得ないような手間暇の かかるかかわりというのは、かなり効果が高いことも明らかになりました。 P.60 ・子どもや若者は、飲酒・喫煙・暴力行為・ドラッグ・カンニングなどの反社会的行為について、友人からの影響を受けやすいということです。 P.71 ・非認知活動を鍛える手段として、(中略)教室で学んだことを地域社会で問題解決のために生かすような教育や、アウトドア活動なども有効であるといわれています。 P.98 ・教育の収益率の情報を知らされた子どもたちは、知らされなかった子どもたちよりも学力が高くなったことが示されている。 P.107 ・本来、政策目的ではなく「手段」であるはずのものが政策目的化してしまっています。 重要なのは「タブレットを配布すること」ではなく、「何のために配布するのか」でしょう。 P.116 ・成功しないのは、努力をせずに怠けているからだと考えるようになってしまい、不利な環境におかれている他人を思いやることのないイヤなタイプの人間を 多く育ててしまっているのです P.134
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日本の教育は観念的で具体的な根拠がないと感じていましたが目を瞑ったまま何となく信じてしまっていました。 親にも、周りの大人たちにも言われてきたから間違いではないのだろうと。 この本ではそんな当たり前として考えられていた教育理論が正解なのか、正解ではないのかをエビデンスを示しな...
日本の教育は観念的で具体的な根拠がないと感じていましたが目を瞑ったまま何となく信じてしまっていました。 親にも、周りの大人たちにも言われてきたから間違いではないのだろうと。 この本ではそんな当たり前として考えられていた教育理論が正解なのか、正解ではないのかをエビデンスを示しながら説明してくれています。 またエビデンスに欠かせない重要な前提も説明してくれているので、情報の見極め方を学ぶことができます。 (ランダム化比較試験など) データが示されているからといって正しいとは限らないということです。 教育へのアドバイス的な要素よりは、自分でデータを見てしっかりと考えて何が正しいか見極めた上で教育でも何でも選択しなさい、ということ教えてくれる良書でした。
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論拠が不十分な箇所が多すぎる。真面目に勉強したことを頑張ってキュレーションしたのでしょうが、あまりに新規性がない。
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教育政策にエビデンス(科学的根拠)を と言う本。 教育に関する実験の統計データを用いてよりよさ気な方法を紹介している。 思い込みではない数字による説明には説得力がある。 日本でこの手の研究が進まない愚痴は見てて辛い。 統計データは所詮前回はそうだったということを示しているだけ...
教育政策にエビデンス(科学的根拠)を と言う本。 教育に関する実験の統計データを用いてよりよさ気な方法を紹介している。 思い込みではない数字による説明には説得力がある。 日本でこの手の研究が進まない愚痴は見てて辛い。 統計データは所詮前回はそうだったということを示しているだけなのでこのまま鵜呑みにするのは科学的でない。 今後も研究は続けてより多くのデータを集めることでより確からしさが高まるのだろうが難しい話ではある。
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【学力至上主義】 日本では人をつかった大規模・長期の実験的統計をあまりやりませんが、100%解(再現性)を求めることがむずかしいものは、統計を取ることである程度狙い(高確率)を見つけることができます。 しかし、なぜか日本では何十年もかかる人間の調査はあまりしません。 子供に勉強...
【学力至上主義】 日本では人をつかった大規模・長期の実験的統計をあまりやりませんが、100%解(再現性)を求めることがむずかしいものは、統計を取ることである程度狙い(高確率)を見つけることができます。 しかし、なぜか日本では何十年もかかる人間の調査はあまりしません。 子供に勉強させるのに「ご褒美」をぶら下げることは悪いことではないと思います。結局、大人でも報酬等の「ご褒美」でモチベーションを上げて仕事をしています。 ただ、本当に好きなことであれば、ニンジンをぶら下げなくても自ら動きそれにのめりこみます。 本当に好きではないことだけど、やらなければならいこと(究極的にはそんなものはないかもしれませんが)はニンジンをぶら下げてやればいいと思います。 子どもはまだごく狭い範囲の知識しか持ち合わせていませんので、本当に好きなものを見つけるまでは、知識の幅を広げるためにニンジンをぶら下げる方がうまくいきます。
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子育て/勉強のハウツーや成功例が溢れているが各々の持論や評論に過ぎない。政府や学校教育の方針/施策が理にかなっていないにも関らず、親は一喜一憂し信じて頼りにしている。論より証拠‼︎一読して納得すべし。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
科学的根拠に基づく教育を、という本。 まあ国の政策って、根拠がわからなくて、疑問符がつくようなものは教育に限らずたくさんあるよねと。 基本的に政策などを批評する立場の内容が多かったけど、もっとこうすべきという提言があったほうが面白かったかも。 文中で「誉めて育ててはいけない」、と主張してはいるものの、誉めるべきだという本と本質的に同じ事を言ってて、要は褒め方の問題だよと。 面白かったところ - 期末になると学生の親戚の訃報が増える。 - ティーチ・フォー・アメリカ - 日本ではそもそも実験ができず、データも公開できず。そこを切り開こうとしている著者にはリスペクト ちょっと不思議な展開のように見えたところ - 非認知能力のほうが重要といった直後に認知能力をあげる政策の話をしたり - 外的インセンティブが内的インセンティブ を失わせる事にはならないという下りが良く分からなかった。データが一致したと言うだけであって、それこそ因果関係が不明では? - 子ども手当が学力向上を目的としたような考察をしたり
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データに基づく教育効果。 序章の試験と祖母の死の関係の話と 学習、学歴と生涯賃金の話が一番効果が高かった というのが面白かった。 統計をとるには、背景を合わせなければ意味がない (公立学校だけのデータ、少人数制の学校の子の親は他の教育にもお金をかけているかもしれない、など) と...
データに基づく教育効果。 序章の試験と祖母の死の関係の話と 学習、学歴と生涯賃金の話が一番効果が高かった というのが面白かった。 統計をとるには、背景を合わせなければ意味がない (公立学校だけのデータ、少人数制の学校の子の親は他の教育にもお金をかけているかもしれない、など) という部分など非常に納得
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教育に関する実験について、様々な著書や論文の紹介がされている。いくつかは読んだことがあり、細切れの感はある。 それでも内容は直感に反するものがあったり、我が意を得たりというものもあったりして面白い。 筆者の強い主張も感じられてよい。 ただ、統計をうんぬん言うならば、グラフがな...
教育に関する実験について、様々な著書や論文の紹介がされている。いくつかは読んだことがあり、細切れの感はある。 それでも内容は直感に反するものがあったり、我が意を得たりというものもあったりして面白い。 筆者の強い主張も感じられてよい。 ただ、統計をうんぬん言うならば、グラフがなにを表しているか、いくつか重なっている場合はそれぞれなにを示すか、軸上にある点はなにか、説明が無いものがけっこうあってモヤモヤする。 統計にエラー(統計誤差、測定誤差)が表現されていないので、見た目は差があっても有意な差なのかがわからない。 その辺を改善してくれればよい。
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