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絶歌 の商品レビュー

2.9

159件のお客様レビュー

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  3. 3つ

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2016/05/04

読了した今となっては定かではないけど、この本に対しては、えげつないものという印象をもっていた。あれだけの事件の張本人が刑期を終え、静かに生きているはずの今、手記を出すなんて本人も出版社もえげつないと思っていた(太田出版からというのは、どこか意味がありそうな気もしたけど)。世間では...

読了した今となっては定かではないけど、この本に対しては、えげつないものという印象をもっていた。あれだけの事件の張本人が刑期を終え、静かに生きているはずの今、手記を出すなんて本人も出版社もえげつないと思っていた(太田出版からというのは、どこか意味がありそうな気もしたけど)。世間ではけっこう話題になり、そういう意味では読む人も読む人なんだけど、ひょんなことから貸してくれる人がいて借りたからには読んでみた。 大きくは2部構成。1部では、祖母への思いを綴るなど生い立ちから、あの猟奇的な行動を起こした頃のこと、警察に捕まって収監生活を送るまでが書かれている。2部では刑期を終え、24歳で社会に出てから今までの10年あまりの生活が書かれている。 第1部を読み始めて思ったのは、美しい文章だということ。いまどきの文学賞受賞作家の方々でもこんな文章や表現では書けない人もいるよねと思うくらい。神戸郊外の住宅地での出来事を描いているんだけど、ある種、幻想的な風景が浮かんでくる。当時の記憶を何度も反芻しただろうし(取り調べで思い出されられもしただろうし)、推敲の時間もあったからだろし、装飾的な文調や客観的な書きぶりは非難されもするだろうけど、このどこか別世界のような、それこそ小説のような感じが著者にとっては偽りのないスタンスなのかも。当時はそのような世界に生きていたという意味で。 一方、第2部は第1部とは変わって、文調はわりと普通な感じ。刑期を終えてからの隠遁者のような生活が描かれる。過去の贖いとしてしょうがないといえばそれまでのことだけど、周囲が興味本位で関わりすぎ。自分が被害者ってわけでもないんだからそっとしておけばいいのにと思った。一度罪を犯したら、社会から生かさず殺さずで扱われるような感じで、更生の機会もあったもんじゃない。それにしても、著者の家族はすごい。事件があってどれほど世の中から叩かれたかしれないのに、この本を読むかぎりずっとわが子とずっと向き合い続けている。著者も親や家族に対しては自分がわが子で、家族で申し訳ないという思いを何度か書いていて、第1部の事件が起きる前の親子のやりとりの場面なども、どこの家にもありそうな感じで、ごく普通の一家を襲ってしまった不幸って感じがした。 世の中って鈍感なほうが生きやすい。「人を殺してはいけません」とか「赤信号を渡ってはいけません」といったことを、何の疑問ももたず素直に受け取り行動しようともしないならどれほど楽だろう。でもそうした通念に「なぜ」と思ってしまう人がいて、その疑問を追究することは反社会的な行為になってしまうわけで。この本を読む限り、わたしは著者を犯罪者とか悪人とは言い切れない。「彼は自分だ」と思うような部分もあったから。 「絶歌」って何?

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2016/04/30

読んだ。 本人が書いたとは思えない。 かなりしっかりした大人の意見のよう。 うーん、もう少しホンネで書いた方が良かったのではないだろうか・・・?

Posted byブクログ

2016/04/30

読まないよりは読んで良かったと思える本。ただ消費者がお金を出すほどの価値はないと考える。最初に何故この本を被害者遺族に無断で出版したかというと、本文中に"罪悪感による快感"がある模様。元少年Aは悪いことした時に感じる罪悪感が快感に変わってしまうことから無断出版...

読まないよりは読んで良かったと思える本。ただ消費者がお金を出すほどの価値はないと考える。最初に何故この本を被害者遺族に無断で出版したかというと、本文中に"罪悪感による快感"がある模様。元少年Aは悪いことした時に感じる罪悪感が快感に変わってしまうことから無断出版をし罪悪感に苛まれたいという心理があるため無断で出版をしたと思う。 この本は1部(事件当時の話)と2部(社会復帰後)の話で構成されている。1部ではただ只管に常軌を逸した行動が表現されている。 猫を何十匹も殺したとか人を殺した後の芸術性なんかが知りたくてこの本を読んだわけではない。 文章はとにかく比喩表現や有名な方の発言などの引用が多く、無駄な個所が多い。比喩表現が非常に強いためどこか第三者視点でフィクションでも書いているように思えて当事者意識があまり感じられない2部では社会復帰後の話が書かれているが、私的には2部は二つに分解できると感じた。2部の中盤まではほとんど比喩表現がなく、別人が書いたのではと思うぐらい文章の質が変化している。 ここでは彼なりに自分が犯した罪に真摯に向き合おうとした姿勢や努力が感じられた。彼をサポートした人達が本当に良い人達で、応援したくなる気持ちがここではあった。 しかし、終盤が近くなるとまた比喩表現多くなりまた別人が書いたのではと思うぐらい文章の質が変わる。どこか十字架を背負っている自分に酔っているような文章に読める。そして後書きにて今まで散々被害者や被害者遺族の痛みについて自論してきたのに自分の居場所がないから本を出しますごめんなさいで締めくくられる。 誰の何のための本かこの本からはさっぱり読み取れないため、スカスカな内容だった。 本を大量に読んでいることが伺えるため、本に登場する様々な人物から情報を得て新しい人格を作った感じがする。 結局、自己顕示欲が抑えられない元少年Aが作った少年Aの物語を読まされた印象。

Posted byブクログ

2016/04/28

色々世間では言われている問題書籍だが、確かに読了感は良くないな。表現方法が文学的だと思ったら、ある部分では幼稚な表現になっていて。ホントのホントなのか?って思う。誰かも言っていたけど、ちょっと変わってる自分に酔いしれているような。その辺りが気分が悪くなる要因だな。きっと。

Posted byブクログ

2016/02/26

 「神戸連続児童殺傷事件 元少年A」の手記であり、その出版に対して世間では物議を醸している。 ただ問題はいろんな水準にあり単純ではない。    まずは本書を読まずに語れる批判である。そしてそれはネットにおいて自分は安全な位置から正義感をかざして誰かを徹底的に批判するという風潮とも...

 「神戸連続児童殺傷事件 元少年A」の手記であり、その出版に対して世間では物議を醸している。 ただ問題はいろんな水準にあり単純ではない。    まずは本書を読まずに語れる批判である。そしてそれはネットにおいて自分は安全な位置から正義感をかざして誰かを徹底的に批判するという風潮とも結びついているところが芳しくない。  ひとつは殺人犯が殺人事件をネタにお金を儲けることへの批判である。これはサムの息子法を作ればいいという話になる。だが、いくら印税を補償にあてられたからといってこんな本は出されたくないという遺族感情はサムの息子法では解決されない。  他方、「元少年A」にも語る権利がある。それは言論の自由で保障されている。しかし殺人者が何か述べるなんてという感情的反発は抜きがたく世間を覆っているように思われる。これは関係のない人々がもし自分の子どもが殺されたんだったとしたらと感情移入して仮想の遺族感情を身に纏っているといえるだろう。「元少年A」は日本の法律に則って「社会復帰」しているのである。もう10年以上も前に。  「元少年A」と太田出版が遺族にひとこともなく本書を出版したことも批判の的である。これは了解を取ろうとしても取れないだろうという見込みがあったからだろう。それでも手記を出したかったのは「自己救済」であり「身勝手すぎる」と自ら「被害者のご家族の皆様へ」というあとがき的部分に書いている。それを許されないと糾弾するのか。そういえば韓国の朴槿恵大統領は「被害者の立場は千年変わらない」と演説で述べていた。  読んだ上での批判。  彼は普通の人になりきれず、こんな本を書いている。といったものがあった。  そうはいったって、帯にもあるが、この事件で「僕は僕でなくなった」のである。そして少年A、モンスターとなったのだ。「身勝手」にもこんな手記を書かざるを得ない気持ち、わからなくはないと思うのだ。これを書いて、そして普通の人、あるいは「僕」に戻れたのかはわからないが。  筆致はかなり文学的である。少年Aは直感像素質があると報じられたが、確かに当時見た情景を子細に覚えていたとしか思えないヴィヴィッドな描写であり、耽美的とすらいっていいところもある。犯行についての記載はすべてを赤裸々に書いているわけではなく抑制されている。それが倒錯的なものであったことを明らかにするという線では赤裸々に書かれているが、ことさらに残虐なところを強調して書いているわけではない。  むしろ本書はあるときはペーパークラフト、あるときはコラージュに没頭した彼の手仕事のひとつなのではないか。緻密に仕上げられた言葉のクラフト。  犯行と逮捕当時のことが第1部。医療少年院出所後が第2部であり、医療少年院での「矯正」の過程が書かれていないという批判。  出所後の記載の中にはしかし何回か少年院時代の回想がある。  あるいは彼は本当に回心していないとか贖罪していないとかいう批判。  それは彼自身が本書の最後のほうで書いていることの中に問い続けられているように思われる。贖罪するというのはどういうことなのか、贖罪などということが果たして可能なのか。  彼が贖罪の言葉をいくら書いても、人はいうだろう。それは言葉だけだ。しかし語られるものは言葉しかないのだ。  私は法務省関係の仕事をしている知人から本書を見せられ、中を少し読んで、すぐに注文した。純粋に読ませるのだ。そして私は私が14歳の時にどうして殺人を犯さなかったのかわからないから本書を読んだ。もちろん解答が得られたわけではない。  それから『アスペルガー症候群の難問』では少年Aがアスペルガー症候群だったと推測しているので、それを確かめてみたいと思った。確かに自閉症スペクトラムを思わせる性癖はそこここに語られている。しかし少なくとも現在の彼の記述はアスペルガー症候群といえるような対人関係の機微の読めなさを感じさせないものである。また、アスペルガー症候群の病理が犯行に結びついたともいえなさそうに思う。  本書は儲け主義の太田出版による偽書だという陰謀論もある。しかし私は本書はとても真正なものと思えた。彼はとても頭のいい人だと思うし、「罪」に真摯に向き合おうとしていると思う。もしゴーストライターが登場したら、私は素直に認めねばならない。ちっとも見抜けませんでした。

Posted byブクログ

2016/02/15

以前に被害にあわれた方のお父様が書かれた本を読んでいたし、反感を持ちながら読んだが、良かった。 文章もかなり上手くて読みやすい。 自分には想像が出来ない世界を知ることが出来た。 涙が出た。著者の苦しみを知り、 深く考えさせられました。 私は著者が、強く生きていくことを応援したいと...

以前に被害にあわれた方のお父様が書かれた本を読んでいたし、反感を持ちながら読んだが、良かった。 文章もかなり上手くて読みやすい。 自分には想像が出来ない世界を知ることが出来た。 涙が出た。著者の苦しみを知り、 深く考えさせられました。 私は著者が、強く生きていくことを応援したいと思いました。

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2016/01/16

賛否が分かれる本。 自己陶酔,ナルシスト的部分がちょっと露骨、読書家であり、自伝というより、小説家風なタッチで文学的素養はあると思われるが、表現の自由というか、何時でも何処でも何でも表出していいのかという疑問は残る。 犯罪を犯した人のその後の現実という点では、情報としては意味があ...

賛否が分かれる本。 自己陶酔,ナルシスト的部分がちょっと露骨、読書家であり、自伝というより、小説家風なタッチで文学的素養はあると思われるが、表現の自由というか、何時でも何処でも何でも表出していいのかという疑問は残る。 犯罪を犯した人のその後の現実という点では、情報としては意味があると思う。

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2016/01/06

神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇)の元少年Aによる手記。創作による自己回復と自己陶酔、それに対する加害者の心情はいかなるものであったか計り知れない。その点での批判はよく理解ができる。一方で、加害者に対する復讐は法律が担保し、加害者もまた人権を有する。同時にモンスターや異常者といった...

神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇)の元少年Aによる手記。創作による自己回復と自己陶酔、それに対する加害者の心情はいかなるものであったか計り知れない。その点での批判はよく理解ができる。一方で、加害者に対する復讐は法律が担保し、加害者もまた人権を有する。同時にモンスターや異常者といった言葉にはとても違和感を覚えていて、誰もが加害者になりうる可能性を持っているし、一方で誰もが誰かを加害者にしてしまっている可能性さえもあり得ると思う。元少年Aも同様である。そうした点から見れば、本手記は少年法や更生、加害者の人権、償いなど、センシティブで、最も社会的・人間的に試される論点を投げかけている。少年法をはじめとした法律や諸制度はおそらく永遠に未完成であり、社会として、こうした犯罪をどう解釈し、どう向き合い、より良い妥協点を見つけていくかが重要であると思う。

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2017/10/08

子供を2人惨殺して、少年法で現在は更生中の少年Aによる自伝。 前半は動物を殺して射精する性的倒錯者(性サディズム障害)の話なので、さすがに読むのがしんどかった。 後半は更正する話だけど、基本的には苦悩してる。 彼の中では常に葛藤があり、フラッシュバックに悩まされたりしてる。 ...

子供を2人惨殺して、少年法で現在は更生中の少年Aによる自伝。 前半は動物を殺して射精する性的倒錯者(性サディズム障害)の話なので、さすがに読むのがしんどかった。 後半は更正する話だけど、基本的には苦悩してる。 彼の中では常に葛藤があり、フラッシュバックに悩まされたりしてる。 人を殺めたこと、家族を苦しめたことに苦しんではいるように見える。 また彼自身読書家で、三島由紀夫は「打撃技」で、村上春樹は「関節技」の使い手なんて記述は唸らされたけど。 ただ最後、遺族の家族に謝罪はしてるけど、やはり「示威行為」あるいは「印税稼ぎ」と思われても仕方ないわけで、読後感は良くない。 Amazonレビューは読んでるのかわからない奴が大量に☆1つ付けてるけど、少なくとも「反省してない」という風には全然感じなかった。 ただ、印税が彼の救いにつながる可能性は低いかと。 そういうことも含めて問題作。

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2016/02/13

文学的表現(暗喩等)がくどく、内容の重さと相俟って、読み難いところが多々あった。 内容は、賛否両論あるが、幼い生命を奪うという重大犯罪を犯す者の心理や、犯行後の生活・苦悩等をリアルに描いており、それを知るための資料としては有意義と思う。 殺人、少年法、犯罪者の更生、贖罪…etc....

文学的表現(暗喩等)がくどく、内容の重さと相俟って、読み難いところが多々あった。 内容は、賛否両論あるが、幼い生命を奪うという重大犯罪を犯す者の心理や、犯行後の生活・苦悩等をリアルに描いており、それを知るための資料としては有意義と思う。 殺人、少年法、犯罪者の更生、贖罪…etc.のテーマを考えるきっかけともなる。

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