ジヴェルニーの食卓 の商品レビュー
どの物語からも景色や明るさ、温度が伝わってきた。特に「ジヴェルニーの食卓」は、モネに会いたくなった。読み終えて、幸せな気持ちになった。
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美術を言語化したり、美術評論を書くことはとても難しいことだと想像できるが、美術や画家の個性を一般の美術オンチの方でも読めてしまうような普遍化された物語に変えることができる人はとても少ないだろう。 何故なら画家やその作品に命を吹き込む作業というのは、さらに特殊な知識の習得と、...
美術を言語化したり、美術評論を書くことはとても難しいことだと想像できるが、美術や画家の個性を一般の美術オンチの方でも読めてしまうような普遍化された物語に変えることができる人はとても少ないだろう。 何故なら画家やその作品に命を吹き込む作業というのは、さらに特殊な知識の習得と、作品毎の下調べに要する時間が、相当に必要だろうと容易に想像できるからだ。また、それらをクリアしてなお一般の読者に提供してゆくには、それなりの自信や意志が必要だろう。 本書は短編四編で構成された一冊である。どの作品も、実在した有名な画家たちをモデルとし、彼らに対する語り手もしくは近しい人を主人公として用意している。 マティスとピカソの近しい関係を、ある修道女を語り手に、デリケートな人間関係で描出する『うつくしい墓』。 印象派の画家たちの作品が大西洋を越えてアメリカに渡る契機を作った女流画家メアリー・カサットを主人公に、同じ感性を持った画家と自ら言うエドガー・ドガと、画商たちの目線をも描いた『エトワール』。 セザンヌを主題にしながら、実際のヒーローは、パリを舞台にした他の原田マハ作品でも愛すべきオヤジとして描かれることの多い、タンギー爺さんが実質上の主役と言える『タンギー爺さん』。ピカソの絵でもその性格が伺えそうな、売れない貧乏な若き画家たちの縁の下の力持ち的役割と、彼を取り巻く画家たちの素顔が、原田マハという作家は余程お気に召しているに違いない。そのくらい美術とそれを愛する画材屋や画商たちへの慈しみを感じさせる作品である。 ラストはこの作品集の標題ともなっている『ジヴェルニーの食卓』。小説の素材は無論クロード・モネの作品と彼の家や庭園なのだが、主人公は彼の義理の娘として生涯を見届けることになるブランシュと、彼女らの用意するモネの大家族で成す食卓の光景であろう。モネが貧しい頃から次第に売れる画家になってゆくにつれ、光あふれる戸外で絵を描く志向がさらに強くなる。モネは絵の世界のように、現実に自分が住む庭・家・水の流れなどをアレンジしてゆく。 今ではモネの庭園として静かな観光地ともなっているジヴェルニーをぼくは訪れたことがあり、そこで光を浴びる積み藁や蓮の葉の浮かぶ池を、道端の絵かきたちを見つめてきた。浮世絵の飾られたモネの明るい家と、畑の種まき風景、光や色や空気、春風の匂い、等々歩いた時間の充実は忘れ難い。 その地に溢れる物語は、この本でさらにそこに生きた時代の人たちの息吹となって上書きされる。この作品によって。かつてモネと彼を愛した人たちに語らせる原田マハという作家の言葉の魔法によって。マハ作品を通じての芸術の旅は、まだまだぼくの中で終わりそうにない。
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マティスもピカソも現代絵画の巨匠ですが、彼らが取り上げられた『うつくしい墓』よりも、印象派の画家が取り上げられた3編、特にモネが取り上げられた表題作の『ジヴェルニーの食卓」が面白かったです。ガトーヴェールヴェールを食べたくなるし、ジヴェルニーの庭を訪れたくなります。影響力大ですね...
マティスもピカソも現代絵画の巨匠ですが、彼らが取り上げられた『うつくしい墓』よりも、印象派の画家が取り上げられた3編、特にモネが取り上げられた表題作の『ジヴェルニーの食卓」が面白かったです。ガトーヴェールヴェールを食べたくなるし、ジヴェルニーの庭を訪れたくなります。影響力大ですね。 実際にはジヴェルニーまで行くのは難しいので、高知県にあるという「モネの庭」で我慢するしか無さそうですが、『睡蓮』の水の庭よりも、マネが妻アリスへの手紙で手入れの指示を送っていた花の庭を見たいですね。出来ればナスタチウムが咲く季節に行きたいです。 ---父が絵の具職人になりたての頃は、絵の具は真鍮製のシリンジに入れて、ピストンを押し出して使うものだったそうです。 父いわく、チューブ絵の具こそが芸術家たちを重苦しい因習から解き放ったのだと。--- タンギー爺さんの一節です。売れない画家や駆け出しの画家は街角や郊外でイーゼル広げて写生しているイメージがあったので、チューブ絵の具発明まではそれが難しかったなんて、、、簡単に絵の具を屋外に持ち出すなんて出来なかったんですね。目から鱗でした。 でも、確かにマネは屋外派だけど、この章で取り上げられているセザンヌも、前の章のドガも屋内派だよなぁとか、セザンヌのリンゴやドガの踊り子を思い出しながら読みました。 山田五郎さんの美術関係のYouTubeをよく見ます。ドガやセザンヌは山田五郎さんのちょっと下世話な解釈の方がしっくりくるなぁと思いながらも、この小説の語り部となった女性たちの、と言うか原田マハさんの、巨匠をキチンとリスペクトした温かい視線は心地良く、彼らの絵画が日本に来る日が楽しみになります。 ちょうど、ピカソ展が国立西洋美術館で始まったようです。
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美術史に詳しくないから、そうなのかーって読んでただけだったけど、それぞれの画家にそれぞれの生活や家族、友人がいたんだよなって当たり前のことを気づかされた。作品が有名だと、勝手に最初からすごい人って思ってたけど、色々あっての今なんだな。 解説で、美術史の資料上に出てくる人々は、その...
美術史に詳しくないから、そうなのかーって読んでただけだったけど、それぞれの画家にそれぞれの生活や家族、友人がいたんだよなって当たり前のことを気づかされた。作品が有名だと、勝手に最初からすごい人って思ってたけど、色々あっての今なんだな。 解説で、美術史の資料上に出てくる人々は、その事実はわかっても、その人々の関係性の詳細ややりとりは、想像の範疇で、そこからは小説家の領域とあった。なるほどね。リアルと想像が混ざりあってるから面白いのよな!その想像力の豊かさは原田さんの魅力だし、ご本人の美術史に関する経験や知識に基づいているんだな。 私はモネの話が一番好きだったかな。
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原田マハさんのアート小説第四弾。 ※たゆたえども沈まず https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4344429729#comment ※アノニウム https://booklog.jp/users/noguri/archives/...
原田マハさんのアート小説第四弾。 ※たゆたえども沈まず https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4344429729#comment ※アノニウム https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4041059267#comment ※風神雷神 Juppiter,Aeolus(上) https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4569843875#comment ※風神雷神 Juppiter,Aeolus(下) https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4569843883#comment 過去三作と異なり、全体的に精錬されたゆったりとした印象の小説で、 自分のように何かに追われたように あせくせと動いているような人間にはちょっと合わなかった。 もっとハラハラドキドキするような展開がやはり自分の好み。 もう少し自分もこういう小説が味わえるような心の余裕が欲しいと思いつつ、、 途中で読むのをやめようかと思ったが、頑張って最後まで読み切りました。
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マティス、ドガ、セザンヌ、モネの作品をネットで鑑賞しながら幸せなきらめく気持ちで、本作品を読みました。 時代が絵の真の評価に追いつかないが故の苦しみに、芸術の難しさを強く感じました。タイムトラベルして支援のためにめ絵画を全てを購入したいと思ったのは、私だけでしょうか。
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国立西洋美術館に行きました。絵には感情がある。必ず、思いを持って描いています。物語に出てくる絵と画家をスマホで確認しながら読みました。
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マティス、ドガ、セザンヌ、モネという誰もが知っている巨匠たちのお話。 原田マハの想像力の豊かさと、美しい表現を存分に楽しめた。 誰もが“知っている”と言っても、大した知識なんてないので、読み終えた後、すぐに色々と調べたくなる。知的好奇心もくすぐってくれる。
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解説を国立西洋美術館長の方が書いています。 《これらの答えは美術史の資料からは導き出すことができない。その先は、まさに小説家の領域なのだ。》 史実と史実の隙間を埋める夢のあるフィクション。
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マティス、ドガ、セザンヌ、モネの4人の芸術家の姿を、身近な女性視点で語られる物語。 美術の知識や、それぞれの芸術家の背景を知っていると更に面白いんだろうな〜と思いながら読んでいた。(わたしは全く知識なし) 芸術家本人の言葉はそれほど多くはないけれど、くっきりと人物像が読み取...
マティス、ドガ、セザンヌ、モネの4人の芸術家の姿を、身近な女性視点で語られる物語。 美術の知識や、それぞれの芸術家の背景を知っていると更に面白いんだろうな〜と思いながら読んでいた。(わたしは全く知識なし) 芸術家本人の言葉はそれほど多くはないけれど、くっきりと人物像が読み取れた。 絵に人生をかけた男性たちと、その絵に人生を捧げた女性の物語。
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