ママは何でも知っている の商品レビュー
安楽椅子ものの最高峰ということで復刊を機に読んでみました。 読んでなるほど。どのお話でも、ママが幾つか質問をするだけで事件が解体、再構築されていき、あっと驚く真相が用意されています。 その過程で披露されるロジックは素晴らしいの一言。とくに冒頭の表題作は口紅の違和感から怒涛の推理が...
安楽椅子ものの最高峰ということで復刊を機に読んでみました。 読んでなるほど。どのお話でも、ママが幾つか質問をするだけで事件が解体、再構築されていき、あっと驚く真相が用意されています。 その過程で披露されるロジックは素晴らしいの一言。とくに冒頭の表題作は口紅の違和感から怒涛の推理が展開され、全く予想外のところに着地する短編のお手本のような傑作です。 また、嫁姑問題に息子離れ出来ない母というミステリ以外の要素も大変面白く、退屈することはありませんでした。
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安楽椅子探偵もの。 『ミミズクとオリーブ』の妻や、ミズ=マープルなど家庭や小さな世界で生きている女性が、「人の営みや心の動きは変わらない」とばかりにお料理や編み物をしながら、謎を解くスタイルは同じだが、基本上品な科のご婦人たちと比べると、この『ママ』は一味違う。 ブロンクスに住むユダヤ系の未亡人は、がみがみうるさいし、大学出の嫁の鼻をへしおるチャンスを常に見逃さない、ママっていうよりおふくろ、いや『オカン』だ。大阪の下町に住んでいる豹柄着ている系の。 息子がママの様子うかがいに週末一緒にとるディナーの席で、警察官である彼が冤罪を産みかけているのを少ない質問で阻止するのである。 洗練されていないし、意地悪なところもあるんだけれど、涙もろく感動やさんのママがあざやかに事件を料理していくさまはスカッとする。 内緒にしていたはずのテストの点数がなぜかばれていたり、友達と喧嘩した日の夜の夕食が自分の好物だったりとママは何でも知っている。 最後の『ママは憶えている』は若き日のママのママが愛する娘の危機にママの上をいく頭脳を駆使して奮闘する様が描かれているが、デイヴィッドがいつか生まれるかもしれない子供に同じようにできるかははなはだ心もとないと思いつつも、似たような繰り返しはあるんだろうなと思わせる。 専門的な知識はほとんどいらない、肩の力を抜いて楽しめるシリーズ。 あと、翻訳家のプロフィール、名作中の名作ばかりを訳していてすごい。
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安楽椅子探偵ものの名作。 最初に知ったのは何がきっかけだったか、確か『桜庭一樹読書日記』のどれかだと思うのだが、よく覚えていない……当時はポケミスの1冊として紹介されていたことは覚えているが、今回、ハヤカワ文庫補完計画の1冊として文庫化された。法月綸太郎の解説によると都筑道夫も本...
安楽椅子探偵ものの名作。 最初に知ったのは何がきっかけだったか、確か『桜庭一樹読書日記』のどれかだと思うのだが、よく覚えていない……当時はポケミスの1冊として紹介されていたことは覚えているが、今回、ハヤカワ文庫補完計画の1冊として文庫化された。法月綸太郎の解説によると都筑道夫も本作を絶賛していたらしい。 警官である主人公が説明した事件を、ママが鮮やかに解決する……というシンプルな構造。ママの質問は一見、事件と無関係に見えるが、最後にその意味が解るという仕掛けになっている。その合間に、ママのお説教や、嫁・姑の軽い意地の張り合いが挟まれて、ストーリーに彩りを添えている。 『ママは何でも知っている』というタイトルも秀逸。
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