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長いお別れ の商品レビュー

4.3

132件のお客様レビュー

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2015/08/04

まるでその文章は魔法のようだと思う書き手が何人かある。中島京子さんも間違いなくその一人。一体どういうマジックで、こんなことが書けるのかと感嘆する。 認知症の父親をめぐる家族の物語。父親も、その妻も、子どもたち孫たちも、どこにでもいそうな人たちで、それぞれにままにならない人生を抱...

まるでその文章は魔法のようだと思う書き手が何人かある。中島京子さんも間違いなくその一人。一体どういうマジックで、こんなことが書けるのかと感嘆する。 認知症の父親をめぐる家族の物語。父親も、その妻も、子どもたち孫たちも、どこにでもいそうな人たちで、それぞれにままにならない人生を抱えて日々生きている。父の認知症は進む。頭の痛いことは他にも大小ある。お互いの思いがすれ違うこともある。痛いほどに現実的な話(のはず)なのに、あら不思議、暗い気持ちにならないのだ。それどころか、もしこういうことが我が身に迫ったとして、うーん、なかなか大変だけど自分もなんとかできるかも、などと思えてくる。マジックである。 「小さなおうち」を読んだときにも思ったが、著者の目は、「戦時中だから暗い」とか「認知症の介護はつらい」とかそういう固定的な見方を排して、本当に物事をよく見ようとしているのだろう。これは本当に難しいことだし、それを小説のかたちにしていくのはさらに至難の業だろう。読み終わってタイトルがしみじみ胸にしみる佳作。

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2015/08/01

そんな綺麗ごとで済むわけがないとか、甘いよとか、そういう我ながら"ごもっとも"な感情を吹き飛ばすだけの小説力があったと思う。個々の登場人物がきちんと描かれていて安心して読めるところに著者の力を改めて感じた。読んで気持ちが前へ向かうような、久々に手元に置きたいな...

そんな綺麗ごとで済むわけがないとか、甘いよとか、そういう我ながら"ごもっとも"な感情を吹き飛ばすだけの小説力があったと思う。個々の登場人物がきちんと描かれていて安心して読めるところに著者の力を改めて感じた。読んで気持ちが前へ向かうような、久々に手元に置きたいなと思う一作だった。

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2015/07/30

リアルな話。 しかし現実のリアルはさらに厳しい。 人生の終焉は自分で選べぬだけに むずかしいな~ 恥ずかしながら 隔靴掻痒なんて四文字熟語初めて知った。

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2015/07/29

+++ 帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。 妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。 東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。孫も...

+++ 帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。 妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。 東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。孫もいる。 “少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症。ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、迷子になって遊園地へまよいこむ、入れ歯の頻繁な紛失と出現、記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集。 +++ 認知症、老老介護、離れて住む家族の事情、などが描かれた物語である。だが、単に介護の苦労や壮絶さが描かれているわけではない。敢えてその部分は淡々と描き、認知症の父と介護する母の情の通い合いや思い入れ、離れて暮らす娘たちそれぞれの事情と想いなど、この夫婦、この親子でしかわからない家族の歴史の積み重ねまでがまるごと描かれているように思われる。なにより家族が認知症の父の尊厳を最期まで自然に尊重している姿が印象に残る。一見意味の判らない会話でも、父は娘を、娘は父を理解しているように見える場面では胸がじんとする。現実の介護はここに描かれていない壮絶なことの方が多いのだとは思うが、だからこそ本作の姿勢が救いになるようにも思える一冊である。

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2015/07/23

話題になるだけあって、家族のお父さんとの距離感とかリアル。でもお母さんがほんとすごい。愛ってこんなかしらー。

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2015/07/21

あっけらかんとしたタッチでかかれてますが、深刻な介護の様子がみてとれます。現実はもっとつらく悲惨なのでは。お母さんの明るさに救われてます。ラストが印象的でした。メリーゴーランドの話がほっこりで好きです。

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2015/07/12

老々介護だぁ。 わが家はまだ両親も元気にしていてくれているので具体的に考えたことはないが、この先あるかもしれない設定にむむむと考えながら読んだ。 父が認知症、その介護を母が……。 夫婦ならお互いの面倒をみようと強く思うだろうけれど、近所に住んでいない娘たちにはどうしていいものか。...

老々介護だぁ。 わが家はまだ両親も元気にしていてくれているので具体的に考えたことはないが、この先あるかもしれない設定にむむむと考えながら読んだ。 父が認知症、その介護を母が……。 夫婦ならお互いの面倒をみようと強く思うだろうけれど、近所に住んでいない娘たちにはどうしていいものか。 本人、介護をしている人の希望も聞かなければならないし。 元気なうちにあれこれ話し合っておくのが1番かもね〜。 父親には、いい暮らしだったと思う。

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2015/07/10

中島京子さん「長いお別れ」読了‥通常は、文庫本になってから読むのです‥が‥このタイトルでは、読まざるを得ませんでした‥その結果‥ぶっちぎりの★五つ‥最後、少し泣きました‥

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2015/07/07

認知症、アルツハイマー、そしてQOL… 誰しもいつかはやってくる老い。 ゆっくりと確実に衰えていく父親の十年と、妻や娘たちと孫たち。 静かに物語が流れていく。切なく愛しい家族物語。読む人の立場で、物語は違ってみえるかもしれません。

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2015/07/02

認知症という病気のイメージが良くも悪くもがらりと変わった一冊。 病気を患った夫であり、父親であり、祖父をとりまく家族や人々の人生。 家族といえども、それぞれの生活があり、生活していることによるそれぞれの些細な出来事。悩み。が、介護という重いテーマがあるのにも関わらず、優しいユー...

認知症という病気のイメージが良くも悪くもがらりと変わった一冊。 病気を患った夫であり、父親であり、祖父をとりまく家族や人々の人生。 家族といえども、それぞれの生活があり、生活していることによるそれぞれの些細な出来事。悩み。が、介護という重いテーマがあるのにも関わらず、優しいユーモアと淡々とした日常でもって描かれている。 妻の曜子さんの、夫に対する無償の愛?のようなものにとても感心してしまった。 愛でなければ何なのだろう? 今までの長い結婚生活のほとんどを忘れた夫。 でも、曜子さんは『ええ、夫はわたしのことを忘れてしまいましたとも。で、それが何か?』と。 亡くなるまでの十年間の『長いお別れ』。 忘れたくないことも、忘れたいことも否応なく忘れていく。 過剰な感動作や、滑稽すぎる介護本のようにしていないのが、中島京子さんを好きな理由。 ただ、笑えたからこそ余計に、読んでいて切なかった。

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