村長の未亡人 の商品レビュー
やや淡白な官能描写と好みを分ける大どんでん返し
表紙カバーのイラストが一発で示しているが、タイトルにある「村長の未亡人」が選挙を経て「未亡人の村長」になる話である。次期村長を決める選挙戦が舞台なので勝ち抜くための権謀術数となるところだが、そこは片田舎(というかド田舎)の村だけにステレオタイプの分かりやすいもの。むしろ官能的には...
表紙カバーのイラストが一発で示しているが、タイトルにある「村長の未亡人」が選挙を経て「未亡人の村長」になる話である。次期村長を決める選挙戦が舞台なので勝ち抜くための権謀術数となるところだが、そこは片田舎(というかド田舎)の村だけにステレオタイプの分かりやすいもの。むしろ官能的にはおあつらえ向きな色欲肉弾接待のオンパレード……でもないのが本作のもどかしいところである。 後援会の会長を接待するには地元で有名な姉妹コンパニオンの登場であっさり骨抜きなのだが、全体の流れは前村長の妻にして今は未亡人なメインヒロインの次期村長候補(34歳)の補佐についた若き主人公が軸なので、両陣営の官能的パフォーマンスの応酬といった構図ではなく、あくまで主人公の周辺にいる選挙絡みな女性達との束の間の情交が続く展開なのである。 東京からやって来た主人公を駅まで迎えに来た熟女に始まり、先述の姉妹コンパニオンを経て選挙カーのウグイス嬢に至るサブヒロイン達はそれぞれ魅力があり、主人公の恋心に気づいた一部は軽く嫉妬したり鞘当てしたりの可愛らしさもあるのだが、総じて淡白で短い官能描写によってイマイチ盛り上がらない。「東京から来た若い男」が目当てな女達に見えることもその一因かと思う。後援会会長の他にも第一秘書や対立候補といった、ちょっとウラのありそうな(実際あるのだが)男達の存在がキナ臭い雰囲気を醸してもいるが、その全容は掴めないまま選挙を迎える感じである。 作者お得意の寝取られ感たっぷりな選挙前夜の(メインヒロインの)貞操の危機から官能的には一時ぐっと盛り上がる。そして、選挙の結果を受けて、これまでずっと奔走してきた主人公へのご褒美とばかりに晴れて想い人たるメインとは結ばれるのだが、その後に知るところとなる事実は「これは……なかなか……」というもの。男達との全容も判明する大どんでん返しな結末にはやはり選挙は綺麗事だけでは済まないといった皮肉や女性もまた清らかなだけではやっていけないといったしたたかさも込められたものと推測するが、それが読み手の望む結果なのかはまた別である。 全体がもう少しコミカルでもあれば違った印象になったかもしれないが、主人公の想いが全編に渡って出ていただけに(今後も頑張ろうと一念発起はしているものの)なかなかどうしてキツい仕打ちを与えたものである。
DSK
- 1