リフカの旅 の商品レビュー
『ビリー・ジョーの大地』に続き、差別と貧困との闘いの歴史を伝えるカレン・ヘスの児童小説を伊藤比呂美氏の翻訳で。 作家の大叔母の体験をもとに、ロシア・ウクライナのベルディチェフという町から間一髪で強制収容所送りを免れ、アメリカへ渡ったユダヤ人少女リフカの旅が、故郷に残った親友への手...
『ビリー・ジョーの大地』に続き、差別と貧困との闘いの歴史を伝えるカレン・ヘスの児童小説を伊藤比呂美氏の翻訳で。 作家の大叔母の体験をもとに、ロシア・ウクライナのベルディチェフという町から間一髪で強制収容所送りを免れ、アメリカへ渡ったユダヤ人少女リフカの旅が、故郷に残った親友への手紙という形で綴られる。迫害に直面して故郷を離れざるを得なくなり、国際NGOによる人道支援を得ながらも、入国管理の論理によって家族と引き離されるリスクに直面する子どもの姿は、そのまま現代の難民たちの姿に重なってくる。 なぜか伊藤氏の訳者解説ではスルーされているが、特に驚くのは主人公がアメリカ入国をあやうく拒否されかけた理由だ。頭皮白癬にかかって髪が抜け落ちてしまったために、将来養ってくれる夫が見つかりそうになく生涯福祉の世話になる可能性のある「好ましからざる移民」とみなされたというのだから。1930年代のアメリカとはそういう国だったのだ。 リフカが入国審査官に言い返す「もし私が結婚したくなったら、髪があろうがなかろうがしてみせます」という台詞こそ、作家がぜひとも書きつけたかった言葉だろう。女の子の価値は見た目じゃないということを、リフカは、プーシキンを読むすばらしさを教えてくれた、故郷の賢い友だちの女の子からすでに学んでいたのだから。 リフカたち一家が脱出した後、すでにロシア人たちからの迫害にさらされていたベルディチェフのユダヤ人コミュニティはナチスの占領下で消滅したという。
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ユダヤ人であるリフカが、家族でロシアからアメリカに逃れる旅を描いた本。作者の大伯母が体験したほぼ実話。 途中、チフスにかかったり、白癬になり家族と離れ離れになったり、白癬で髪が生えなくなったためアメリカに入国できなかったり大変なことが続くが、リフカの持ち前の明るさや賢さに救われる...
ユダヤ人であるリフカが、家族でロシアからアメリカに逃れる旅を描いた本。作者の大伯母が体験したほぼ実話。 途中、チフスにかかったり、白癬になり家族と離れ離れになったり、白癬で髪が生えなくなったためアメリカに入国できなかったり大変なことが続くが、リフカの持ち前の明るさや賢さに救われる思いがした。 ロシアでは、当時チョコもアイスも食べられず、紙を無駄にすると重罪とは…いろいろ考えさせられた。 ロシアに残った従姉妹、トヴァその後どうなったか心配。
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12歳のユダヤ人の女の子リフカとその家族が、ベルディチェフ(現ウクライナ)から移民としてアメリカに渡るまでの苦難の旅。(1919.9〜1920.10) 住み慣れた地から追われるように出て行かなければならない人々の姿が、現在のウクライナと重なってしまった。 プーシキン詩集の余白に...
12歳のユダヤ人の女の子リフカとその家族が、ベルディチェフ(現ウクライナ)から移民としてアメリカに渡るまでの苦難の旅。(1919.9〜1920.10) 住み慣れた地から追われるように出て行かなければならない人々の姿が、現在のウクライナと重なってしまった。 プーシキン詩集の余白に綴ったいとこ宛の手紙文なので、リフカの気持ちになり読むことができた。祈りにも似たシャローム(さよなら) の響きが心に沁みてくる。 ポグロムの恐怖から逃れた家族は発疹チフスにかかってしまう。皮膚病の治療のためリフカはただ一人取り残されるが、移民援助協会の力で希望を繋ぐことができた。 届くと信じて手紙を書き続けたこと、違う国の言葉を学ぼうと頑張る彼女には生きる力がある。 赤ちゃんの世話や、ロシアの百姓の子イリヤの面倒を見る優しさも! 移民局で、同じ故郷を持つふたりが並んでプーシキンの詩を読み上げるシーンに泣けてきた。 詩人、伊藤比呂美さんの訳で本当に良かったと思う。
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※このレビューにはネタバレを含みます
1919年9月リフカ・ネブロトの家族はウクライナのベルディチェフからアメリカへ亡命するため、ポーランドへ向かう。この頃すでにユダヤ人を差別していたロシアにいては息子たちの命が危ないと考えた両親。しかし、リフカ、両親、兄ナタンと続いて発疹チフスにかかってしまう。奇跡的に誰も死なずにすんだが、その後も次々難題がふりかかり、リフカだけ、アメリカ行きの船に乗れなくなってしまう。ひとり、ベルギーで白癬の治療をする事に。12歳なのに、異国で過ごすリフカには、しかし、すごい能力があった。語学の天才。すぐ上の兄サウルにも羨ましがられる。最後の難関はアメリカの入管。リフカの髪がない事が問題になる。リフカはアメリカに移住出来るのか。 この物語は作者カレン・ヘスの大叔母さんの体験を元に創作された。ロシアが近代化に失敗し、わざとユダヤ人へのテロを仕掛けるポグロムやユダヤ教の風習なども描かれている。 約100年前の話なのにいまだに同じような事を繰り返しているロシアやアメリカの入管での論理は現在の日本も同じで愕然とする。 繰り返し登場するプーシキンの詩を読みたくなる。手紙形式で描かれ、行間が広くティーンズにもおすすめです。
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プーシキンの詩集一冊と燭台のほかは荷物もほとんど持たず、家族で渡米の船に乗る直前、伝染病のため隔離されたリフカだけが見知らぬ土地に取り残される。 それから再び家族に会うまでの12歳の少女の長い旅の物語。 故郷を追われるということは、昔も今も命懸けだ。 100年経った今も様々な理由...
プーシキンの詩集一冊と燭台のほかは荷物もほとんど持たず、家族で渡米の船に乗る直前、伝染病のため隔離されたリフカだけが見知らぬ土地に取り残される。 それから再び家族に会うまでの12歳の少女の長い旅の物語。 故郷を追われるということは、昔も今も命懸けだ。 100年経った今も様々な理由で故郷を追われる人々がいる。ものは豊かになったのかもしれないが、何かがおかしいんじゃないか? 伊藤比呂美さんの訳
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内戦中のロシア・ウクライナからアメリカを目指したユダヤ人少女リフカの記録。 今から100年前、第二次世界大戦が始まる少し前が舞台です。亡命というかたちで祖国を後にするリフカの一家。その旅路は命辛々なもので、後のホロコーストを予感させるような場面も出てきます。見つかれば殺されると...
内戦中のロシア・ウクライナからアメリカを目指したユダヤ人少女リフカの記録。 今から100年前、第二次世界大戦が始まる少し前が舞台です。亡命というかたちで祖国を後にするリフカの一家。その旅路は命辛々なもので、後のホロコーストを予感させるような場面も出てきます。見つかれば殺されるという危機は常に付きまといつつ、劣悪な環境下での移動は続きます。 道中、チフスを患い死線を彷徨うことになったり、白癬に感染したことでアメリカへの船に乗れなくなり1人取り残される等トラブルに見舞われながらも12歳のリフカは気丈に振る舞うことで危機を乗り越えていきます。苦しい場面が続く分、ラストは心に来るものがありました。 背景は重く暗いものですが、少女の視点、そして書簡形式でストーリーが進むため、すごく読みやすいです。一市民の視点で知る歴史は臨場感もあり、先を急ぐように読みました。 あとがきでは文中の用語解説を中心に、前後の歴史について触れています。理解がより深まることと同時に、歴史を見直したくなりました。
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ロシアに住む少女リフカの一家は、ユダヤ人への迫害から逃れるためポーランド経由でアメリカを目指す。しかし、やっとアメリカに渡るという時になって、リフカだけが病気のために残らなければならないことに。たった一人で見知らぬ国で治療を受けながら家族に会える日を待ち望むリフカ。持ち前の語学の...
ロシアに住む少女リフカの一家は、ユダヤ人への迫害から逃れるためポーランド経由でアメリカを目指す。しかし、やっとアメリカに渡るという時になって、リフカだけが病気のために残らなければならないことに。たった一人で見知らぬ国で治療を受けながら家族に会える日を待ち望むリフカ。持ち前の語学の才能で、驚くべき速さで異国の言葉を覚え、希望を失わず力強く生きるリフカの勇気に感嘆します。
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