役者は一日にしてならず の商品レビュー
『週刊ポスト』の連載「役者は言葉でできている」を書籍化。 本書のインタビュー相手は、いずれも"名優"と称されるようなベテラン俳優ばかり。だがそのような彼らにも新人・若手時代はあり、当時の苦労・苦悩は現代の我々にははかり知れない。 当たり前だが、彼らは最初か...
『週刊ポスト』の連載「役者は言葉でできている」を書籍化。 本書のインタビュー相手は、いずれも"名優"と称されるようなベテラン俳優ばかり。だがそのような彼らにも新人・若手時代はあり、当時の苦労・苦悩は現代の我々にははかり知れない。 当たり前だが、彼らは最初からスターや名優ではなかった。俳優としてよりよく在ろうとする彼らの話は興味深く、含蓄に富む。「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備え」(註:朝ドラ『カムカムエヴリバディ』より)てきたからこそ、現在があるのだろう。同時に現在の俳優業界や作品(殊に時代劇)制作現場に対する彼らの憂いや不満は、観客/視聴者の我々以上に痛切なものなのだとうかがえる。 2015年(本書の初版発行)、そして2022年現在、本書に登場する俳優の何名かは亡くなってしまった。惜しいものだ。
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道を極めた技術者、そして皆花もある。プロとしての心構えが十人十色で興味深い。唯一異なる風合いだったのは杉良太郎。彼はやはり大スターなのだろう。
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はじめに とところで三國連太郎のインタビューについて触れている。三國連太郎の演技の原点は阪妻にあったという話だ。この話を聞いて、名優から話を聞くことの意義を感じて、この企画はスタートしている。実際これだけの名優さんの演技に関する取材ってされてなかったですね。どれも興味深いし、芸の深さを感じることができる。少し印象に残ったところを抜書きする。 千葉真一(高倉健について)「あの人はいつでも人生に感謝している人なんだと思います。だから絶対に偉ぶらない。どんなぺーぺーの俳優さんが来ても、立ちあがって『高倉です』と挨拶される。僕も、あの人のおかげで人間を変えられました。僕は健さんの足元にも及びませんが、あの人みたいになりたいと今でも願っています。』 中村敦夫(三船敏郎について)「びっくりするくらいイイ人なんですよ。豪快なスターと思われがちですが、実は生真面目な人で。朝、三船プロの玄関前で掃除をするんです。それでエキストラが来ると『ご苦労さまです』と挨拶する。そういう人なんですよ。」 林与一「今でも、主役が花なら、その横にいる葉っぱでいたい。ただ、枯れて汚い葉っぱだと花が綺麗に見えないから、青々とした大きな葉っぱでい続けたいとは思っています。」 「長谷川一夫も言っていました。『芸の上手い下手には観客それぞれに好き嫌いがあるけど、汗をかいている姿はみんな好きなんだ。だから、物事の姿勢はいつもちゃんとしておけ』って」 松方弘樹「昔の映画の所作事が素晴らしいのは、時間をかけているからです。僕らの若い時はテストを二十回もやってくれましたが、今は一回か2回ですから、それでは上手くなりません。 悲しいです。いい時代を見ているだけに、今のテレビドラマや映画の現場に行くと、悲しい。」 杉良太郎「『時代劇をやってきました』という人がいます。ほとんどの方は時代劇をやったのではなく、『鬘と着物をつけてお芝居をしました』と言うべきです。時代劇は、その時代を生きた文化や週間をどこまで自分のものにできるかということが大切です。」 「楽屋を出る前に自分の部屋にいるものたちに『今日が俺の命日だ』と言って、舞台に上がっていました。毎日、すべてが真剣勝負。』 綿引勝彦「悪を演じるには、悪と思わないで演じることだね。その道に行くしかなかった人間だと思って演じる。そうしないと面白くないの。」 「演劇の世界には『感情は後払い』という言葉があります。下手な役者がやると興奮した芝居ばかりやってしまいますよね。 伊吹吾郎「僕は今でも悪を演じる時は単なる悪役ではなくて、必要に迫られて結果的にそうせざるをえなくなった悪をやるようにしています。」 田村亮「リアルにやることが芸なんじゃなくて、リアルに見せることが芸なの。メリハリつけてちょっとオーバーにするからお客さんも楽しんでくれるんですよ。本人のままやっても味も素っ気もなくなると思う。」
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『すべての道は役者に通ず』から知る。 朝日新聞201545掲載 日本経済新聞2015329掲載 週刊読書人20151211掲載 評者:松永正訓(小児科医,作家)読売新聞2018114掲載 評者:戌井昭人(作家) 朝日新聞2022917掲載 評者:サンキュータツオ(学者芸人)
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はじめに(三國連太郎との六分間) 平幹二朗 千葉真一 夏八木勲 中村敦夫 林与一 近藤正臣 松方弘樹 前田吟 平泉成 杉良太郎 蟹江敬三 綿引勝彦 伊吹吾郎 田村亮 風間杜夫 草刈正雄
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「名優」と呼ばれる人たちへのインタビューをまとめたもの。インタビュアーの基本姿勢が絶対的なリスペクトで貫かれていて、役者の方々はみな、これまでの道のりや演技にかける思いなどを語りたいように語っている。著者の仰ぎ見る視線を共有できる人にとっては、興味深い話も多いだろうが、インタビュ...
「名優」と呼ばれる人たちへのインタビューをまとめたもの。インタビュアーの基本姿勢が絶対的なリスペクトで貫かれていて、役者の方々はみな、これまでの道のりや演技にかける思いなどを語りたいように語っている。著者の仰ぎ見る視線を共有できる人にとっては、興味深い話も多いだろうが、インタビューとしては平板な感じがする。つっこんでないもの。申し訳ないけど、役者哲学より交友関係のゴシップ的な話のほうがおもしろくて、そっちは少ないのが残念。
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映画評論家という職業は、絶滅危惧種的存在にしか思えないけど、春日太一の本を読むと、映画史家というのは必要なんだなあ毎回思います。 短時間のインタビューで、ベテラン俳優達から、実のある話をうまく引き出せる著者の手腕は鮮やかです。 登場している俳優たちは、名前と顔は知ってるけど...
映画評論家という職業は、絶滅危惧種的存在にしか思えないけど、春日太一の本を読むと、映画史家というのは必要なんだなあ毎回思います。 短時間のインタビューで、ベテラン俳優達から、実のある話をうまく引き出せる著者の手腕は鮮やかです。 登場している俳優たちは、名前と顔は知ってるけど、邦画もTVドラマも殆見ない自分的には、俳優としてというよりも、バラエティ番組などで見かける大御所俳優枠というポジションのおじさん達。という程度の認識しかありませんでした。 例えば、松方弘樹なんて、昔「元気が出るTV」でただ笑ってるだけの、おじさん。と思っていたので、時代劇に対する思い入れの深さとかが書かれていて、良い意味で、自分の中での新発見でした。 遺作の「希望の国」が良かった夏八木勲のインタビューとかも興味深かったですが、個人的には、前田吟が恵まれない出自であることが書かれていた事と、仕事に対する姿勢のビジネスライクな割りきった感じに考えてる所が、印象に残りました。 他の読んだ方のレビューを読むと、仕事論である。という感想が多いですけど、これを突き詰めて考えてみたら、例えば仕事をしている上で、自分が少し悩みにぶつかった時に、もし身近にこういう上司達がいたら、相談に乗ってもらいたいな的な感想を自分は持ちました。 第二弾も出版されるそうなので、それも早く読んでみたいです。
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このインタヴューの男優の人から、よく名前が挙がる 高倉健、若山富三郎、勝新、大瀧秀二、志村喬 やはり俳優としてだけじゃなく、生き方、人柄も魅力的だったんだろうな。 蟹江敬三、夏八木勲なもう他界してしっまったね。 このインタヴューが読めてよかった。
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ま、つまり、年配の男優さんのインタビュー集なんです。 ただ、一応ねらいとして、女性遍歴とかではなくて、「芝居と言う仕事に取り組んできた歴史」という切り口が意識されている、ということですね。 夏八木勲、蟹江敬三、平幹二朗、松方弘樹、千葉真一、中村敦夫、林与一、近藤正臣、前田吟、平泉...
ま、つまり、年配の男優さんのインタビュー集なんです。 ただ、一応ねらいとして、女性遍歴とかではなくて、「芝居と言う仕事に取り組んできた歴史」という切り口が意識されている、ということですね。 夏八木勲、蟹江敬三、平幹二朗、松方弘樹、千葉真一、中村敦夫、林与一、近藤正臣、前田吟、平泉成、杉良太郎、綿引勝彦、伊吹吾郎、田村亮、風間杜夫、草刈正雄、 という16人。多いですね。一人一人はそんなに長くありません。 やっぱり、こういう面々に対して、まだ生きている訳ですけど(インタビュー時点では)、 「日本映画史」「日本の映画、およびテレビドラマ及び演劇まで含めた、視覚物語芸能史」「つまりは、日本俳優史」 と、でも言うべき、すごくこう、後世からの研究視点も意識したような切り口を持っている。聴き手で本の作り手である、春日太一さんが。 その視点が、春日太一さんの仕事の素敵さに共通しているなあ、と思います。 そういう目線で見ると、この16人はそれぞれに、劇団の養成所だったり、映画のスカウトやニューフェースだったり、コネだったり、モデル出身だったり、いろいろな形で仕事を始めています。 そういう出発点や事情自体が、もはやその時代の世の中の有様を映していて面白いですね。 それはつまり、1960年代=1970年代前半なんです。 この頃、高度経済成長が一回フン詰まって、1968年の学生運動の季節があって、その反動として迷走の70年代…というこの時代のことを、よりよりこの16人に重ね合わせて観ていく視点が強めにあったら、もっと素敵な本になったのかなあ、と思ったりしました。 (まあ、あと、それぞれにもうちょっと突っ込んでいけないかなあ、とは思いますけど…。経歴なぞってちょこっと自慢話、というパターンが多いんでね) 16人それぞれの発言内容は、まあハッキリ言って、「きれいごとに終始するところは、読み手としては面白くない」という一言に尽きますね(笑)。 演技論的なことでいうと、それぞれいうことは正反対のバランバラン(笑)。まあ、どういう修業出自から来ているか、ということの多様さが判って素敵なんですけど。 そもそも、知らない人の話は面白くない訳ですが、もし多少でも「あ、あの人なんだな」とわかるのなら、 夏八木さん、蟹江さん、前田さん、平泉さん、綿引さん、あたりは、こういう切り口でちゃんと取り上げられることが多くは無いので、新鮮さ、ありますね。 個人的には、蟹江敬三さん、平幹二朗さん、林与一さん、近藤正臣さん、前田吟さん、平泉成さん、田村亮さん、あたりが比較的に面白かった気がします。 ●近藤正臣さんって、売れるまで大変やってんなあ ●前田吟さんは、とにかく稼ぐっていうことをちゃんと言う人なんやなあ ●やっぱりこの世代の、この16人には?深作欣二、山田洋次、そしてなにより「テレビドラマ」っていうのは巨大な存在やなあ。 (東映系の男優が多いっていうのが大きいんですけどね) というのが面白かった感じですかね。 気負わず軽く読めました。
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それぞれの役者さんの思っていること通ってきた道は当然ながら違う。だが、何十年と同じ道で生き抜いてきた人たちの言葉というのはその信念や思いの結晶だとよくわかる。 人はやがていなくなる。だからこど残しておくということの意味は大きい。時代劇について書かれてきた春日さんだからこそ時代劇の...
それぞれの役者さんの思っていること通ってきた道は当然ながら違う。だが、何十年と同じ道で生き抜いてきた人たちの言葉というのはその信念や思いの結晶だとよくわかる。 人はやがていなくなる。だからこど残しておくということの意味は大きい。時代劇について書かれてきた春日さんだからこそ時代劇の全盛期を見てきた方々の言葉や体験は貴重であり残したいという気持ちが強いのも伝わってくる。 時代劇に興味がなくても、ずっと最前線で戦ってきたひとりの人間の言葉、商業に対しての生き方に対してのそれぞれの言葉がジャンルも関係なく読み人に届く一冊になっている。 多くの方が悪役をすることについて語られていたように感じた。人間の多様性、想像することなんかを考えた。 続編が出るのをやはり期待してしまう。
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