冥土めぐり の商品レビュー
第147回芥川賞受賞作。主役の既婚女性が、裕福だった頃の家族の過去を手探りに行くかのように、幼い頃に旅行で訪れたホテルに、病気で体が不自由となった旦那と訪れる。全体的に何となく陰気な雰囲気。金持ちから急に貧乏になった為か、母親がとても痛々しい。
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結婚してからも毒母と毒弟との関係に縛られて、精神的にも自由になれない女性が、過去を辿る一泊旅行に夫と出かけたことが契機となって開放への第一歩を踏み出す話。 主人公の母親に自分の母との共通点をいくつか見出して、読みながら気が滅入った。例えば、何の根拠もないのに自分は与えられる側の人...
結婚してからも毒母と毒弟との関係に縛られて、精神的にも自由になれない女性が、過去を辿る一泊旅行に夫と出かけたことが契機となって開放への第一歩を踏み出す話。 主人公の母親に自分の母との共通点をいくつか見出して、読みながら気が滅入った。例えば、何の根拠もないのに自分は与えられる側の人間だと思っているところ、独りよがりの基準で人を評価するところ、自らは努力せずに甘い汁を吸おうとするところなど。 母親の華麗な日々の思い出が詰まった高級リゾートホテルが、今や一泊五千円の区の保養所となっており、その場所を訪れるという設定は面白く、続く展開を期待しながら読み進めた。けれど、甦ってきた過去の忌まわしい記憶の数々が語られるだけで、それ以上の展開がなく、何だか拍子抜けした。 旅の終わりのほうで、脳の発作を起こして不自由な体になった夫が特別な人間だと気づく。他人の悪意に鈍感で、不公平も、理不尽で矛盾した世界をも超越しているかのような夫に感化されて、自らの過去を以前よりも冷静に直視できるようになり、母親や弟ともほどほどの距離を置いて付き合えるようになれた、ということなのだろうか… ただ、主人公の能動性や切実さがどこにも見えず、他人任せの終わり方だなと感じた。毒親の問題は、本人がそれに真正面から向き合い、乗り越えようと日々努力しなければ、容易に克服できないものだと思っている。何となく上手にまとめられて終わってしまったようで、物足りなさが残った。 人物描写や心理描写の際の表現に違和感を覚える箇所がいくつかあった。
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亡霊のようにずっと自分の人生にまとわりついた過去。そういったものは誰でも1つは持っていると思う。 色鮮やかに、何度も繰り返し語られた過去の素晴らしい出来事。例えばそれが軽井沢の別荘でバーベキューをした優雅な休日だったとする。それを50年経ってから、もう一度同じ場所に行って、風化し...
亡霊のようにずっと自分の人生にまとわりついた過去。そういったものは誰でも1つは持っていると思う。 色鮮やかに、何度も繰り返し語られた過去の素晴らしい出来事。例えばそれが軽井沢の別荘でバーベキューをした優雅な休日だったとする。それを50年経ってから、もう一度同じ場所に行って、風化した別荘の床を踏んで、みてみる勇気はあるだろうか。 もし見てみたいと思ったら、読んでみることをお勧めする本。 素晴らしい本でした。
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「冥土めぐり」「99の接吻」の2編 不幸な境遇にあるが、半ば諦め、どこか他人事みたいに自分の人生を送っている女性が主人公という感じを受けた。 「私をリーダーに導いた250冊」に乗っていたので、読んでみるが何故?推薦理由が気になる。 話が分からないわけでも無く、文章に味も感じる...
「冥土めぐり」「99の接吻」の2編 不幸な境遇にあるが、半ば諦め、どこか他人事みたいに自分の人生を送っている女性が主人公という感じを受けた。 「私をリーダーに導いた250冊」に乗っていたので、読んでみるが何故?推薦理由が気になる。 話が分からないわけでも無く、文章に味も感じるが、どうも物語に入っていけない。少なくとも読んでいて楽しい気分にはなれなかった。 #私をリーダーに導いた250冊
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★2.5、おまけなし。 2作品ともキャラ設定の際どさとか結構なブラッシュボールを投げている。そうすると確かなストーリーというか強固な骨が無いと単なるあざとさで終わってしまうと思うけれど、多少物足りない感じ。芥川賞受賞作はもう少し性悪の要素が強くって良い、毒の使い方が甘いかな。もう...
★2.5、おまけなし。 2作品ともキャラ設定の際どさとか結構なブラッシュボールを投げている。そうすると確かなストーリーというか強固な骨が無いと単なるあざとさで終わってしまうと思うけれど、多少物足りない感じ。芥川賞受賞作はもう少し性悪の要素が強くって良い、毒の使い方が甘いかな。もう一方の作品は完全にデットボール、これ以上のコメントは要りませんな。
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2つの作品が収録されている。 「冥土めぐり」 過去の裕福な暮らしを引きずる母と弟。 そんな二人の期待を裏切り、平凡な太一と結婚した奈津子。 そんな太一は病のため足が不自由になる。 ある日、奈津子は太一を連れて昔家族と過ごした思い出のホテルへと旅に出かける。 「99の接吻」 四姉...
2つの作品が収録されている。 「冥土めぐり」 過去の裕福な暮らしを引きずる母と弟。 そんな二人の期待を裏切り、平凡な太一と結婚した奈津子。 そんな太一は病のため足が不自由になる。 ある日、奈津子は太一を連れて昔家族と過ごした思い出のホテルへと旅に出かける。 「99の接吻」 四姉妹の末っ子の菜菜子は、三人の姉を愛している。 一人の余所者の男性に恋をして嫉妬を募らせる三人の姉。 そんな姉たちを冷静に、時にはその男性に嫉妬しながら見つめる菜菜子。 芥川賞受賞作品ということだが、私にはちょっと難しかったかも。 2017.1.29
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表題作は簡単に言えば、アダルトチルドレンの治癒の話。主人公の感覚は分かるものが多かった。個人的に凄くハッとさせられたのは芸術作品を鑑賞してるときの感覚で、これは自分もまったく同じなので驚いた。同時に、客観的に見るとこれは芸術を味わう感性と真逆の思考回路だなと気づいた。自分の芸術を...
表題作は簡単に言えば、アダルトチルドレンの治癒の話。主人公の感覚は分かるものが多かった。個人的に凄くハッとさせられたのは芸術作品を鑑賞してるときの感覚で、これは自分もまったく同じなので驚いた。同時に、客観的に見るとこれは芸術を味わう感性と真逆の思考回路だなと気づいた。自分の芸術を見る目がないことがすとんと納得できた瞬間でした。 最後のシーンは感動した。蝕んでいたものが根本からなくなると、日常が変わるんだなあと。旅行自体は単なるお祓いみたいなものだけど、人間にはこういうプロセスが必要なんだよなと思う。 さて、めでたく歪んだ家庭という足枷から心理的に脱出できたわけだけど、その実際のきっかけが難病と頼りない夫というのが面白い。不幸を排斥したのは別の不幸だったという。ある意味奇跡なんだけどまったく奇跡感がなくて、読後もなんだがそわそわする。不思議な感覚だ。 不思議な感覚がするのは『99の接吻』も同じで、読んでいて終始どこか不安定な感覚を覚える。一見安定してるんだけど、いびつな重ね方をした積み木の上にじっとしているような感じ。そして独特なのが、結末の後も不安定感が残ることだと思う。始めの不安定点から確かに良い方に向かうんだけど、そこはまた別の不安定点であるようなしこりが残る。うまく言えないけれど、この作者にはいままで読んだものと違う異質なものを感じたので他の作品も読んでみたい。
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表題作より、99の接吻のほうが好きです。 4姉妹の、男を巡って変化していく物語。暗くて甘美的なお話でした。 田村君は出てくる必要あったのかなーとひっそり思いましたが……
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芥川賞受賞作で興味のある作品だった。 しかし、少し感情表現が激しく、オチがないものに感じた。ストーリーの終わりが感じられない。
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面白かった!ラティゲみたいに、えぐってえぐって、、って感じ。私の中で、松浦理英子とかアニー・エルノーの系列。 Je panse que c'est comme voyage, en refrechissant soi-meme.
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