海軍ダメージ・コントロール物語 の商品レビュー
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2015年刊。著者は元日本国有鉄道職員。 ダメージ・コントロール、略してダメコンを定点視座に、日本海軍艦艇の帰趨と建艦技術思想を開陳する。なかなか目にしないテーマであって興味深く読める作だが、米国艦艇のダメコンの具体的な実例を開示せず(できず)、比較視点が欠如する点は、この種の書の限界を感じずにはいられない。 さて、日本海軍のダメコンに関し、全く配慮していないわけではないが、組織面・人材面、そして技術面で独・米に見劣りすることは読み解けそう。 特に実例が挙がる独海軍の凄み。それは、例えばジェットランド海戦の展開と帰結に見ることができる。 同海戦では、艦艇数で英軍に相当劣りながら、これを個艦防御力の高さで戦術的に互角以上の結果に持ち込んだ戦いだ。 また、それをさらに洗練させたWWⅡ期の独戦艦ビスマルク。たった一隻で多数の英国艦隊と砲火を交え、長時間戦線を維持した(結果沈められたものの、撤退できた可能性も充分あった)こともそれに相当しよう。 一方の米軍。WWⅠの戦いで、いわゆる艦隊戦に遭遇することはそれほど多くなかったが、ジェットランド海戦の戦訓に丁寧に学び反映させた点は、そして真珠湾戦後にそれを洗練させた点は、米戦闘機の防御思想とも通じ合うところ。 このように各国の建艦思想がダメコンにも影響する点は興味深いところ。 では日本はどうか?。①平賀譲の悪影響と②他国の戦訓を学ばない(学べない?)点、③自国の敗戦の徹底分析の不足が読み取れそうだ。 ちなみに空母翔鶴が「傷だらけの英雄」とされたほど被害担当艦となったものの、逃げ延びた海戦が多かった。もちろんそれには理由がある。本書の書く翔鶴の構造ならば、他空母(大鳳等の後継は除外)より高いダメコンレベルを有していたからという解釈も可能だからだ。 逆に、赤城他ミッドウェーで沈んだ4隻の空母は、勿論、翔鶴には見劣りする。ところが、それは僅かな違いでしかなく、翔鶴並みの装備はさほど困難ではない。もしも、かような改装がなされていれば、ミッドウェーも違う帰結が招来したかも、との可能性も思い致し得る。
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