考える日々全編 の商品レビュー
分冊の時から立ち読みをしてゐた。池田某が亡くなつた以上、池田某自身から新たにことばが紡がれることはない。その足跡を絶やさないやうにするためにも、かうしてことばをまとめる作業といふのは意義があるのだらう。そのおかげで時間が離れてもまた池田某のことばに出会へる。 池田某がしてゐること...
分冊の時から立ち読みをしてゐた。池田某が亡くなつた以上、池田某自身から新たにことばが紡がれることはない。その足跡を絶やさないやうにするためにも、かうしてことばをまとめる作業といふのは意義があるのだらう。そのおかげで時間が離れてもまた池田某のことばに出会へる。 池田某がしてゐることは、ただ考へてみせることだけだ。ひとりで考へることではなく、ひとりで考へてみせること。ひとりで考へて生きて死ぬことのできたはずにも関はらず、池田某はそれを他のひとにみせてくれた。それはどの著作をとつても同じことだ。 生きて死ぬこと。いつでもどこでも誰にとつても変ることのない本当のこと。知りたいのはただそのことだけ。その根をつかんでしまへば、あとはその中で起きること。所詮この世のことだもの。デカルトの方法序説で示したデカルトの生き方。プラトンの見出したイデアの世界。哲学者たちはそれぞれの道筋で生きること死ぬことへと辿り着く。 何か特別なことをしてゐるのではない。ただ他のひとより生きること死ぬこと、本当のことといふことを考へてしまふ人種なのだと思ふ。それは別に金になることではない。他の人間の生活に役立つかと言はれればさうではない。かく生きるべしと生き方を決めるものではない。日々考へ続けること以外に彼らにとつて興味のあることはない。 時々池田某や先哲たちのことばをどうしやうもなく求めてしまふことがある。けれど、少しずつではあるが、池田某のことばを離れて考へることをしやうとしてゐる自分がゐる。
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