しょっぱい夕陽 の商品レビュー
40代後半の男女を主人公とした短編5つ。どの主人公もどこかでコンプレックスなり、人生への葛藤なりを抱えながら、満足できていない日常を送る。その中で起こる、小さな荒波をうけて、今の自分を受け入れ前向きに頑張ろうと決意して終わる。決してハッピーエンドではないのだが、読者に安堵感を与え...
40代後半の男女を主人公とした短編5つ。どの主人公もどこかでコンプレックスなり、人生への葛藤なりを抱えながら、満足できていない日常を送る。その中で起こる、小さな荒波をうけて、今の自分を受け入れ前向きに頑張ろうと決意して終わる。決してハッピーエンドではないのだが、読者に安堵感を与える終わり方をする不思議な短編ばかり。今40になったばかりで、それなりに人生をこなしてきた自分だが、もっと不器用な自分と向き合ってもいいかもと感じた。
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日本経済新聞社 小サイズに変更 中サイズに変更 大サイズに変更 印刷 しょっぱい夕陽 丁寧な作り、読後に心温まる 2014/12/24付日本経済新聞 夕刊 48歳の年女、年男たちの奮闘を軽妙に描く作品集だが、今回も読ませる。たとえば「肉巻きの力」という短編を...
日本経済新聞社 小サイズに変更 中サイズに変更 大サイズに変更 印刷 しょっぱい夕陽 丁寧な作り、読後に心温まる 2014/12/24付日本経済新聞 夕刊 48歳の年女、年男たちの奮闘を軽妙に描く作品集だが、今回も読ませる。たとえば「肉巻きの力」という短編を見る。 この作品のヒロインは結婚16年。高齢出産で産んだ息子はまだ小学生だ。育児と家事、さらに保険会社でフルタイム勤務と彼女は忙しい。夫は家電量販店に勤めていて、土日や祝日の休みはなく、息子のサッカーには彼女が付き合わなければならない。そのコーチがただいまの心の恋人なので、ヒロインはせっかくの休日の朝、まだ寝ていたい気持ちをエネルギーに変えて跳び起きる。心の恋人は数週間で替わることもあれば数日で替わることもある。一人の異性をずっと思いつづけているわけではないから、これは不倫ではないと彼女は考えている。 ヒロインのただいまの悩みは、サッカー・チームを仕切る花田さんだ。コーチと保護者の取り持ち役であり、まとめ役、世話役で、とにかく逆らえない。威張っている。 というところから始まる短編だが、読み終えると温かなものがこみ上げてくる。それは作者がここから丁寧に物語を作り上げているからだ。鮮やかな風景が現出するのはそのためだ。 (北上次郎) このページを閉じる NIKKEI Copyright © 2014 Nikkei Inc. All rights reserved. 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は、日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。また、本サービスに掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。
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同世代を描いた物語で、大いに頷きながら読み進めました。 講談と云うものをイメージでしか知らいないのですが、真打の講談師さんらしい軽妙な文章で、ぐいぐいと力業で読ませられるように一息に読み終えました。 女性を描いた二作『肉巻き』と『もえぎ』は秀逸。 どちらも我々中年の男から見えそ...
同世代を描いた物語で、大いに頷きながら読み進めました。 講談と云うものをイメージでしか知らいないのですが、真打の講談師さんらしい軽妙な文章で、ぐいぐいと力業で読ませられるように一息に読み終えました。 女性を描いた二作『肉巻き』と『もえぎ』は秀逸。 どちらも我々中年の男から見えそうで見えなかった女性の暗所をいきなり目の前に晒され、分かってはいたんだけど分かりたくはなかった・・、怖いもの見たさの結果の様な妙な読後感が新鮮でした。 『肉巻き』や『バナナ』は、神田茜さんご自身が思い切り楽しみながら書いている様子が目に浮かび、その楽しさが読み手であるこちら側にも感染ってくるようでした。 二年後には作中の登場人物と同じ年齢になる同級生達に読ませ、誰がカピバラハゲなのか、誰がもえぎなのか、酒を呑みながら話してみたくなりました。
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