なずな の商品レビュー
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自分の子供が赤ちゃんの時のことを思い出した。赤ちゃんがいるだけで周りがふっと優しくなる瞬間、赤ちゃんに振り回され自分の時間がなくなってクタクタになる瞬間、どれも覚えのあることばかり。そして、目にはしてたけど言葉で表現したことがなかったことも書かれていて、「あ、それそれ!あったあった!」と再度自分の経験を追体験したり・・・。ほんとうに子供を育てたことのある人だけが知る瞬間が書かれているようで、これは是非ともいろんな人に読んでもらいたいと思った。赤ちゃんを神聖化するでもなく、大変なものだと恐れるのでもなく、ただただ成長する生命として大事にすること。家族でもない人が助け合う、優しい時間が終わりそうなところで小説が終わるのも、とてもよかった。 子供のことだけではなく、町の再開発のことなども出てきて、もっと事件が起こるのかとおもいきや、そういうこともなく、ほどよいスパイス程度で話が収束していく。大きな事件にならないことが現実的でもあるし、でも、現実よりもずっと優しい気もする。 続編が読みたいような、あとはそっと胸にしまっておきたいような、佳編でした。
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「なずな」堀江敏幸 地方の小さな新聞社で記者をする「私」がやむない事情から弟夫婦の生後2ヶ月の赤ん坊なずなを預かる事になり、ミルクを与えるのも、オムツを替えることも満足にできない40代独身男が周囲の助けを借りつつ子育てに奔走する。 一人で生きていた「私」が、なずなを介してこれまでは接することのない周囲の人と新しい関係を築いてゆく。 なずなと「私」の成長物語。
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結婚歴も無く、もちろん子育て経験も無い秀一が、ちょっと神経質になりながらも愛情を持ってなずなに接する姿が描かれます。 機嫌良く寝、お腹を空かして泣き出し、哺乳瓶が凹む様な勢いで飲み、抱き上げればミルクと甘い汗の匂いを発し、爆裂音とともに排泄するなずな。主人公は秀一ですが、物語の中...
結婚歴も無く、もちろん子育て経験も無い秀一が、ちょっと神経質になりながらも愛情を持ってなずなに接する姿が描かれます。 機嫌良く寝、お腹を空かして泣き出し、哺乳瓶が凹む様な勢いで飲み、抱き上げればミルクと甘い汗の匂いを発し、爆裂音とともに排泄するなずな。主人公は秀一ですが、物語の中心には常に生後二か月のなずなが居ます。 それまで町の新聞記者として動き回っていた秀一が、なずなを預かることで在宅勤務に変わり、なずなを介して身近な人々との交流を深め、秀一も、そして周りの人々も少しずつ変化して行く話です。 堀江さんの小説は、天気に例えれば明るめの曇天の雰囲気があります。僅かな明暗の変化はあっても、雲がさっと切れて日差しが覗く事も、雨になることも無い。どこか静謐感の漂う世界。そんな世界の隅々まで丹念に描いて行く作家さんです。 この作品は450ページのやや長めの長編。丹念過ぎて読み進めるのには少々苦労しました。でも堀江作品らしく、その場より、ジワリと後に残る読後感がある作品の様です。
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新刊で出たときにけっこう話題になって、読んでみたいとずっと思っていたんだけど、月日が流れてようやく今ごろ。 刊行当時の批評か感想に、でもきれいごと、甘い、みたいなものもあったような記憶もあったんだけど、そんなふうには感じなかった。(まあわたしに子育て経験がないからかもしれないけど...
新刊で出たときにけっこう話題になって、読んでみたいとずっと思っていたんだけど、月日が流れてようやく今ごろ。 刊行当時の批評か感想に、でもきれいごと、甘い、みたいなものもあったような記憶もあったんだけど、そんなふうには感じなかった。(まあわたしに子育て経験がないからかもしれないけど)。今にも消えそうなはかなくて小さな命を預かる重圧とか不安とかがものすごく伝わってきた。そして喜びももちろん。 ときどき詩の引用があったりもして、全体的に詩的で、哲学的な感じ。 とりたてて大きなできごとがあるわけじゃなくて、淡々としていて、まわりの人々との会話が、どうでもいいような話をそんなに細かく書く?ってのも少々あって、ずんずん読み進めるとかいう感じではないんだけど、それもまた味があって。そうした会話のなかで、声高ではなく、環境の問題とか地域の問題とかも語られて、ちょっと池澤夏樹を思い出したり。 読んでいると心落ち着く感じ。そして、だんだん登場人物がみんな実在するような、この小説のなかの世界が本当にあるような気がしてきて。読み終わって寂しくなったくらい。 もしかすると以下ネタバレなのかも? 主人公が赤ちゃんをやむを得ず預かることになって、っていう理由が、なにか恐ろしい理由(赤ちゃんの両親が死んじゃったとか、逃亡とか、犯罪がらみとか)だったらちょっといやだなあとか思っていたんだけど(神経質か)、そんな事情ではなくて、それもとってもよかった。
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図書館にて。 今まさに生後2ヶ月の子供を育てているところだったので、その描写に共感したり、はっとしたり、貴重なものとしてありがたがる思いを呼んでもらったような。 途中で出てくる、コオロギの詩がよかった。 『くさのなかで コオロギがないている こんこんと わきつづけるいずみのよ...
図書館にて。 今まさに生後2ヶ月の子供を育てているところだったので、その描写に共感したり、はっとしたり、貴重なものとしてありがたがる思いを呼んでもらったような。 途中で出てくる、コオロギの詩がよかった。 『くさのなかで コオロギがないている こんこんと わきつづけるいずみのように ああ 手にすくいたい そのまま 手にたたえていたい 小さな空が おりてきて ほほずりするのを まって それからそっと もとにかえしたい』 そして、吉野弘の『生命は』の 『私も あるとき 誰かのための虻だったろう あなたも あるとき 私のための風だったかもしれない』が。
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弟夫婦の生後間もない赤ちゃん・なずなを預かることになった主人公。日々成長していくなずなちゃんの様子がとてもリアルに描かれていて、文章からあの赤ちゃん独特の甘ったるい匂いが香ってくるような錯覚を覚えました。
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物語はアップダウンすることなく淡々と進んでいくのですが、じんわりと沁みてきます。 叔父と姪っ子の関係でこんなにも愛情あふれる絆があったでしょうか?子育ての大変さが、苦しみではなく慈しみで綴られています。
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http://kumamoto-pharmacist.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-cda2.html
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押しつけがましくなく、ふわりとした空気がただよっているような本。育児ネタはあるあるで同意を求めすぎたり、逆に現実味に欠けたりするけど、自然に読めたのは、切り取り方の妙なんだと思う。
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帯によれば「生命の瑞々しさに溢れた育児小説」。まさにその通りです。イクメンという言葉では伝えきれない何かに溢れた小説です。 自宅が育児と仕事の両方を行う場であり、近隣の住民との触れ合いが公私の両面において描かれています。「育児小説」でもあり「仕事小説」でもある稀有な一冊。
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