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なずな の商品レビュー

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30件のお客様レビュー

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2021/06/08

知人の勧めで読んでみた初めての堀江敏幸。気が遠くなりそうなくらい同じことが繰り返されながらも、決してまったく同じではない赤ちゃんとの毎日を、丁寧で穏やかで衒いのない筆致で描く。細々とした育児のあれこれ、そしてなずなちゃんの生命の確かさ、瑞々しさ。経験者なら誰しも育児時代に思いを馳...

知人の勧めで読んでみた初めての堀江敏幸。気が遠くなりそうなくらい同じことが繰り返されながらも、決してまったく同じではない赤ちゃんとの毎日を、丁寧で穏やかで衒いのない筆致で描く。細々とした育児のあれこれ、そしてなずなちゃんの生命の確かさ、瑞々しさ。経験者なら誰しも育児時代に思いを馳せ、甘やかな苦労の日々を思い出すだろう。かくいう私も、スマホから顔を上げない女子大生が、黒目がちな瞳をクルクル動かし空(くう)を眺めていた時代をしばし思い出すこととなった。また物語はいろんな終わりや始まりを予感させる。結末は描かれない分、余韻として残った。

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2021/04/24

なずなの変化一つひとつが丁寧に切り取られているんだけど、そこに「私」や周囲の人々がなずなに向ける視線の温かさが滲んでくるのが胸に沁みた。赤ん坊が、そこに柔らかな世界を作り上げている様が優しく描かれていて、ほかほかとした気持ちになる。

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2020/07/14

ともに入院中の弟夫婦に代わり、生後2か月のなずなを預かることになった主人公の菱山は、なずなを育てながら、新聞記者としての仕事をこなす。初めての育児に悪戦苦闘しつつも、なずなの何気ない仕草や発声、確かな成長ぶりに新たな発見をし、喜びを見いだしていく。 医者であるジンゴロ先生、そのひ...

ともに入院中の弟夫婦に代わり、生後2か月のなずなを預かることになった主人公の菱山は、なずなを育てながら、新聞記者としての仕事をこなす。初めての育児に悪戦苦闘しつつも、なずなの何気ない仕草や発声、確かな成長ぶりに新たな発見をし、喜びを見いだしていく。 医者であるジンゴロ先生、そのひとり娘・友栄さん、バー「美津保」のママら周囲の温かい人達に見守られ助けられながら、菱山となずなとの絆が深まっていく。 淡々とした展開ではあるが、なんともいえない優しい雰囲気が漂う。また、主人公と友栄さんの距離がだんだんと近づいていく様子が興味深く、最後はどうなるか気になりながら読み進めた。 

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2020/03/29

主人公によって語られる赤ん坊の様子が、毎回、何一つ見逃すまいとするかのように仔細で丁寧。同じ丁寧さでこの人たちの日々を追っていこうという気持ちになる。

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2020/03/02

本の雑誌ベストから。タイトルからは内容が分らんかったけど、中心人物たる赤ちゃんの名前でした。火事の現場という、穏やかでない場面から語り起されるから、まさかのミステリ系⁉とか一瞬思ったけど、以降はほのぼのとした赤ちゃんとの日常へと、物語の調子は移っていく。周りから差し伸べられる救い...

本の雑誌ベストから。タイトルからは内容が分らんかったけど、中心人物たる赤ちゃんの名前でした。火事の現場という、穏やかでない場面から語り起されるから、まさかのミステリ系⁉とか一瞬思ったけど、以降はほのぼのとした赤ちゃんとの日常へと、物語の調子は移っていく。周りから差し伸べられる救いの手が暖かくて、気付けば自分もほっこりさせられている。特別でない毎日が綴られることで、かえってささやかな親切・配慮に思い至らされる結構。じんわり素晴らしかったです。

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2019/03/25

育児小説って? それも未婚の中年男性が主人公の育児小説? そういう、偏見にまみれた困惑を、この小説はすがすがしく振り払ってくれる。 それぞれ別の理由で入院生活を送ることになった弟夫婦から、生後二か月の女児、なずなを預かる。 この子がわずかな期間で、だんだん成長する様が、繊細に、...

育児小説って? それも未婚の中年男性が主人公の育児小説? そういう、偏見にまみれた困惑を、この小説はすがすがしく振り払ってくれる。 それぞれ別の理由で入院生活を送ることになった弟夫婦から、生後二か月の女児、なずなを預かる。 この子がわずかな期間で、だんだん成長する様が、繊細に、瑞々しく描き出される。 例えば、喃語。 音の種類が増えていくだけでなく、声の長さ、音色など、本当に観察がきめ細かい。 子どもの成長への驚きが、とうとう子どもを持つことができなくなってしまった自分にも、しみじみよく伝わる。 デンジロウじゃなく、小児科のジンゴロ先生や、その娘の看護師、友栄さん、行きつけの喫茶店美津保のママ、瑞穂さんやその周囲の人々、主人公の上司である梅さんなど、赤ちゃんを巡って周囲の人々が温かくなっていくのも心地よい。 同じ著者の『雪沼とその周辺』でも感じたけれど、土地にたたずまいが感じられるのも、この人の作品の特徴の気がする。 以前、学生の頃、地理学を専攻する院生と話をしたことがある。 彼は、例えば、村上春樹の作品を読むと、その土地がどのような地形か、ありありと描くことができる、と言っていた。 そういう人がこの人の作品を読んだら、どういう地形を読み取るのだろう。

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2018/11/05

赤ん坊そのものを描写するというより、赤ん坊に接している側のおとなの心理を見事に掬い取っている。赤ん坊の重さであるとか、部屋の空気を変えてしまうとか、わが子の小さいときを本当に思い出す。子供を持つと、自分の子供以外の子供への視線も変わってくるのだよね。 赤ん坊自身はなにをするわけ...

赤ん坊そのものを描写するというより、赤ん坊に接している側のおとなの心理を見事に掬い取っている。赤ん坊の重さであるとか、部屋の空気を変えてしまうとか、わが子の小さいときを本当に思い出す。子供を持つと、自分の子供以外の子供への視線も変わってくるのだよね。 赤ん坊自身はなにをするわけでもないのだけれど、周りのおとなたちに影響を及ぼす。 筋らしい筋もない小説だが読み応えあり。

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2017/07/15

育児中心の物語かと思ったら少し違った。 育てられているはずのなずなによって大人の方が変化している。 私も日々の生活でささくれだった心を平に整備してもらったようで読後とても気分が良い。

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2017/01/26

菱山は、弟夫婦の赤ちゃん「なずな」を数ヶ月預かることになった。赤ちゃんが側にいると、視点が変わる。世界が変わる。みんなが少しずつ優しくなる。まど・みちおの詩がたくさん引用されていて、それが本の雰囲気にぴったりだった。「ああ このちきゅうの うえでは こんなに だいじに まもられて...

菱山は、弟夫婦の赤ちゃん「なずな」を数ヶ月預かることになった。赤ちゃんが側にいると、視点が変わる。世界が変わる。みんなが少しずつ優しくなる。まど・みちおの詩がたくさん引用されていて、それが本の雰囲気にぴったりだった。「ああ このちきゅうの うえでは こんなに だいじに まもられているのだ どんなものが どんなところに いるときも」

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2017/01/19

弟夫婦の赤ちゃんを一時育てることになった主人公がおっかなびっくりで無我夢中に子育てする様子が,周りの静かな温かい眼差しの中でゆっくりと語られている.天使のようななずなを介して,周囲の人々と新たな関係性を築いていく様子,何でもない日常のそこ彼処にきらめくような新たなる気付き,少し田...

弟夫婦の赤ちゃんを一時育てることになった主人公がおっかなびっくりで無我夢中に子育てする様子が,周りの静かな温かい眼差しの中でゆっくりと語られている.天使のようななずなを介して,周囲の人々と新たな関係性を築いていく様子,何でもない日常のそこ彼処にきらめくような新たなる気付き,少し田舎風の町の様子とともにほっこりさせられました.

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