エデンの果ての家 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最後まで読んで思わず確認してしまった。「これで終わり?」と。主人公の弟が本当に殺人を犯したのかどうかをめぐるミステリーだと思って読んでいたので、そこがはっきりしないまま、「続く」という感じで終わっていて驚いたのだ。 しかし、しばらくじっくり反芻してみると、これはミステリーではなく、家族、特に親子の気持ちのすれ違いを描いた小説なのだ、ということがわかってきた。 親と子は同じ時間を過ごしながら、まったく違った記憶を持つ。そして、小さい頃の記憶はなかなか修正されないものなのだ。 主人公の父親にとてもよく似た人を知っている。自分の思い込みだけが正しく、他人はすべて自分の言うとおりに動くものだと何の疑いもなく信じ込んでいるような人。子どもについても、自分の気に入ったところしか愛せない。はやりの言葉で言えば「毒親」というやつだ。 これが母と娘の物語ではなく、父と息子、というのは珍しいかもしれない。息子だと、あんなふうに諦めの人になってしまうんだろうなあ。 主人公の妻がやけに完全体である。こんなよくできた人がいるんだろうか、と思ってしまうくらい、完璧な対応をする。彼女のストレートな言葉で父親の気持ちに変化が起きるあたりは、小説ならではの展開だなあと思う。あんなふうにストレートに、嫌味なく、後腐れなく意見するには、いったいどんなふうに育ってくればいいんだろう。 結局、弟は、親の歪んだ感覚の犠牲になったのだと思う。彼は母を愛していたからこそ、殺して捨ててしまったのだろうし、彼女も「愛していた」と思うからこそ殺してしまったんじゃなかろうか。 愛しているから、いい子だから「殺さない」という理屈は成り立たないよ、と思いながら読んでいた。 最後に、父と息子がほんのすこし歩み寄った感じがしたのがよかったかな。
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母親殺しの容疑で逮捕された弟、両親に愛されていないと殻に閉じこもる兄、ひたすら次男の無実を信じる父親をめぐる、家族再生の物語。家族が家族として成立する事の難しさがよく描かれています。我が「家族」は果たして家族として成立しているのかしらん?
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悲しいけど、イイ話。 主人公が自分の記憶を改善して覚えていたのが おどろいたというか、自分でも「こうだった」と思う 記憶は自分の思い込みではないのかと、思わされた。。 とりあえず産まれてくる子供に幸あれ・・・。
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【信じるよ、僕は。お前が母さんを殺すわけがない】大企業エリートの父と良妻賢母の母、溺愛された弟。完璧に見える家庭でひとり除けものの兄――しかし母親は殺され、弟が逮捕される。
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2014.10.6 読了 ★一つ 2020/04/11 とても良かった。 父息子の関係の微妙な距離が変化していく。 息子の妻、久美子がいることで、話がどんどん上手く進んでいく。
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