オーギュスト・ペレ の商品レビュー
本書の目的は「近代運動の発展過程を枠組とする近代建築史観」からは見ることのできない、20世紀前半のフランスで活動した建築家オーギュスト・ペレの全体像を明るみに出すことである。インターナショナル・スタイルへの収斂過程としてヨーロッパ建築を捉える近代建築史においてペレの名前は、鉄筋コ...
本書の目的は「近代運動の発展過程を枠組とする近代建築史観」からは見ることのできない、20世紀前半のフランスで活動した建築家オーギュスト・ペレの全体像を明るみに出すことである。インターナショナル・スタイルへの収斂過程としてヨーロッパ建築を捉える近代建築史においてペレの名前は、鉄筋コンクリート造の先進的な使用者として、主に<フランクリン通りのアパート>(1904)と<ポンデュ通りのガレージ>(1907)の二つにより登場する。たとえば「鉄筋コンクリートをはじめて建築的構成の表現手段として用いた」建築として<フランクリン通りのアパート>を取り上げた、ギーディオンによる『時間・空間・建築』など。しかし著者は、<フランクリン通りのアパート>は「近代運動の美学の諸々の構成要素を一堂に揃えた近代の市街地集合住宅の見事な表現の一つ」でありはこそすれ、それらの表現は「それぞれに先例を持」っており、純粋に革新的な建築ではないとする。言うならば、ペレをドラマチックな革新者としてではなく、19世紀折衷主義と20世紀機能主義、ボザールと前衛、ガデの古典合理主義とデュクのゴシック合理主義など、激しく揺れ動く時代変換の中で橋渡しをする一人の建築家として描いている。 とは言うものの、本書の大部分は、既存の言説を覆すことを主眼に書かれているのではない。同著者による『トニー・ガルニエ』で見られるような、文献から導かれる事実のみを丹念に紡いでいく印象のものである。その文献学的手法で、多くの建築家が関わりながらひとまずペレの作品として認知できる<シャンゼリゼ劇場>、<ノートル・ダム・ル・ランシー>をはじめとする「近代の鉄筋コンクリート造教会の雛形」となった教会建築、さらにアール・デコ博のパヴィリオンや独立住宅など、ペレの全作品に触れていく。 この進め方は一般的に退屈なものであるし、むろん、読み飛ばす部分もあるにはあるが、そういったところは躊躇なく読み飛ばせばいいだろう。本書のような文献学的性格が強い文章を読む上で大事なのは、大事なところだけを読まんとすることである。そして、著者の文体は、大事なところしか読まない読み方をする上で非常に機能的に働くよう、まとまり感とスピード感を意識しているように思える。いや、それは言い過ぎかもしんない。まったく特徴のない文体とも言える。どちらにせよ、とても明快に図式的な文体と言って間違いない。実際、ペレの全作品を詳細まで知る必要のある人間、および知る意欲のある人間なんて、日本に数えるほどしかいないのだから、このような文体は適切である。
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鉄筋コンクリート建造物の創始者。 フランスの国立美術学校ボザールで頭角をあらわし、建築物を多数手がけている人。コルビュジエに影響を与えた人でもあり、近代建築においては、著名な人である。現在の建物は鉄筋コンクリートが主流であるから、この人の建物における功績は偉大なものである。
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ペレのフランクリン街のアパートは近代建築史上重要な作品です。コンクリート建築の先駆けとしてペレを裂けては通れません。
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