野望の憑依者 の商品レビュー
鎌倉幕府の滅亡から室町幕府の成立にかけては、太平記を読んでから個人的に一番好きな時代。 実像はどうあれ、色々黒い逸話の多い高師直の栄枯盛衰は、まさにこの時代を表している。 しかし女性の存在から、人生の歯車が徐々に狂い始めるのは、いつの時代も変わらないな。
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高師直一代記。 タイトルからすると、本当の主人公は野望っていう実体のない思念で、それが憑依した人間の生き様と末路のお話。 乱世には、野望に憑依されたような人間はたくさんでてくるもので、野望という思念からすれば、楽しくて仕方ないのでしょうね。まさに人がゴミのようだ、でしょう。 し...
高師直一代記。 タイトルからすると、本当の主人公は野望っていう実体のない思念で、それが憑依した人間の生き様と末路のお話。 乱世には、野望に憑依されたような人間はたくさんでてくるもので、野望という思念からすれば、楽しくて仕方ないのでしょうね。まさに人がゴミのようだ、でしょう。 しかし、足利尊氏のみっともなさときたら。ただ、時代の主に担ぎ上げるだけの材料がそろっていたからこそ、歴史に残った人物。そういう低評価になるよね、高師直一代記を読むと。よくもまあ。将軍になれたもんです。
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15代続いた室町幕府。終盤のごたごたを考えれば、同じ15代の徳川幕府と比べるのは失礼かもしれないが、時代背景か暗殺色の強い時代の統治者だったともう。室町幕府のもし?を考えたらやはり面白いのは初代のような気がする。 「野望の憑依者」 やはり伊東潤先生の想像力と話のテンポは面白い...
15代続いた室町幕府。終盤のごたごたを考えれば、同じ15代の徳川幕府と比べるのは失礼かもしれないが、時代背景か暗殺色の強い時代の統治者だったともう。室町幕府のもし?を考えたらやはり面白いのは初代のような気がする。 「野望の憑依者」 やはり伊東潤先生の想像力と話のテンポは面白い。息をつく間もなくの表現しかできないが次から次へと続く展開は読んでる側を舞台に引きずり出すような感がある。常にだれかの尻馬に乗り、さらには弟の直義に家臣の高師直に尻を叩かれつつ、頂点に乗ったような感のある足利尊氏。 本作はそんな弱弱しい尊氏の側にいて敵は次々と撃破していく高師直にスポットを当てた作品です。もともと大筋は掴んでいたのですが、この時代の難題を次から次へと処理していくカリスマ性に能力はもし一部将として存在していたのなら源氏の嫡流などという名門嫌いの傾奇者たちが味方に付いたんじゃないでしょうか。 多くの身内に家臣を殺した尊氏の室町幕府とは師直が作り、そして師直の不遇が暗殺の歴史を繰り返したのではないでしょうか。
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高師直。足利尊氏の右腕として、主に軍事面で活躍するが、尊氏の弟直義と対立し、斬首される。 鎌倉時代と室町時代の間で、世間一般ではなじみの薄い南北朝時代。2人の天皇が並び立ち、その間を多くの武士たちが裏切りを繰り返す、ややこしい時代だ。しかし、著者は高師直のみにスポットライトを当...
高師直。足利尊氏の右腕として、主に軍事面で活躍するが、尊氏の弟直義と対立し、斬首される。 鎌倉時代と室町時代の間で、世間一般ではなじみの薄い南北朝時代。2人の天皇が並び立ち、その間を多くの武士たちが裏切りを繰り返す、ややこしい時代だ。しかし、著者は高師直のみにスポットライトを当てて、南北朝時代をシンプルに描くことに成功している。 小説の冒頭で師直が命乞いをする盗賊を斬る場面が見事なツカミ。生きることとは野心を持つこと、という師直の強烈なキャラクターが明示される。 そこからは、師直の軍師才能全開。鬱病っぽい尊氏を操縦し、頑固な直義と妥協し合い、敵対する楠木父子や新田義貞らを倒す。時々、女もつまみ食い。こうして、師直は尊氏を武家社会のトップへおし上げることに邁進する。師直に見えるのは力だけ、天皇や公家も役に立たなければただの人だ。 高師直はピンチをチャンスに変える野心の男だ。そして、彼が野心を失うことは、彼の破滅を意味する。
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鎌倉末期から室町まで、学校で習ってもあまり記憶にない時代。 自ら表に立って野望に燃える者と、それをあくまで陰から、後ろから支え、実際に動かしていく者と。歴史はいつもそうやって動かされていくのだろうね。 この時代、本当はすごく面白いんだと思うんだけどあまり人気がないのはなんでだろう...
鎌倉末期から室町まで、学校で習ってもあまり記憶にない時代。 自ら表に立って野望に燃える者と、それをあくまで陰から、後ろから支え、実際に動かしていく者と。歴史はいつもそうやって動かされていくのだろうね。 この時代、本当はすごく面白いんだと思うんだけどあまり人気がないのはなんでだろう。
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高師直の果てない野心の行く末。淡々と状況が推移していく場面もあるが、太平記の時代の流れが把握できて面白かった。
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「高師直」降臨。 北方太平記(佐々木道誉、赤松円心、北畠顕家、楠正成)と合わせて読みたいですね。 太平記ものに外れなしです。 尊氏が馬鹿に見えるようにしたんだろうけど、それはどうかな?
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南北朝の婆娑羅者、高師直の物語である。 足利家の家宰として、鎌倉幕府滅亡から室町幕府の立ち上げにかけて辣腕を振るうも、足利政権内の勢力争いで無残な死を遂げる太平記の名脇役。 同じ婆娑羅者でも終始飄々として『陽』のイメージが強い佐々木道誉に対して、高師直は殺伐とした『不』と鬱々とし...
南北朝の婆娑羅者、高師直の物語である。 足利家の家宰として、鎌倉幕府滅亡から室町幕府の立ち上げにかけて辣腕を振るうも、足利政権内の勢力争いで無残な死を遂げる太平記の名脇役。 同じ婆娑羅者でも終始飄々として『陽』のイメージが強い佐々木道誉に対して、高師直は殺伐とした『不』と鬱々とした『陰』のイメージが付きまとう。 そういう意味では、決してヒーロータイプではないが、本作では気鬱の病の尊氏を時には叱咤し、時には宥め賺して足利氏の家宰として、氏の行く末を尊氏に託せざるを得ない境遇に迷いを持たずに突き進む、一途な人間臭さも所々に見受けられる。 しかし、この時代の戦いは後の戦国時代の緻密な組織戦と違って、勝った負けたの展開が激しすぎる。こういうシーソーゲームの状況が太平記をスペクタクルに思わせるところかもしれない。
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伊東さんが高師直を書く!ということでとても楽しみにしていた本。 面白かった。 尊氏がはじめから嫡子ではない(兄高義が嫡子で、早世)こと、それにより高氏と上杉氏の対立が深まっているとか、師直が直義にも嫌悪を抱くひとつの理由になるとか、ひとつひとつの歴史的事実がぴたっとハマったように感じて、とても納得のいく前半の叙述だった。 楠木正成との相いれなさは面白かった。 いわゆる、源氏の正嫡で、新しい幕府を開いた!というような華々しいイメージの尊氏ではなく、 躁鬱だったらしい?という研究も踏まえて、尊氏の堂々としてなさ、ずるさ、みたいなのが出ていて面白い。
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