小学校 通知表 ポジティブ所見辞典 の商品レビュー
===qte=== 半歩遅れの読書術斉藤斎藤 通知表の書き方に見る現代 ポジティブな言い換えに涙 2018/11/24付日本経済新聞 朝刊 わたしは忘れ物が多い。年に3度は、終点にかばんを取りにゆく。低学年からそうだった。当時の通知表を出して読むと、1学期2学期3学期と、先...
===qte=== 半歩遅れの読書術斉藤斎藤 通知表の書き方に見る現代 ポジティブな言い換えに涙 2018/11/24付日本経済新聞 朝刊 わたしは忘れ物が多い。年に3度は、終点にかばんを取りにゆく。低学年からそうだった。当時の通知表を出して読むと、1学期2学期3学期と、先生のいらいらが募ってゆくのがよくわかる。つらい。 ところで現代は「ほめて育てる」時代だという。もしもわたしが現代の子どもだったら、と『小学校通知表ポジティブ所見辞典』(土田雄一編、教育開発研究所)を読んでみた。ネガティブな特徴を、いかにポジティブに言い換えるか、その例文が低・中・高学年と、3パターンずつ示されている。 たとえば「仕事を忘れがち」という弱点は、低学年「教師に言われて思い出せばきちんと仕事を果たす」、中学年「友達に声をかけてもらうとできる」、高学年「声をかけてくれた友達に感謝する」と言い換えられる。高学年の所見はこうだ。「○○委員会の仕事を忘れそうになった時に友達から声をかけてもらい、きちんとやることができました。『○○さん、ありがとう』と感謝の言葉が自然に出ていた姿に周囲も笑顔になりました」 忘れっぽい弱点はそのまま、周囲の理解と愛想のよさで、どうにか日々を乗り越えてゆく。ほめられて育ったもう一人のわたしを見守るようで、なんだろう、目頭が熱くなる。 このような通知表のマニュアル本は、かなりの数が出版されている。付属のCD―ROMから例文を、検索・コピペできるものもある。そんな読者の、すなわち「通知表を書くのが苦手」という先生の弱点をポジティブに言い換えてくれるのが、『キーワードでひく 小学校通知表所見辞典 道徳の評価追補版』(山中伸之編著、さくら社)の「はじめに」である。 山中先生はまず、私も昔は通知表を書くのが苦痛でした、と読者と同じ目線に立つ。ではなぜ苦痛なのか。それは「子どもたちと過ごす時間が多いから」だ。先生は「子どもたちについてあまりにもたくさんのことを知っているがために(略)ひとつの表現では満足できず、納得できる表現を模索して悩んでしまう」、つまり通知表が書けないのは「子どもたちへの愛情の深さと、子どもたちのために使った時間の多さの表れでもあるのです」。しかし「所見で悩んでいる間にも子どもたちは先生を必要としています」。そこで本書を参考に……。 行き届いた名文であり、理想の上司だ。もしこの人の部下だったら、倒れるまで頑張れてしまうだろう。第1回・買うのがちょっと後ろめたい本の前書き大賞を贈りたい。 (歌人) ===unqte===
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