まるまるの毬 の商品レビュー
麹町にある南星屋という和菓子やさんの話。 武家を出て腕一本で菓子職人になった治兵衛は、日本全国を旅してそこで見聞きした菓子を菓子帳につけて、そこからここでしか買えない菓子を作って売っている。いわば、伝道師だ。自分が覚えたものを、自分だけ味わって満足せずに持ち帰るということは、それ...
麹町にある南星屋という和菓子やさんの話。 武家を出て腕一本で菓子職人になった治兵衛は、日本全国を旅してそこで見聞きした菓子を菓子帳につけて、そこからここでしか買えない菓子を作って売っている。いわば、伝道師だ。自分が覚えたものを、自分だけ味わって満足せずに持ち帰るということは、それだけ責任も伴うし、大それたこと。 でもそれを、どうだこんな菓子があるのだぞ、と誇示するのではなく、謙虚にさらっと提供するから素敵だ。そして、そのお菓子ひとつひとつに今の自分の気持ちを乗せているからおもしろい。 お団子は「まるまる」。 丸くて白い団子のような、まあるい気持ちでいてほしい。 その父の思いに答えようと、己の毬を表に出せず外ではなく内に纏い、理想の娘を演じ続けてきた娘。そんな娘に、敢えて毬を外にくっけたとげとげの毬餅をつくらせるお父さんがいじらしい。 暑さが和らいだ夜に、空でも見ながらもしゃもしゃ団子が食べたくなる本。
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江戸では滅多に食べられない珍しい菓子を扱う行列のできる和菓子店、南星屋(なんぼしや)を舞台に繰り広げられる滋養豊富、風味絶佳な時代小説。 タイトルは『まるまるのいが』と読みます。 いやぁ~、面白かった! ひさびさの時代小説で初読み作家。 読むまでは不安だったけど まったく問題...
江戸では滅多に食べられない珍しい菓子を扱う行列のできる和菓子店、南星屋(なんぼしや)を舞台に繰り広げられる滋養豊富、風味絶佳な時代小説。 タイトルは『まるまるのいが』と読みます。 いやぁ~、面白かった! ひさびさの時代小説で初読み作家。 読むまでは不安だったけど まったく問題ナシ! 食べ物を描いた人情話だから 食いしん坊体質の自分の好みにピッタリハマったのかな(笑) (表紙に釣られて良かった~笑) それにしても全国の和菓子が 江戸にいながら買えるという設定が素敵過ぎます! 今で言えばネットショッピングみたいなものだし、 実際そんな夢のような店が当時の江戸にあったら 今とは比べものにならないくらい 繁盛したんじゃないかな。 いつも明るく元気ハツラツな 南星屋の看板娘、お君(おきみ)、16歳。 お君の母親で出戻りの身だが、 驚異の記憶力を持つお永(おえい)。 南星屋の主(あるじ)で 七福神の寿老人に似たお君の祖父の治兵衛(じへえ)。 治兵衛の弟で不良オヤジ、 相典寺(しょうてんじ)の大住職にして 南星屋の名付け親の石海(こっかい)。 カスドースの一件以来何かと南星屋に出入りし力になってくれる、 平戸藩松浦家の家臣、河路金吾(かわじ・きんご)。 この主要メンバーがみな、生き生きとして 読めば容易に映像として浮かんでくるから、 自分の周りにいる身近な友達や親戚のように思えて(笑) 親近感が湧いてくるんですよね。 だから話の先が気になるし、 元気な顔が見たくて また会いたくなる。 (NHKの連続ドラマなんて合いそう) 中身に軽く触れると、 門外不出の菓子「カスドース」の製法を盗み出した疑いをかけられ窮地に陥る治兵衛と南星屋を描いた 『カスドース』、 南星屋に弟子入りに来たのは 武家の倅(せがれ)でまだ10歳の子供だった… 『若みどり』、 近頃、何をするにしても上の空のお永を見て、好きな人がいるに違いないと尾行する娘のお君と河路金吾だったが… 『まるまるの毬』、 治兵衛が菓子職人になるきっかけとなった弟・石海との椎の木の思い出を描いた 『大鶉(おおうずら)』、 河路金吾に河路家に嫁入りしてほしいと突然告白されたお君だったが… 『梅枝(うめがえ)』、 など全7編の連作短編となっています。 武士の身分を捨て、16年もの間、国中を渡り歩き、 その土地土地の菓子を研究し、菓子職人としての腕を磨いてきた治 兵衛。 南星屋が魅力的なのは 味の良さと諸国の名菓の物珍しさだけではなしに、 下々や貧しい武士にも口にできる 安さと手軽さを身上としてるところも、素晴らしいのです。 (儲けは殆どないギリギリの暮らしだけど…) そして毎話ごとにお菓子をモチーフにし、 人情を絡めたストーリーが展開されていくのも実に巧みです。 お永やお君の切ない恋の話も織り交ぜながら 商売敵である柑子屋(こうじや)の主人、為右衛門(ためえもん)からの嫌がらせや、 治兵衛がひた隠しにする「ある秘密」がなんなのかというちょっとした謎もあり、 飽きさせない構成も上手い。 武蔵熊谷の『五嘉棒(ごかぼう)』、 伊予松山の『桜羊羹(さくらようかん)』、 糖蜜をからめ砂糖を贅沢にまぶしたしっとり甘い 『印籠(いんろう)カステラ』、 夏の川に緑の楓が舞っているような目にも美しい寒天菓子の 『錦玉羹(きんぎょくかん)』、 白いかりんとうの『若みどり』、 甘くて胡麻の風味が香ばしいカルタ札の形の干菓子 『白砂松風』、 黄色い饅頭を二つに割ると ゆずの香りのする月が姿を現す 南星屋オリジナルの和菓子 『南天月(なんてんづき)』 などこの物語の真の主役とも言える、 思わず舌なめずりしてしまうくらい美味しそうな和菓子の数々にも注目です。 しかし、今作を読んで、 あらためて思い知らされたのは 和菓子という日本古来の食べ物のスゴさと奥深さ。 四季の移り変わりをお菓子にたくし、 日本人は、目で、舌で、 味わい深い「芸術品」を作ってきました。 和菓子のいいところは、 花や鳥の声で季節を感じるのと同じように、 お菓子でも四季折々の季節感を味わえ、人生に色を添えてくれること。 かたちのない気持ちや季節を かたちのあるものに託して伝えようとする、 日本人の心持ちって本当にスゴいですよね。 この小説も同じく。 和菓子に込められた人々の思いを 隅々まで丹誠が込められた美しさで描いていて、 ページをめくるたびに花が咲き、 お腹の底から幸せになってくる小説です。 和の情緒や江戸時代の空気感に浸りたい人、 和菓子に目がなくて時代小説が好きな人、 時代小説は苦手だけど、和菓子なら任せて!って言える人にオススメです。
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江戸で娘と孫、兄に囲まれて、庶民相手に和菓子を商う「南星屋」に起きるいろいろな事件と人情話。ちょっぴりミステリーも。 連作短編を読み進むうちに、どんどん引きこまれていきます。最近読むようになった時代劇だけど、歴史を動かした権力者の物語だけでなく、藤沢周平さんのように、その時代に生...
江戸で娘と孫、兄に囲まれて、庶民相手に和菓子を商う「南星屋」に起きるいろいろな事件と人情話。ちょっぴりミステリーも。 連作短編を読み進むうちに、どんどん引きこまれていきます。最近読むようになった時代劇だけど、歴史を動かした権力者の物語だけでなく、藤沢周平さんのように、その時代に生きる市井の人たちを描いた小説には共感できます。西條さんや木内昇さん、朝井まかてさんなど面白い人たちが出てきてますます楽しくなりました。
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表紙の回転焼き、それも赤あんに惹かれて手にとった。 西條さんの小説は学生の時によく読んだ山本周五郎氏の市井もののように活き活きとした生活感が目の前に展開するようである。
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家族3人で営む菓子屋「南星屋」をめぐるお話。 登場人物がとても皆よく、心があたたまる。話の展開もよく飽きさせず一気に読めた。お君が手紙を焼くところは思わず泣いてしまった。
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江戸物で和菓子屋さん、しかも上様のご落胤がらみのゴタゴタに、恋もある盛りだくさん。でもなんといってもお菓子の魅力には勝てない。和菓子が食べたくなりました。続編もあると楽しいけれど、お菓子を考えるのも大変かしら。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館より。 ひさしぶりに好きなタイプの時代劇ものを読めて満足。 お菓子、美味しそう。出てくる人たちも好印象。 続編、ないのかな。 文庫化したら手元に残したい一冊。
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菓子屋の主人 治兵衛が色んな問題に巻き込まれるお話。 娘のお永と孫娘のお君と実の弟 石海とトラブルを乗り越えるんだけど、四人の家族思いな言動に涙涙… 旦那に浮気されて捨てられたお永、娘に「団子みたいに気持ちもまあるく、優しい女の子になりなさい」って言っていたお話がとても印象的。 ...
菓子屋の主人 治兵衛が色んな問題に巻き込まれるお話。 娘のお永と孫娘のお君と実の弟 石海とトラブルを乗り越えるんだけど、四人の家族思いな言動に涙涙… 旦那に浮気されて捨てられたお永、娘に「団子みたいに気持ちもまあるく、優しい女の子になりなさい」って言っていたお話がとても印象的。 お転婆なお君が花嫁修業に励んでいたのに、大きな力が動いて破談になって 手紙を燃やすシーンは涙なしでは読めず… でも遠くに行かず、ずっとおじいちゃんとお母さんと三人で菓子屋営むのが お君にとっても幸せだったのかも、と思ったり。 お父さんとは結局最後まで和解してないけど、お父さんのお願いで来てた左官の男の人と恋に落ちるのかな?と期待を持たせる終わり方。 裕福でない人も買えるように 工夫して作る和菓子。食べたいなあ。
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少しでもおいしいと思ってもらえるお菓子をと、 こつこつ商売している「南星屋」に次々とふりかかってくる困難。 それでも家族皆、お互いを思い支えあって乗り越えていく。 ほんわかと温かくやさしい気持ちになれるお話でした。 こういうお話は大好きです。 いつもまんまるい心でいられれば一番...
少しでもおいしいと思ってもらえるお菓子をと、 こつこつ商売している「南星屋」に次々とふりかかってくる困難。 それでも家族皆、お互いを思い支えあって乗り越えていく。 ほんわかと温かくやさしい気持ちになれるお話でした。 こういうお話は大好きです。 いつもまんまるい心でいられれば一番いいのにね。 なかなか難しい…。 和菓子食べたくなっちゃった~ ぜひ続編を読みたいです!
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身内だけでやっている小さな南星屋をめぐる連作。 短いのに読み応えがあるのは、展開がうまいからかなー。
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