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きつねのつき の商品レビュー

4.4

6件のお客様レビュー

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2020/03/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

あー面白かった。陣痛中も読んでたよこれ。 妻が天井と融合している、ていう断片的な内容だけ聞いて、これは面白いに違いないと思って夫に借りて読みました。 読んでみたらSFだった!でも面白かった。 当事者なのに、今まさにそこで起きてることなのに、日常に目を向けて家族を守りながらふつうに暮らしてるっていう、舞台はSFやのに話の視点がSFじゃないところが不思議感増しててイイ。 家族の日常の話だから最後は切なかったよう。

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2020/01/26

こちらも再読ですが好きです。 ぼんやりと見えてくるとおとかあと春子が暮らす世界の状況はとても厳しいのですが、ほのぼのしていました。「保育園送り迎えSF」。 春子はとても可愛くて子育ての大変さと子どもの成長のきらめきも感じたのですが、とおは何かよく分からないものですし、かあは家の天...

こちらも再読ですが好きです。 ぼんやりと見えてくるとおとかあと春子が暮らす世界の状況はとても厳しいのですが、ほのぼのしていました。「保育園送り迎えSF」。 春子はとても可愛くて子育ての大変さと子どもの成長のきらめきも感じたのですが、とおは何かよく分からないものですし、かあは家の天井と融合している。 とおの、家族を守りたい、を強く感じました。先は長くない、いつかはツケを払わなくてはならない、とわかっていても。 3.11を思わせる大災害で、ラストの、誰かが決めた全てを押し流そうとする描写はあの津波を思わせたのですが、あとがき読むと震災前の2009年に既に書かれていたようでした。 まともなものはひとつもないかもしれないけど、ほのぼのしていて寂しくて切ないお話でした。 かめ系のお話も良いですが、こちら系のお話も好きです。(北野さんから何系なのか言われたけど失念してしまいました…) 桜が生えているのはあたま山なのかな…?「おーい、でてこーい」も嬉しい。

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2018/08/18

「もうどうにもならんだろう」という世界で、都合の悪い絶望的状況は見えないふりをして、可愛い娘の送り迎えに精を出す話。 本当はそれどころじゃないはずなのに、娘を保育園に入れられるかに気を揉んでいるのは、暗喩的で自分の生活の中でも似たようなことが実はたくさんあるのではないか。 これ...

「もうどうにもならんだろう」という世界で、都合の悪い絶望的状況は見えないふりをして、可愛い娘の送り迎えに精を出す話。 本当はそれどころじゃないはずなのに、娘を保育園に入れられるかに気を揉んでいるのは、暗喩的で自分の生活の中でも似たようなことが実はたくさんあるのではないか。 これまでに読んだ『カメリ』などと比べると、家族愛というテーマが分かりやすい。 また、『カメリ』はもう人間の社会が行きつくところまで到達している感があったが、こちらは外の世界は普通に機能しているような描写も見られ、より主人公の暮らす世界が不安定な印象を受けた。 そういうの、僕は好きです

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2018/08/01

出だしは「もっと早く読むべきやったか、もうこんなかわいらしい喋り忘れそうや、いや、忘れそうで忘れてへん今やからこそええのか」とか思ったのに、ほのぼの育児話で終わる訳がない、そら北野勇作やもんな。やけどさ、かめくんとかカメリに比べても映像的に(勝手に想像してるだけやけど)キツいもの...

出だしは「もっと早く読むべきやったか、もうこんなかわいらしい喋り忘れそうや、いや、忘れそうで忘れてへん今やからこそええのか」とか思ったのに、ほのぼの育児話で終わる訳がない、そら北野勇作やもんな。やけどさ、かめくんとかカメリに比べても映像的に(勝手に想像してるだけやけど)キツいものがあるな。

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2018/05/15

大災害に見舞われ壊滅し、再構築され隔離された『人に化けた者』が生きる町で生きる家族の物語 少し詳しく書くと人間が作り上げた人工巨大人による暴走によって街を破壊し、人工巨大人の超活性細胞が人間を飲み込み、そして人間に呑み込まれ、互いに『生きる』ために再構築された世界で生きる家...

大災害に見舞われ壊滅し、再構築され隔離された『人に化けた者』が生きる町で生きる家族の物語 少し詳しく書くと人間が作り上げた人工巨大人による暴走によって街を破壊し、人工巨大人の超活性細胞が人間を飲み込み、そして人間に呑み込まれ、互いに『生きる』ために再構築された世界で生きる家族の物語です。妻は、暴走による巨大人の『肉の津波』に呑み込まれ、人に再構築出来ず、家の天井の壁と一体した生命体と化します。そんな妻から生まれた春子。"私"はこの小さな世界で、春子の保育園の送り迎えをする。 そう、この物語は『日常』を描いています。 時に生存のため、狐の如く化けた人が、呑み込まれた人間(人間だった、というのが正確な気もするがあえてしない)を誑かしたり…そんな奇妙な世界での日常。春子は、今読んでいる私たちと同じように、成長していきます。 その『小さな世界』は、その外にある『大きな世界』と全く違うのに、です。微笑ましくもあり、切なさも感じました。 3.11直後に出版された事もあり、現実の災害とこの物語を重ね合わせる部分もあるとおもいます(執筆自体はそれよりずっと前というのが驚きですけど) どこか胸が締め付けられる、切ない物語でした。 『何度もも夢に見て、その途中で目覚めた。あたかも、今からでもやり直せるかのように。』 『もちろん、やり直しなどない。それはわかっている』『いろんなものを真似て、それで化かすのだ。もっとも、それを悪ととるかは人それぞれだ。進んで化かされようとする人間だって、中にはいるだろう。そう、私も似たようなものではないか……あの夜、人工巨大人に家ごと呑み込まれてしまった妻を、同じ方法で修復しようとしたこの私もーー』 『とにかく、ここにこうしている』 この世界は切ない事や後ろめたい事が多い。でも、最後に家族3人で、花見が出来て良かったと思います。この世界で、3人は幸せに暮らす。そんな将来を想像し、切なさと小さな温かさを抱き、 『とぉ、わらってよ』 私は笑った。 と書かれた最後のページを閉じました。

Posted byブクログ

2014/06/26

人に化けた者たちが徘徊する町で、娘の春子と、いまは異形の姿の妻と、三人で暮らす。あの災害の後に取り戻したこの幸せ。それを脅かすものがあれば、私は許さない……。切ない感動に満ちた再生の物語。

Posted byブクログ