初音ミクはなぜ世界を変えたのか? の商品レビュー
“ボーカロイドの「現象」は何故生まれたのか?それは初音ミクというキャラクターがクリエイターたちの想像力を喚起したから、そして初音ミクという一つの「ハブ」を元に創造の連鎖が起こったからだった。 こうして初音ミクは単なるキャラクター人気としてのブームではなく、クリエイターたちの創作が...
“ボーカロイドの「現象」は何故生まれたのか?それは初音ミクというキャラクターがクリエイターたちの想像力を喚起したから、そして初音ミクという一つの「ハブ」を元に創造の連鎖が起こったからだった。 こうして初音ミクは単なるキャラクター人気としてのブームではなく、クリエイターたちの創作が重なり合うムーブメントとして広まっていったのだ。”[P.146]
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今や日本を代表する歌姫となった、初音ミク。 彼女はどのようにして生まれ、どこに行こうとしているのか。 この本はその初音ミクを、音楽的側面から見た初の本と言える。 ボーカロイドが開発されたその経緯や、ニコ動でのブレイクしていく様子。 それをきっかけにして様々な作曲家が生まれ、つ...
今や日本を代表する歌姫となった、初音ミク。 彼女はどのようにして生まれ、どこに行こうとしているのか。 この本はその初音ミクを、音楽的側面から見た初の本と言える。 ボーカロイドが開発されたその経緯や、ニコ動でのブレイクしていく様子。 それをきっかけにして様々な作曲家が生まれ、ついにはパリでオペラ公演をするに至るまで、非常に多くの人々にインタヴューが載せられている。 一読して感じたのは、この初音ミクという現象・・・日本のあらゆる物に神がやどるという思想や、日本の先端的音楽技術、様々なキャラクターを生み出し育てるという文化的土壌が背景にあったことが、単なる流行りではない、一つの新しい世界を生み出したことが分かる。 おそらくは日本以外ではこんなことは起こりえなかっただろう。 ネットでの音楽配信やダウンロード時代の到来は、音楽の衰退を招くどころか、新しい可能性を切り開いたと著者は説明する。 ミクをきっかけにして多くの才能が生まれ出でた事実の記述に自分は驚嘆した。 このような流れは今後も続くだろう。 グーグルやトヨタなど様々な企業とコラボし、海外でのライブは熱狂をもって迎え入れられた。 世界へと羽ばたく初音ミクの広がりは、とどまることを知らない。 彼女が繰り広げるこの舞台は、まだ序章が始まったばかりのようだ。
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「世界を変えた」のが前提で、それがなぜかと問う本。僕のあずかり知らぬところで、たしかに世界は変わっていた。 誰が音楽を殺すのか。DTMとインターネットで音楽は死ぬかと思われたが、死ななかった、というより新たな生命を手に入れた。オタク論でもボーカロイドの技術の話でもなく、ミュージッ...
「世界を変えた」のが前提で、それがなぜかと問う本。僕のあずかり知らぬところで、たしかに世界は変わっていた。 誰が音楽を殺すのか。DTMとインターネットで音楽は死ぬかと思われたが、死ななかった、というより新たな生命を手に入れた。オタク論でもボーカロイドの技術の話でもなく、ミュージックシーンに起こったムーブメントを、ボカロ誕生どころか、ヒッピー時代から辿っていく本。 ネギを振らせて遊んでいるうちに、とてつもないことになっていた。三回目のサマー・オブ・ラブ。ボカロPは必ずしも過去のミュージックシーンを気にしていない人も多いだろうけれど、こうしてつなげてみるときっとつながっている気がする。とはいえ僕は今、No Music,Yes Lifeだからなあ。Music方面よりも、やっぱり産業側でない人たちが起こした変化の歴史、として楽しもう、と思いつつ、割とボカロ欲しくなった。
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序章「僕らはサード・サマー・オブ・ラブの時代を生きていた」一章「初音ミクが生まれるまで」二章「ヒッピーたちの見果ての夢」の流れだけでも初音ミクが生まれた背景から技術の進化とヒッピーカルチャーとコンピューターを繋いだ男、そしてアメリカ西海岸というインターネット文化の始まりから今へ...
序章「僕らはサード・サマー・オブ・ラブの時代を生きていた」一章「初音ミクが生まれるまで」二章「ヒッピーたちの見果ての夢」の流れだけでも初音ミクが生まれた背景から技術の進化とヒッピーカルチャーとコンピューターを繋いだ男、そしてアメリカ西海岸というインターネット文化の始まりから今へとわかりやすく書かれている。 一九六七年のアメリカ、一九八七年のイギリス、二〇〇七年の日本、二十年おきのサマー・オブ・ラブには「新しい遊び場」と誰でも参加可能なコミュニティと中心に音楽があった。そう歴史が繋がれている。 ゼロ年代以降に分断されたものを柴さんが意識的に意欲的に自分が関わってきたジャンルできちんと接合しようとしている感じが読んでてする。 上の世代と今の若い世代の狭間で分断されてしまった歴史をきちんとこういう流れがあって初音ミクに繋がるんだよって。すごくそういうの大事だと思う。この書籍はできれば初音ミクとかが普通にあって聴いてきた若い世代が読む事で自分たちの親世代とか上の世代に起きた事やそれが脈々と繋がっている、歴史という時代の果てにあるんだよってことを知ることができると思うし断絶したものを繋げれる一冊になっている。 人形浄瑠璃などの文化がある日本で初音ミクが生まれて育つというかユーザーの間で育ち世界に放たれていったなどの話も興味深いがクリプトン社の伊藤社長にしている最後のインタビューは文化がいかに育って行くのか、一発屋みたいなヒットカルチャーから豊穣で次世代に繋がって行くものに育て行くかについての姿勢と新しいものは奇跡的なタイミングと出会いによって生まれてくるものだとわかる。 ボカロPたちもただ楽しむために始めたものが広がっていった。初音ミクを開発していた人たちのバックグランドにあったものが与えた影響など本書に書かれていることは「初音ミク」を巡るゼロ年の景色のドキュメンタリーだがこの十年に定番になって音楽シーンを賑やかなものにしている。 柴さんにはぜひ二十年後に起こりうるであろう「フォース・サマー・オブ・ラブ」について書いてほしい。その時二十年前に起きた「初音ミク」からの影響や類似点を挙げてもらってとなると音楽の歴史書のようになるのかもしれない。
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