65歳継続雇用時代の賃金制度改革と賃金カーブの修正方法 の商品レビュー
高年齢者雇用安定法の改正に伴い、いかに賃金カーブの改定による総額人件費の適正化を図るかが"マクロ的"かつ"理論的"に記述されている。 企業における人事制度は、仕組みと運用の両面を担保しないことには従業員の納得を引き出せず、制度導入すらまま...
高年齢者雇用安定法の改正に伴い、いかに賃金カーブの改定による総額人件費の適正化を図るかが"マクロ的"かつ"理論的"に記述されている。 企業における人事制度は、仕組みと運用の両面を担保しないことには従業員の納得を引き出せず、制度導入すらままならないのが実情である。 運用面に関する記述(いかに従業員の納得を引き出すか)が限定的なため、多くの経営者や人事担当者には活用しづらい一冊だと感じた。 特にシニア人材の活用を検討するうえでの1番の困難は、共に自社の酸いも甘いも噛み分けたシニア層の賃金を下げたり、役職を外すなんて人外じみた行為できるわけない、という理屈ではなく人間同士の感情的な問題である。 苦楽を共にした一心同体の経営者こそ決断出来ずに結局出来ない、ましてや人事担当者なら尚のこと出来ない。 シニア人材活用において、世の中の経営者や人事担当者の頭を悩ませる1番の論点は運用である。 運用面へのアプローチが少ないので、多くの経営者や人事担当者には活用しづらい一冊だと感じた。 その点、何ちゃってではない経験豊富な組織人事系コンサルタントには活用できる一冊。 我が国の報酬制度は、成果に対する報いという性質を前提としているため、賃金カーブの是正に伴って従業員に期待する役割がどう変化するかが同時に語られなければ、従業員個々の合意や労働組合の承認を得られない。 従業員に期待する役割の見直しは、自社のビジネスモデル、経営計画、ビジネスの成長ステージ、各職種ごとのコアコンピテンシー、各職種ごとの成長モデルとライフサイクル、従業員の集団特性を理解していなければ手をつけられない。 逆にこれらを理解しており、制度改革を実行できる方であれば、紹介されているモデルの理論自体は簡単なものなので、本書が役に立つと思う。 ...とはいえ、世の中の大多数の人事パーソンには、痒いところに手が届かなくて、結局自社はどうすればいいの?と参ってしまう一冊かな。
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