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木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) の商品レビュー

4.1

47件のお客様レビュー

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2017/09/10

(01) 木村政彦という主人公から離れることはないが,近代柔道史とも言える内容で,木村が活躍した20世紀前半の柔道が日本のスポーツ(*02)の中で大きな一角を占めていたことからすると,格闘技史を超えて,日本スポーツ史の重要な部分を含む内容になっている. また,戦後日本におけるプロ...

(01) 木村政彦という主人公から離れることはないが,近代柔道史とも言える内容で,木村が活躍した20世紀前半の柔道が日本のスポーツ(*02)の中で大きな一角を占めていたことからすると,格闘技史を超えて,日本スポーツ史の重要な部分を含む内容になっている. また,戦後日本におけるプロスポーツの初動がどのようであったか,その動きの中でプロ柔道やプロレスリングはどのように起こったかなどにも,本書の射程(*03)は及んでいる. (02) 柔道がメジャーなスポーツであったことなど,今からでは考えられないが,近代における武道の位置づけ,また武道がつなげた戦後社会の人脈なども興味深い. 20世紀後半のスポーツは安全に競技されるものであり,木村や師の牛島らが戦前に行なっていた鍛錬は,現代の様々なトレーニングを考える上でも何事かを示している. 柔道(柔術)がアメリカ大陸やヨーロッパへの展開することによって,かつてあった寝技につなげる最強の柔道が海外に保存され,現代の格闘技に復興されていることは,武道や武術も文化であり技術であることを告げている. (03) 本書の方法として,文献調査もさることながら,関係者へのインタビューに多くを負って構成されていることにも注目すべきであろう. つまり,この格闘技に関わる記録は,書かれたものとしてはあまり残らずにいたこと,過去の美化も含む自伝的な記述としては残されていたこと,講道館正史よりも新聞報道などが記録として価値があったこと,これらから洩れた過去が木村という強い個性とともに関係者の記憶の中にまだ遺されていたことなどはまだ歴史的な記述の及んでいない分野があることへの示唆にもなっている.

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2017/06/21

木村政彦、現代に、これほどの猛者がもう出現するであろうか?時代と師匠牛島辰熊により作られたものだか、悲しいながらも、その戦争という時代に大きく左右されてしまう。本書は単に木村一個人だけでなく、柔道史をも学べ、そこには未だ知られていない人物をも深く取り上げていて興味深い。

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2017/05/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

柔道史上最強として知られる木村政彦を中心に、柔道史を大河小説的に描いたノンフィクション。 上下巻のボリュームに圧倒されるが、余談の多い歴史作家のような文章は、講談本のようにぐいぐい読者を引き込んでしまい、あっという間に読み進んでしまう。 タイトルを見た読者のほとんどは、力道山がプロレスの試合で裏切り、ヤクザに殺害された事件が話の中心と思うところだけど、上巻の時点ではその話はほとんど出てこない。 上巻のポイントは、平面的にしか知られていなかった柔道成立過程、つまり明治以降、古流柔術がスポーツ競技化されることで講道館柔道なっていった、というような単純なものでは無かったということ。古流柔術は昭和になってもまだ十分勢いがあり、競技団体としては講道館の他に、大日本武徳会と高専柔道があり、それぞれルールや元にした流派の違いから、まったく違う世界を持っていたこと。また、現在ではほぼ忘れられてしまった牛島辰熊や安倍謙四郎といった天才的柔道家について詳しく調べられていることなど。 修行者、武道家が刺激を受け、モチベーションを上げたい場合、これ以上の本はなかなかないと思う。何100年も前の歴史の中の達人たちの話ではなく、ほんとについ先日まで生きていた武道家たちが、今では考えられないほどの肉体と精神力を持ち、超人的な練習を行い、破天荒というより無茶苦茶なこと平気でやってたことを知ると、俗に言われている自嘲的な日本人論が非常に薄っぺらく思えてしまう。

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2017/03/24

柔道史上最強の男、木村政彦の生涯を追いかけたドキュメンタリー調の本書。 大正の時代に活躍した怪物柔道家、牛島に見初められ、柔道そして格闘技の世界へ入っていく。 木村の歩んだ遍歴の上には柔道そして格闘技の歴史がそのまま載っているため、近代格闘技の歴史を知る上でもとても良かった。...

柔道史上最強の男、木村政彦の生涯を追いかけたドキュメンタリー調の本書。 大正の時代に活躍した怪物柔道家、牛島に見初められ、柔道そして格闘技の世界へ入っていく。 木村の歩んだ遍歴の上には柔道そして格闘技の歴史がそのまま載っているため、近代格闘技の歴史を知る上でもとても良かった。 高専柔道というのが、帝大を中心に発達した当時、講道館と肩を並べる程の存在とは知らなかった。 上巻は時代の波に翻弄されながら、日本国内で最強の地位を確立する話と海外へ出始める迄の話。

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2017/03/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この本で初めて木村政彦という柔道家を知ったが、強さも逸話も伝説的。 13年連続日本一、250㎏をベンチプレスで持ち上げ、1日9時間の乱取り(スパーリング)、さらに空手やボクシングにも精通するまさに格闘技の「鬼」。 244ページの写真の人間離れした肉体を見れば決しておとぎ話でないと感じる。もはや「刃牙」の世界の住人。強い奴が大好きな男子にとってはかっこよすぎる存在。こんな男が本当にいたなんて! 最強の男が栄光を掴みながらも時代に翻弄されていく。全盛期を戦争に奪われ戦後は闇家業に身を投じる。思想も持たない、駆け引きもできない木村にとってこれほどの悲運はない。 そんな中でも豪快で柔道バカな木村の人間性も魅力的。 また柔道が元々、総合格闘技的な性質があったことや講道館以外にも寝技に特化した高専柔道、古流柔術の流れを汲む武徳会といった他流派の存在は新たな発見。

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2016/10/13

第43回大宅壮一ノンフィクション賞、第11回新潮ドキュメント賞をダブルで受賞した作品である。『ゴング格闘技』誌上連載時(2008年1月号~2011年7月号)から話題騒然となった。ハードカバーは上下二段700ページの大冊である。単なる評伝に終わってなく、戦前戦後を取り巻く日本格闘技...

第43回大宅壮一ノンフィクション賞、第11回新潮ドキュメント賞をダブルで受賞した作品である。『ゴング格闘技』誌上連載時(2008年1月号~2011年7月号)から話題騒然となった。ハードカバーは上下二段700ページの大冊である。単なる評伝に終わってなく、戦前戦後を取り巻く日本格闘技史ともいうべき重厚な内容だ。にもかかわらず演歌のような湿った感情が行間に立ち込めているのは、著者が七帝柔道の経験者であるためか。実際、増田は泣きながら連載を執筆し、「これ以上書けない」と編集者に弱音を漏らした。 http://sessendo.blogspot.jp/2016/10/blog-post_13.html

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2016/07/29

これぞ伝説の男です。今をときめくグレイシー柔術に多大なる影響を与え、日本最強、もしかしたら当事世界最強だったかもしれない男の壮大なストーリー。最高です。

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2016/03/05

魂が震える。 木村政彦とは、戦前の柔道界で伝説となった格闘家です。とにかく強い。15年不敗。13年連続日本一、立ち技も寝技も最強、完全アウェーでのブラジル・マラカナンスタジアムでの勝利。そんな木村が、プロレスで力道山にボコボコにされます。 なぜか。そして、なぜ木村は力道山を殺...

魂が震える。 木村政彦とは、戦前の柔道界で伝説となった格闘家です。とにかく強い。15年不敗。13年連続日本一、立ち技も寝技も最強、完全アウェーでのブラジル・マラカナンスタジアムでの勝利。そんな木村が、プロレスで力道山にボコボコにされます。 なぜか。そして、なぜ木村は力道山を殺さなかったのか。 その答えを探すため、著者は木村の人生を追いかけます。この人生、生き様がすさまじい。まさに鬼というべき練習、天覧試合等の記述は、強い男に憧れる男の魂を揺さぶります。しかしそれと同時に、戦争、プロ柔道、ブラジル遠征、力道山との一戦の記述は、木村の背負った哀しい人生を伝えてくれます。 この本は強く、哀しい男の物語です。

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2015/06/27

(上下巻共通) これだけの人が柔道界では無視されているって言うことが信じられない気持ちでした。 現代の講道館のいけすかなさとかもとても印象深い感じ。 政治がからむと小汚くなるってことでしょうかね。 後半では、力道山の印象も酷く悪くなります。(^^; 長生きした関係者が多く、想像よ...

(上下巻共通) これだけの人が柔道界では無視されているって言うことが信じられない気持ちでした。 現代の講道館のいけすかなさとかもとても印象深い感じ。 政治がからむと小汚くなるってことでしょうかね。 後半では、力道山の印象も酷く悪くなります。(^^; 長生きした関係者が多く、想像より最近の発言があったりするのがびっくりでした。

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2015/04/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「木村の前に木村なし、木村のあとに木村なし」と言われた伝説の最強柔道家、木村政彦。なぜ力道山に負けたのか、緻密な取材と丹念な資料分析で解きほぐされた真実。

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