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パパの電話を待ちながら の商品レビュー

3.6

53件のお客様レビュー

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2022/12/28
  • ネタバレ

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アイスクリームの宮殿!? バター人!? 熱ないない病!? もうね、タイトルだけでもワクワクしてしまう。 『パパの電話を待ちながら』 ジャンニ・ロダーリ 内田洋子 訳 (講談社文庫) イタリア人なら一度は読んだことがある作家。 読み書きを覚えた子供が初めて自力で一冊読破する本。 それがジャンニ・ロダーリなのだそう。 訳者の内田洋子さんは、「モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語」の著者で、ことイタリアに関しては私が失礼ながら(勝手に)全幅の信頼を置いている人だ。 週七日のうち六日間、イタリア中を旅しているセールスマンのビアンキさん。 なかなか家に帰れないビアンキさんは、幼い娘のために毎晩家に電話をかけて短いお話を一つずつ聞かせました。そのお話とは……。 というお話。 56編のショートショートが詰まったおもちゃ箱のような一冊だ。 オチがあるのやないのや、子供が好きそうなナンセンスなお話もあれば、疲れた大人にそっと寄り添ってくれるような優しいお話もある。 狩人の鉄砲は撃つと嬉しそうな声で「パーン!」と言い、バター人たちは溶けないように冷蔵庫に住み、流れ星を作る機械を持っている魔法使いは、星が売れなくておなかがすいて機械をチーズに変えて食べてしまう。 雑誌から飛び出したネズミは「シュワッ、バーン、グルッ!」とマンガのセリフでしゃべり、信号機は緑でも黄でも赤でもなく青になることで、人々に「さあ自由になって」と言うのだ。 宇宙ヒヨコはたまご形のチョコレートから生まれ、海岸でビーチパラソルで空中に浮かぶ人はのんびり本なんか読んでいるし、回転木馬やエレベーターはあっという間に宇宙まで行ける。 平和を願うお話もある。 「鐘の戦争」は、長く続く戦争の話だ。 戦争が長引き大砲を造る青銅が尽きたため、仕方なく国中の鐘楼の鐘を溶かして大砲を造った。 ところが、撃つと大砲は「ディーン!ドーン!ダーン!」と美しい鐘の音を轟かせたのだ。 兵士たちはこれを祝いの鐘の音と思い、敵味方入り混じって平和を喜び合った、というお話。 何だか目が開かれる思いがしたな。 こういう話を聞いて育った子供たちは、その時は何とも思わなくても、大人になってハッと何かに気付くときが来るのかもしれない。 さて、私が結構好きだったのは、かわいそうな10のお話「2点増しで合格」だ。 ある日10は引き算に追いかけられて捕まってしまい、剣で切られて8になってしまう。(しかもなんと鼻血まで出ている 笑 ) 逃げた8は、今度は割り算に捕まりまっぷたつにされて4に。 4になってしまったもと10は泣きながらバスに乗り、降りたバス停で優しいかけ算に助けられ、3倍にしてもらって12になり「やったあ!」っていうお話。 かわいい。 一見子供だましでクレイジーな出来事を、少しの悲しさと大きな夢でデコレートし、地球と宇宙を縦横無尽に行き来するかと思えば、街なかでトロリーバスに揺られていたりもする。 この発想の源は何なのだろう。 キッチンペーパーのクルトンやインクのスープや蛇口のフライが宇宙の料理って、なんか楽しい! 偉大なる旅行家ジョバンニーノ・ベルディジョルノや、どこにでも落っこちる小さな女の子アリーチェ・コロリーナなど、同じ人物がたびたび登場してくるのも面白い。 最後のお話「地球と人のものがたり」では、不都合だらけの地球を何とかできるのは人間。さあ腕まくりをしましょう。という前向きなメッセージが投げられる。 「こういうお話を毎晩聞いたこの子供は、どんなに心が丈夫になったことだろう。」 と江國香織さんが書いている帯文に大きく頷く。 心の中にうずもれていたキラキラしたものを思い出させてもらったなぁ。 楽しかった!

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2022/07/19

とてもステキで可愛らしいシュールレアリスム。 何度も繰り返し読みたくなる。 子供頃にこんな本を読んでいたら良かったなあと思わずにいられない。

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2022/05/01

イタリアの作家さん。(国際アンデルセン賞受賞) 美容院でよんでいて、鼻が家出する話で思わず、クスッとしたら、担当の方に「何か面白い本ですか?」って聞かれちゃいました。イタリアの小話だよって答えておきました。 子どもが小さいときに読み聞かせしてあげれば楽しんだだろうなあ、残念! あ...

イタリアの作家さん。(国際アンデルセン賞受賞) 美容院でよんでいて、鼻が家出する話で思わず、クスッとしたら、担当の方に「何か面白い本ですか?」って聞かれちゃいました。イタリアの小話だよって答えておきました。 子どもが小さいときに読み聞かせしてあげれば楽しんだだろうなあ、残念! あ、でも私がしてもらいたかったかも。

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2022/04/05

イタリアの学校図書にはこの作者の作品が大抵あると訳者のあとがきにあった。  原題: Favole al Telefono (直訳すると、電話での物語って感じでしょうか) 1962年 プロローグに“交換台のお嬢さん”という表現があり、時代を感じる。  悲しいラストやシュールなもの、...

イタリアの学校図書にはこの作者の作品が大抵あると訳者のあとがきにあった。  原題: Favole al Telefono (直訳すると、電話での物語って感じでしょうか) 1962年 プロローグに“交換台のお嬢さん”という表現があり、時代を感じる。  悲しいラストやシュールなもの、ほのぼのした話、笑えるもの、色々あり読み終わった時にアー読んで良かったと思える、静かで優しい不思議な魅力を感じた。

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2022/01/03

優しくてワクワクする話ばかり。 私も子供の時にこのお話たちを聞かせてもらいながら眠りにつきたかった。なんて素敵なことだろう。 鐘の戦争、アーダおばさん、優しいジルベルト、熱ないない病、とんがりのない国が印象深かった。

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2021/11/20

童話に見られる「自由自在の世界観」があますところなく発揮されている。身の回りのものが意志を持ったり、何でも食べられる世界だったり。どこまでも行け、何でもありの世界。童話がそのような、世界を自在にするものだったことを久しぶりに思い出した。与え続ける太陽の話など、短いけれど大人にも含...

童話に見られる「自由自在の世界観」があますところなく発揮されている。身の回りのものが意志を持ったり、何でも食べられる世界だったり。どこまでも行け、何でもありの世界。童話がそのような、世界を自在にするものだったことを久しぶりに思い出した。与え続ける太陽の話など、短いけれど大人にも含蓄のある話がたくさんあった。それこそ心の栄養になるような本。我を忘れて時間を忘れて読むという感じではないのでとりあえず星3ですが、暖かい世界観を感じられる良書と思います。

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2021/07/11
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夜、出張先からお父さんが娘に電話で聞かせたという設定のショートショート56編。就寝のお供に。ふわふわ夢を見ているようだったり、どこか寓話的だったり。そうかと思えば、当時の世情をほんのり反映したのか、ちょっと寂しい話も紛れていたり。まあ色々。なかでも「壊さなければいけない建物」は気持ちわかる。大人もスカッとしたい。「トロリーバス75番」なんかは、通勤に疲れた人たちへのささやかなご褒美にも思えた。

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2021/01/28

不思議で、愉快で、ときどきハッとさせられて、ときどきなんじゃこりゃってつっこみたくなって、こんな小さなお話たちにこんなオバさんでもワクワクしちゃって、子どもだったらもっと楽しいんだろうな、と思いながらちょこちょこ読み進めました。なんとなしに食事の間に口に運んだら、実は極上のデザー...

不思議で、愉快で、ときどきハッとさせられて、ときどきなんじゃこりゃってつっこみたくなって、こんな小さなお話たちにこんなオバさんでもワクワクしちゃって、子どもだったらもっと楽しいんだろうな、と思いながらちょこちょこ読み進めました。なんとなしに食事の間に口に運んだら、実は極上のデザートだった!みたいな小品集。こういうお話たち、子どもたちには必須だと思う。堅苦しくは言いたくないけど、想像力をたくましくする一冊。

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2021/01/16

週6日家を空けるセールスパーソンのビアンキさんが、幼い娘からの要望で、毎晩娘の就寝前に電話でお話をひとつする、という設定。そしてそのお話56編が収められたのが本書。 日本の子ども向けのお話はオチがちゃんとあって、しかもハッピーエンドのものが多い。でも、ここに収められたお話はオチが...

週6日家を空けるセールスパーソンのビアンキさんが、幼い娘からの要望で、毎晩娘の就寝前に電話でお話をひとつする、という設定。そしてそのお話56編が収められたのが本書。 日本の子ども向けのお話はオチがちゃんとあって、しかもハッピーエンドのものが多い。でも、ここに収められたお話はオチがないものや、ハッピーでもアンハッピーでもない終わり方をするものが少なくない。これがイタリア人気質なのかどうかはわからないけれど、オチがなくて、自分でオチを考えなければ収まりがつかないというのが、なんとも楽しい。想像力豊かな大人になるかなあなどと思いながら、自分の子どもに聞かせることができたらさぞ楽しいのでは。幼い子どもをお持ちの皆さまには、ぜひお試しいただきたい。

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2020/12/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

父親が出張先から毎晩電話で娘に聞かせるおやすみ前のお話という構成で、56編のショートショートが収められている(イタリア語の言葉遊びが主となっている14編が翻訳困難で原書からカットされているとのこと)。幼くして父を亡くしている著者ジャンニ・ロダーリの生い立ちから始まり、戦死した親友の話、そしてこの本が最初に邦訳されたのは昭和42年で、その当時出版に携わった編集者の娘さんがこの本の企画者だという締めで終わる訳者あとがきまでもがまるで一編の物語のようで美しい。甥っ子が字を読めるようになったらプレゼントしたい。

Posted byブクログ