女流棋士 穢された美肌 の商品レビュー
絡め取られ堕ちていく奈落
マドンナメイト文庫を常宿としつつ悦の森文庫や宝島社文庫などにも作品を上梓していた作者の、単独長編としては竹書房ラブロマン文庫で初となる作品。そのディープでコアな作風に熱狂するファンを多数抱える作者にとってはアウェーとも言える他のレーベルでの作品になろうかと勝手ながら推測するが、読...
マドンナメイト文庫を常宿としつつ悦の森文庫や宝島社文庫などにも作品を上梓していた作者の、単独長編としては竹書房ラブロマン文庫で初となる作品。そのディープでコアな作風に熱狂するファンを多数抱える作者にとってはアウェーとも言える他のレーベルでの作品になろうかと勝手ながら推測するが、読み手も似たようなところがあり、自分にとっても初めての柚木作品として、良くも悪くも先入観無しで得られた感想であることに留意願いたい。 メインヒロインは32歳の人妻棋士。これが夫の弱みにつけ込まれて慰み者となり、裏の世界に引きずり込まれて羞恥の限りを尽くされるのは凌辱展開として王道の1つであろう。これに舞台としての将棋の世界を巧みに用いながら寝取られ要素を盛り込んだ点が特色と言える。題材が将棋だけに実在の固有な場所も出てくるため「おいおい、大丈夫か?」といった心配もしてしまうところだが、それはご愛嬌といったところか。このヒロインに憧れて将棋の世界に飛び込んだ姪っ子もサブヒロインのような、あるいはダブルヒロインのような立ち位置で登場する。 愉悦を覚え込まされても心は頑強に抵抗を続ける類いの凌辱ではないため、ヒロインが堕ちるのは早い印象。言葉責めでもあったことから最初の交わりでほぼ屈している。堕ちた人妻が数度の寝取られ的交わりを経てさらに墜落させられ、一体どこまで堕とされていくのかという奈落を描くことに主眼を置いていることもあって調教描写の方が幅を利かせる形となっている。故に、その調教や羞恥の場面はなかなかにえげつなく、アイデアにも富んでおり、割と淡々と進みながらも描かれていくヒロインの転落振りは不憫でもある。 姪っ子も毒牙にかけられてしまう際の成り行きがメインとほぼ同じだったところには今一つの捻りもほしい気がしたし、「欲しい女を手に入れる」凌辱者の目的が最終的には己の裏家業の充実にしか見えなかったところには寒々とした空気のみが漂う印象でもあったが、それでは何を以ってラブロマンかと言えば、それは2人のヒロインが夫に示そうとする想いであり、それが無残にも潰えていく中で夫が棋士として浮かび上がっていく、その皮肉さえも夫のためにと諦念を込めて寛容する妻の形を変えた献身に他ならない。この哀れが最後に読み心地として色を1つ付加していると感じた。
DSK
- 1