巨大災害のリスク・コミュニケーション の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
この本を読むきっかけとなったのは、アートエリアB1で行われたワークショップ。高齢者の「デジタル・デバイド」が災害時にどれほどのネガティブ・ファクターになるか、ということに興味があって参加したのだけれど、もののみごとにそれは覆され、逆に目から何枚もウロコを落としまくって返ってきた。ワークショップといいながら、ほとんどが講義になってしまって、しかもそれが全然飽きないほどの話し方の上手さにも惚れ込み、これは読まなきゃと思った次第。 つまり、今までの「災害に対する一般市民の目」というのは不安を「外」に託すことによって抑えられていたわけですね。「外」とは科学であり行政、研究によって予報のシステムは整い、建造物は耐震仕様となり、行政の管理によって避難所、支援物資なども「かなり」整っているのだろう…。という曖昧な自信が市民にはあり、自然災害というものを「忘れて」いたわけです。 しかし3.11以降、それは一気にに覆された。実際は市民にとっても行政にとっても科学者にとっても「想定外」のオンパレード、そして回帰したところは「津波てんでんこ」であり、「ココヨリ下ニ家作ルベカラズ」だったわけです。 著者が語るのは、一般人がシミュレーションに携わることの大切さであり、それは参加するだけではなく、想定されることがらにどう対応するかということまでを積極的に考察すること、そしてそれを行政を含む多様な人々でシェアし合うことによって、新たな災害防止体制を創り出すこと。 それは、単なる体制をつくるという結果だけではなく、相互にシェアし合うという共有体験を通じ、それぞれの人や組織の間に信頼感が生まれ、何らかのネガティブな結果が出ようとも、自責の念を最小に抑え「精神的な二次被害」を抑えることにつながるというわけ。 もう、つくづく感動しました。 介護も同じだと思う。自分や家族が老いるにあたって、どんなことが起きるか、それにどう対応すべきか、して欲しいか、そういうことを周囲と話し合って、それなりのシニア・ハザード・リストを想定しておく。そうすれば自分が望むような老いを過ごすことができ、周囲も命を送るにあたって、不必要な良心の呵責を感じないで済むのではないかと思う。 とてもとても勉強になったのでした。
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地震や水害が起きる前、または、起きた直後にとる、人の命を守るためのコミュニケーションの功罪を認識し、課題を特定し、解決策を追求したもの・・・それが本書である。 本書最大の特徴は、「人の命を守るためのコミュニケーション」という、重要ではあるが、そう簡単に答えが見つからない・・・い...
地震や水害が起きる前、または、起きた直後にとる、人の命を守るためのコミュニケーションの功罪を認識し、課題を特定し、解決策を追求したもの・・・それが本書である。 本書最大の特徴は、「人の命を守るためのコミュニケーション」という、重要ではあるが、そう簡単に答えが見つからない・・・いや、誰も答えを持ち得ない”重いテーマ”に関して、逃げずに、掘り下げようと努めている点だ。たとえば、従来であれば、「結局は訓練をやっておけばいいんだよ」的な平易な答えに落としどころを求めるような本が多かったのではないかと思う。 本書を読んでいて感じるのは、前段で述べたように”深掘り”をしているだけに、人の命を守るための本質に迫った本である、ということだ。逆に言えば、”これ”といった答えがない。「○○のツールを入れればいい」とか、「○○訓練をすればいい」とか、「○○マニュアルを作ればいい」・・・といったような、分かりやすい答えは、どこにもない。 むろん、こうした活動に通り一遍の答えがあるほうがおかしいのだから、当然といえば当然だとは思うが、それにしたって「やはり、具体的な、解答例が欲しい」という方には、本書は向いていないだろう。本書が向いているのは、あくまでも、人の命を守るための本質を理解した上で、みずからの発想で、自分なりの答えを見つける用意がある人だ。 書評全文はこちら↓ http://ryosuke-katsumata.blogspot.jp/2014/01/blog-post_13.html
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