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漂砂のうたう の商品レビュー

3.6

48件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    16

  3. 3つ

    19

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2014/02/26

人物設定は地蟲を思いおこさせるが、心情描写を主人公に絞り込んだため登場人物の個性がひとりひとり際立っているように感じられる。傑作。

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2014/02/15

144回 2010年(平成22)下直木賞受賞作。世が江戸から明治へ移った頃、遊郭で働く元武士の男と彼と絡む人々の話。明治維新により侍や遊女、廓の人々、博徒たちはそれまでの生業を変えることを強いられた。あくまでも現状にしがみつくもの、羽ばたこうとするもの、その足を引っ張るもの。そん...

144回 2010年(平成22)下直木賞受賞作。世が江戸から明治へ移った頃、遊郭で働く元武士の男と彼と絡む人々の話。明治維新により侍や遊女、廓の人々、博徒たちはそれまでの生業を変えることを強いられた。あくまでも現状にしがみつくもの、羽ばたこうとするもの、その足を引っ張るもの。そんな輩に囲まれるなかで、主人公だけがどこにも踏み出せずにグズグズともがくさまがおもしろい。おすすめ。 しかし、松井今朝子の『吉原手引草』やなかにし礼の『長崎ぶらぶら節』など遊郭を舞台とした直木賞作品は多いですね。そこには華やかさ、せつなさ、男女のかけひき、女どおしの争い、裏切り、廓システムの非日常性など小説をおもしろくする題材が全て揃っているからだと思います。

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2014/01/27

時代が軋みながら変化し、永く続くと思っていた居場所が唐突に消えるとき、自分は身を委ねられる側なんだろうか…などと思ってみたり。傑出の人物ではなく、渦に飲み込まれる凡庸な人々の側から見た維新に、この時代に生きたら吸っただろう空気を感じた。

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2014/01/13

主人公と年が近いせいか、とてもリアルな物語と感じました。焦燥感を抱えながらも廓で生きて行くしかない現状。廓で働く人は皆人間臭く、ああ、こういう人いる!と何度も頷きながら読みました。そんな中で小野菊だけが異様に強い。その強さはある人との絆が故だと。絆が人を強くするという教訓でしょう...

主人公と年が近いせいか、とてもリアルな物語と感じました。焦燥感を抱えながらも廓で生きて行くしかない現状。廓で働く人は皆人間臭く、ああ、こういう人いる!と何度も頷きながら読みました。そんな中で小野菊だけが異様に強い。その強さはある人との絆が故だと。絆が人を強くするという教訓でしょうか…小野菊という人がとても好きですが、非現実的な完璧なヒロイン像という印象も受けました。最後、龍造に武士の子であることを見抜かれていたときの涙など、人の感情がとてもリアルで繊細に描写されており、すごい小説だと思います。

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2013/12/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

明治維新後の下町の遊廓に吹き溜まる人々。歴史の教科書で習うような維新後の出来事、大学の設置、自由民権運動、西南戦争だのを吹き溜まりから斜めに見上げるやさぐれた主人公の中途半端な荒みっぷりにゲンナリし、読んでいて楽しくはない。でも、このような視点もきっと当時あったのだと思えるリアルさ。籠の鳥は籠を開けても、必ず喜んですぐに飛び立つとは限らない。

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2016/06/19

さすが木内さんと思える作品です。明治初期の世の中の急変と、そのなkでどこか江戸の雰囲気を残しながらも変わって行く遊郭の雰囲気がしっかり伝わってきます。ですが、好きかと言われれば左程でもなく。 『漂砂のうたう』と言うのは妙なタイトルだと思っていたのですが、読んでみれば納得。まさしく...

さすが木内さんと思える作品です。明治初期の世の中の急変と、そのなkでどこか江戸の雰囲気を残しながらも変わって行く遊郭の雰囲気がしっかり伝わってきます。ですが、好きかと言われれば左程でもなく。 『漂砂のうたう』と言うのは妙なタイトルだと思っていたのですが、読んでみれば納得。まさしく時代の激変の中で漂砂の如く漂う主人公達。特に 主人公の定九郎の諦念(というより逃避かも知れません)が精緻に描かれます。その姿が何とももどかしく。一方で時代に流されずしっかり根ざした妓夫の龍造や花魁の小野菊。むしろこ

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2013/12/09

明治維新後、遊女屋で働いている元武士の青年のお話。それまでの生活や考え方、社会の何もかもが覆って、自らの存在価値さえも見失った人々が鬱屈を抱えてもがき苦しむ様を、恐ろしくも哀れにも感じた。突きつけられた厳しい現実から逃げようとしてもどこにも行き着かない閉塞感、諦観。 そんななかで...

明治維新後、遊女屋で働いている元武士の青年のお話。それまでの生活や考え方、社会の何もかもが覆って、自らの存在価値さえも見失った人々が鬱屈を抱えてもがき苦しむ様を、恐ろしくも哀れにも感じた。突きつけられた厳しい現実から逃げようとしてもどこにも行き着かない閉塞感、諦観。 そんななかで自分というものを見定めて、置かれた場所で生き抜こうとしたり、居場所を探して一旦逃げた場所に戻ったりする強さを持った男女もいる。 昏く、不思議な味わいの小説。最後に少し光が見えて、救われた気がした。

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2013/11/30

■読むまでの経緯 「茗荷谷の猫」で知り、好きになり、その他三作くらい読んでさらに満足し、直木賞受賞というこの本も気になっていた。そして中野翠さんの歌舞伎本か落語本かのどちらかで、「三遊亭圓朝の文化的存在感が(この本を読むと)よくわかる」というような紹介を読んだときには、私はこれは...

■読むまでの経緯 「茗荷谷の猫」で知り、好きになり、その他三作くらい読んでさらに満足し、直木賞受賞というこの本も気になっていた。そして中野翠さんの歌舞伎本か落語本かのどちらかで、「三遊亭圓朝の文化的存在感が(この本を読むと)よくわかる」というような紹介を読んだときには、私はこれは絶対読もう!と心に決めたのだが、どう検索しても単行本しかヒットしない。本屋にいくたび思い出して調べては、まだ文庫化されてない…と落胆。そんなある日、ふと電車で顔をあげたら、集英社文庫の中吊り広告に「漂砂のうたう」の文字が! ■残念な点 時代ものだし、遊郭が舞台の話、聞き慣れない用語が多い。こういうとき、司馬遼太郎は物語の勢いを止めずに物事の説明をしてくれるのがうまいと思う(楽しいだけじゃなく知識が増えた感覚が得られる)。折しも司馬作品を読んだ直後だったので、そこのところの置いてきぼり感が気になり、消化不良な感触が残る。読んでたらなんとなくわかるし、雰囲気でじゅうぶんでもあるのですが。 英雄的な人物を小気味良く書いて惚れさせるような司馬さんのタッチとはそもそも違う、って、わかっちゃいるのだが、読み始めは特に重さに馴染めず、熱中して読み進むことはあまりできなかった。単純に直前の読書との比較の問題かどうかはわからないけど。 つまりはっきりいって、難しくてよくワカンナイ、と思いながら読んだ部分も少なくない。 ■良かった点 明治維新という大転換のその直後、西南戦争とか、自由民権運動とか、世は激動なんだが、俺には係わりねえって言っていながら人一倍拘っていたり、自由だ平等だなんて嘘っぱちだと噛みついてみたり、閉塞感、鬱屈、惨め、諦め、そんなこんなの存念がうずまく、そんな雰囲気を、理屈じゃなく、味わった。基本、木内昇さんは「ヒーローじゃない」ものの人だと思います。 最近、幕末~明治初期ものが続いているので、なお楽しい。 圓朝という人が、この時代に、今にも残り歌舞伎にもなったような新作落語をたくさん作ったということ、これは、この本のおかげで忘れないと思う。 ■追記メモ 舞台となった根津遊郭は根津神社のあたりにあったが、作中でも語られた通り、近くに東大ができたため移転させられる。その移転後の場所は洲崎。洲崎アイランドの洲崎、現東陽一丁目。縁があるなあ。

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