アラブ500年史(上) の商品レビュー
16世紀のオスマン帝国によるアラブ世界征服から、英仏を中心としたヨーロッパ植民地時代、パレスチナの災難までを、気鋭の歴史家が鮮やかに描き出す。
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中東事情がさっぱりわからないので手に取りました。読めるか不安でしたが、なんとか上巻を読み終えました。パレスチナ紛争がはじまったところ。 「サルでもわかる」とか「マンガで読む」などを読むより何倍も時間も脳力もかかったけれど、かかった甲斐のある、初心者にもやさしいアラブ史です。
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アラブ近現代史を専門とする著者は現在、オックスフォード大学セント・アントニー・カレッジ中東センター所長を務めており、本書はこの著者の専門性が余すことなく発揮されたアラブの歴史書です。 本書で取り上げているアラブ史はオスマン帝国支配からオバマ大統領就任まで500年間、そして巻末に「...
アラブ近現代史を専門とする著者は現在、オックスフォード大学セント・アントニー・カレッジ中東センター所長を務めており、本書はこの著者の専門性が余すことなく発揮されたアラブの歴史書です。 本書で取り上げているアラブ史はオスマン帝国支配からオバマ大統領就任まで500年間、そして巻末に「アラブの春」を受けて執筆された追記が記載されています。 読み応え十分な内容となっており、歴史的背景に基づきアラブの現状を理解したい方には必読書と言えるでしょう。 では前置きはこの位にして以下で簡単に内容まとめ。 オスマン帝国によるアラブ支配は、当初イスラム教の保護と公正な司法によってアラブ人の支持を得ていた。 しかし、帝国は衰退によりヨーロッパ諸国に対して劣勢となり、それに伴い中東各地でアラブ人が実権を握り始める。 この劣勢を解消しようと帝国内ではヨーロッパを参考にした様々な改革が行われるが、失敗。 その際に生じた借金によってイギリス、フランス等のヨーロッパ諸国に国の実権を奪われる。 第1次世界大戦、帝国はドイツ側に立って参戦するも、イギリスの分離工作(アラビアのロレンスはこれをテーマにしている)等が行われる。 そして敗戦に伴い帝国解体、中東各地はヨーロッパ列強に"戦利品"として分割支配される。 尚、オスマン帝国支配下においてアラブ・ジャーナリズムが芽生えた。 このジャーナリズムによってアラブは元々一つの世界だったと言う、アラブナショナリズムの思想が広がる。 そして帝国解体後、このナショナリズムに基づき、アラブ統一国家の建国を求める動きが出たが、この動きはヨーロッパ列強の暴力により鎮圧される。 第2次世界大戦後、弱体化したヨーロッパ諸国の支配から続々と中東各国が独立。 しかし、イギリスの嘘と帝国主義の結果誕生したイスラエルとの度重なる戦争と敗北、特権階級化したかつてのナショナリストの腐敗、権力の世襲化。 これらに幻滅したアラブ社会において、イスラエルに対する頑強な抵抗姿勢を見せるイスラム勢力が支持を伸ばし始め、今に至る。 支配と反発。 反発に対する暴力的な鎮圧。 この暴力により、平和的な抗議・反対活動が暴力的な物へと変貌。 本書が描くアラブの歴史から、この様な構図が浮かび上がって来ます。 ここから読み取れる教訓は、 相手の精神までも完全に打ち倒すまでに圧倒的な力を行使するならともかく、単純に相手の反発を抑え込むだけの力の行使は、問題の先送りとそれによる問題の拡大しか生み出さない と言う事ではないでしょうか? この理解が正しければ「相手の心までも変える圧倒的な力の差が無ければ、力で自分の意思を相手に押し付けるのは損」と言う事になります。 イスラム勢力の背景やツールとしての「力」の性質やその限界等、様々な事を史実を通して学ばしてくれる本書。 厚めの上下巻セットの本ではありますが、優れた内容と良く練られた文章にスイスイと読み進められ、アラブに興味をお持ちの方にはお勧めです。 また冒頭で述べた様に、歴史的背景に基づき現在の中東情勢を理解したい場合には必読と言えるでしょう。 お時間のある時にでも一読されては如何でしょうか。 追記) 長きに渡る支配の歴史の影響から抜け出しつつあるアラブにおいて、自らの問題を自ら解決する動きが現れ始めており、これが「アラブの春」等に表れています。 アラブの春後、アラブ各国で行われた選挙においてイスラム勢力が支持を伸ばしている様子に欧米諸国を中心に失望の声が上がっていますが、上記の歴史を踏まえればこれもやむなしと言えるでしょう。 そしてアラブ各国の力がより強固なものとなり、他国からの干渉(例えばイラク戦争等)を撥ね付ける力を持つにつれ、過激派もやがて社会からの支持を失っていくのではないかと思います。
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邦題はともかく、500年のうち400年ほどはこの前巻の中ほどで終わります また、アラブと言ってもページの多くはオスマンとそれに対するエジプトの動きが殆どを占めています そこにフォーカスしてるという意味ならそれなりに濃い内容の本であるとは言えますが
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