経済思想の巨人たち の商品レビュー
著者独特の観点でセレクトした36人を紹介する社会主義崩壊後の約30年前に書かれた本。経済思想史の教科書では取り上げられないような人も結構いるので、読み物としては面白いが、学術的ではないことに留意。
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◆実証に依拠しない思い込みの権化の書は、著者の人間性も白日に晒す。著者が専門とする経済「倫理」の名が泣いている◆ 2013年(底本1997年)刊行。 著者は元成蹊大学名誉教授(経済思想史・経済倫理学)。 古今東西の36人の思想家・実務家(経済学者でない人も包含)の経済面での...
◆実証に依拠しない思い込みの権化の書は、著者の人間性も白日に晒す。著者が専門とする経済「倫理」の名が泣いている◆ 2013年(底本1997年)刊行。 著者は元成蹊大学名誉教授(経済思想史・経済倫理学)。 古今東西の36人の思想家・実務家(経済学者でない人も包含)の経済面での理念・思想を開陳せしめる書である。 ただし、多人数による雑駁さに加え、如何にしてかような思想に至ったかの淵源と思索過程の開示が貧しく、やや浅薄だ。 また、著者の自由市場至上主義は兎も角(ただし、それゆえに本書にも人選に難がある)、完全競争や情報の対称性を所与の前提としつつ議論を立て、思想家を評定していくという誤謬(というより、現実を見ずに机上の空論で満足する傾向)も散見される。 ただ、これとてあくまで経済理論の範疇であり、現実を見て理論的に正しいかどうかに懸かってくるのみだ(勿論、行動経済学の知見などに止まらず、現実を見れば、完全競争原理、自由市場主義はあくまでもモデルに過ぎず、その不正確性は言わずもがなだが)。 さらに問題なのは次の件。 「『劣悪』な、出来の悪い人間を社会がいかにしてコントロールするか(⇒何様ですか?)、いかにして犯罪者になるのを防ぎ(⇒出来の悪い人が犯罪者になる必然の関係はない)、勤勉に働かせるかか(勤勉な振り込め詐欺者はどう評すべきなんですかね?)。この問題は貧困問題の変種であるが…」と衒いなく叙述する。 これは、実証に依拠しない思い込みの権化と著者の人間性が滲み出た部分である。 それ故に、彼をして学者と名乗らせてはならない上、人として〇〇すべき存在と確信。 なお、フリードマン批判部分のみは参考に供する。
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古今東西の経済思想家36人の理論をコンパクトにまとめたもの。ヘシオドスや菅子、プラトンから、石田梅岩、福澤諭吉、北一輝、もちろんアダム・スミスやマルサス、リカード、ケインズにシュンペーターフリードマンなど、多彩な理論家がとりあげられ、その理論だけでなく理論を産み出した信条や社会背...
古今東西の経済思想家36人の理論をコンパクトにまとめたもの。ヘシオドスや菅子、プラトンから、石田梅岩、福澤諭吉、北一輝、もちろんアダム・スミスやマルサス、リカード、ケインズにシュンペーターフリードマンなど、多彩な理論家がとりあげられ、その理論だけでなく理論を産み出した信条や社会背景まで言及しておりとても興味深い。しかもその理論を現代に当てはめてみて、正しかった部分や現在でも斟酌すべき部分等を解説してくれている。特に興味深いのはマルサスの「人口論」に関する解釈で、要は「人口が増えすぎると飢饉、疫病、戦争等が起こり、人口は激減する(あるいは破滅する)」というものであるが、現在ではむしろ貧困国で人口爆発が起こっておりマルサスの理論が当てはまらない。一方、日本のように豊かで清潔で平和な国で人口が減っている。このままで行けば「日本人」は消滅する訳で個体を増やせない生き物は敗者であると考えると、日本が豊かなのかどうか判断できない。 この本の面白いところは、それぞれの理論をつまみ食いすると、本格的にその理論家の本を読みたくなるところ。やはり経済学は面白い。
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