巨鯨の海 の商品レビュー
タイムリーな内容で、今のところ今年のベスト。某映画で有名になった太地町の江戸から明治にかけての鯨とともに生活する人々の姿を鮮烈に描いている。この内容からもわかるように、捕鯨をすることは町民の生命にかかわることであり、人々は命がけで鯨と対峙する。そして、鯨を「夷様」といってたたえる...
タイムリーな内容で、今のところ今年のベスト。某映画で有名になった太地町の江戸から明治にかけての鯨とともに生活する人々の姿を鮮烈に描いている。この内容からもわかるように、捕鯨をすることは町民の生命にかかわることであり、人々は命がけで鯨と対峙する。そして、鯨を「夷様」といってたたえる。この行為を「野蛮」とののしることこそ野蛮な行為そのものであり、アザラシを食するエスキモーとなんの違いがあろうか。そんな捕鯨が海外から全否定されるのが悔しくてならない。あ、短編集でした。
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ただ文字を追うだけで、 こんなに歯をくいしばったり、 全身に力が入ったりするとは 思ってもみませんでした。 江戸から明治にかけての太地鯨組の物語。 小山とも思える大きな鯨に対峙するのは 一艘に十数人が乗る小さな船の船団。 総勢200~300名で行う捕鯨は 結束なくしては命にか...
ただ文字を追うだけで、 こんなに歯をくいしばったり、 全身に力が入ったりするとは 思ってもみませんでした。 江戸から明治にかけての太地鯨組の物語。 小山とも思える大きな鯨に対峙するのは 一艘に十数人が乗る小さな船の船団。 総勢200~300名で行う捕鯨は 結束なくしては命にかかわる。 そこはまさに命と命がぶつかり合う死闘。 その上自然も読み間違えれば敵となる。 でも物語はそれだけではない。 女子供や年寄まで捕鯨の何かに携わっている地であり、 そこの生まれの人々だけでは手が足りず、 他所からの出稼者も受けて入れていく地でもある。 生活を保証するかわりに、 鉄壁の『掟』を守らねばならない。 大勢を束ねるときに必要な様々な掟に縛られた生活に 欲を出すもの、違和感を持つもの、普通にできないものたちは 太地にはいられなくなっていく。 覚悟がないと、生きていけない地。 その覚悟が色々な角度から突きつけられる6編で 最後まで気が抜けませんでした。 伊東潤さん、初めて読みました。 クジラ好きとしては…最期の絶叫など耳を塞ぎたくなるし 血生臭さまで伝わってくるし 体に力が入ってしまうほどの緊迫した文章に たじろぎましたが… ズシンと胸に響きました。 加工した肉を何の迷いもなく食べている時代に生まれつき 「いただきます」の意味が薄れてたなぁと。 何かの命で日々紡がれている私の命。 しっかり生きなきゃなぁと思い直す一冊です。
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噂どおり面白かったです。 太地の古式捕鯨を巡り、明治11年の大背美流れへと時代が下っていく構成となっています。 捕鯨のように、毎回命がけの仕事に関わる人たちの身辺は潔癖ですが、そこまで割り切れない人たちもいるからこそ、組織にドラマが生まれるのだと思いました。 精神的にも肉体的にも...
噂どおり面白かったです。 太地の古式捕鯨を巡り、明治11年の大背美流れへと時代が下っていく構成となっています。 捕鯨のように、毎回命がけの仕事に関わる人たちの身辺は潔癖ですが、そこまで割り切れない人たちもいるからこそ、組織にドラマが生まれるのだと思いました。 精神的にも肉体的にも強い人とそうではない人の共存には、圧倒的な序列が必要なのだとも感じました。
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江戸時代から続いていた古式捕鯨に関する小説。最後の遭難に関する話は一部史実を含んでいるのかもしれない。昔の人が鯨を重要な資源として敬意を持って接し大切にしていたことが伺える。捕鯨の様子を記した箇所が何度となく出てくるが、漁ではなく、人と鯨が真剣に戦っている当時の緊張感が出ている。
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山本一力の「ジョン万」シリーズと同じく捕鯨に携わる人達の物語ですが、こちらの舞台は和歌山県の太地。江戸時代中期から明治初期にかけて鯨漁の栄枯盛衰が描かれます。直木賞の候補となったことがうなずける、エンターテインメント性の高い一冊でした。
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太地町の鯨取りたちを題材にした時代小説。こんなテーマでも時代小説として成り立つのだな、と驚いた。6篇の短編集で、時代設定は江戸中期から明治の最初まで。太地湾へと泳いでくるセミクジラやマッコウクジラと立ち向かう漁の様子は合戦の描写のようで、まさに生存をかけたような戦いだった。200...
太地町の鯨取りたちを題材にした時代小説。こんなテーマでも時代小説として成り立つのだな、と驚いた。6篇の短編集で、時代設定は江戸中期から明治の最初まで。太地湾へと泳いでくるセミクジラやマッコウクジラと立ち向かう漁の様子は合戦の描写のようで、まさに生存をかけたような戦いだった。200人近い船団を率いる沖合や、それぞれの船を統括する刃刺、そして櫓をこぐ水主とそれぞれの役割と上下関係がはっきりとし、また、鯨漁で潤う大地という閉鎖的な環境がいろいろなドラマを生み出している。着眼の勝利みたいな小説だった。
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2014.2.1 銛と網だけで命を張って鯨を獲る集団、風習が日本にあったという歴史がすごい。 太地町へ行きたくなった。 題材として面白く迫力あり 「旅刃刺しの仁吉」「弥惣平の鐘」が良かった
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和歌山の太地の鯨漁を営む人たちの話。 江戸から明治になるまでの村という共同体、 所謂日本の昔の村の営みが書かれてある。 割と面白かった。特に『恨み鯨』『物言わぬ海』 『決別の時』『弥惣平の鐘』はそれぞれに引き込まれるような お話でした。
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実際には見たことのない海を泳ぐ鯨の姿を、鯨漁の流れを、紀伊半島・太地の人々を、間近で見てきたような読後感。実にエキサイティング。血湧き肉躍りました。役割に分かれ、団結して鯨と対峙する描写は合戦の如し。海に生きる人と鯨の違いとは。鯨漁に携わるしかない村での一生とは。様々な思いを胸に...
実際には見たことのない海を泳ぐ鯨の姿を、鯨漁の流れを、紀伊半島・太地の人々を、間近で見てきたような読後感。実にエキサイティング。血湧き肉躍りました。役割に分かれ、団結して鯨と対峙する描写は合戦の如し。海に生きる人と鯨の違いとは。鯨漁に携わるしかない村での一生とは。様々な思いを胸に、今日も漁る。海を眺め、潮の匂いを嗅ぎたくなりました。
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図書館。 読み応えのある作品だった。 ダイナミックで、そして人間の嫌な部分も 描かれていて、一編読み終わるごとに ぷはー、といいたくなる感じ。 他の作品も読んでみたい。 吉村昭氏の「大黒屋光太夫」を再読したくなった。
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