四月七日の桜 の商品レビュー
無謀とも言える大和の最後の出撃に当り、第二艦隊司令官伊藤整一は二つの決断を下していた。一つは出航にあたり少尉候補生73名に退艦命令を下したこと、もう一つは連合艦隊司令部から作戦中止判断の一任を得ていたことである。 伊藤が志願して第二艦隊司令部という現場に出たのはレイテ沖海戦の後...
無謀とも言える大和の最後の出撃に当り、第二艦隊司令官伊藤整一は二つの決断を下していた。一つは出航にあたり少尉候補生73名に退艦命令を下したこと、もう一つは連合艦隊司令部から作戦中止判断の一任を得ていたことである。 伊藤が志願して第二艦隊司令部という現場に出たのはレイテ沖海戦の後、日本海軍が水上戦力を失った後だから、開戦以来軍令部の要職にあり戦争指導に当たってきた身として、忸怩たる思いがあったのは事実だろう。そこに下された特攻作戦の命令。普通の作戦を立案できる状況ではないことは熟知していたはずだから、それなりに覚悟はあり、捨てざるを得ないものと守るべきものの区別もついていたのかもしれない。 まだ坊津沖に達したばかりというのに米軍の大空襲を浴びて大和は戦闘不能に陥り、天号作戦の続行は不可能になる。 そして大和も軽巡洋艦矢矧も沈没し、残された駆逐艦五隻は生存者を収容の上、作戦続行を断念して佐世保へ向かう。伊藤が取り付けておいた作戦中止一任が活きたのだ、とするのが筆者の立場。しかし16時39分に作戦中止命令が発せられた時点で伊藤は既に艦と共に海中に沈み、他の司令部要員もまだ海上にあったことを考えると、作戦中止命令は連合艦隊司令部によるものと考えるのが普通かもしれない。 大和の沈没から時間が経てば経つほど、後世の人々は大和の憤死を美化しようとする。
Posted by
この本は、大和にまつわる話だとか戦術戦略的な話ではなく、伊藤整一の半生、特に家族愛にまつわるエピソードに重きをおいた本だと思います。(挿入される戦史的な話は、あくまで彼の人柄を描くための切り口程度のものかと) ご息女たちへのインタビューを通して描かれる夫妻の間の結びつきはとても感...
この本は、大和にまつわる話だとか戦術戦略的な話ではなく、伊藤整一の半生、特に家族愛にまつわるエピソードに重きをおいた本だと思います。(挿入される戦史的な話は、あくまで彼の人柄を描くための切り口程度のものかと) ご息女たちへのインタビューを通して描かれる夫妻の間の結びつきはとても感動的で、特に遺書を読みつつなきくずれるちとせ夫人の言葉には涙を禁じえませんでした。 やや著作者の主観が強めかもしれませんが、かなり細かいところまで書かれているのではないでしょうか。 WW2関連に興味を持ち始めたばかりの人間の書評ですのでご容赦を。
Posted by
連合艦隊司令部からの戦艦大和の沖縄特攻命令により、最後の戦艦部隊総員六千有余のうち多くの兵が犬死同然に死んでいったのである。米軍による第八波におよぶ攻撃を受け甚大な損害を蒙ったことで、第二艦隊司令長官伊藤整一は特攻作戦中止を決断した。その決断が約千七百名余の命を救うことができたの...
連合艦隊司令部からの戦艦大和の沖縄特攻命令により、最後の戦艦部隊総員六千有余のうち多くの兵が犬死同然に死んでいったのである。米軍による第八波におよぶ攻撃を受け甚大な損害を蒙ったことで、第二艦隊司令長官伊藤整一は特攻作戦中止を決断した。その決断が約千七百名余の命を救うことができたのである。 作戦遂行が不可能となったときの作戦中止の裁量を伊藤自身が行えるように、草鹿参謀長から言質を取っていたのである。先を見据えた行動により、かけがえのない命がわずかながらも救われたのである。
Posted by
- 1