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愛の夢とか の商品レビュー

3.8

97件のお客様レビュー

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2013/04/19

ムラカミハルキ・ゴレンジャー小説によりリストの「巡礼の年」が売れているようですが、こっちもリストです。

Posted byブクログ

2013/04/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

私はこれまで、女性作家の小説というものをあまり好んで読んでこなかった。というのも、なんだか恋愛のゴタゴタを描くものが多くて、女流作家の描くものはなんとなく自分には理解できないものだという先入観が支配的だったというのが大きな理由の1つだった気がする。  今年の春に、国際文芸フェスティバルというのに参加する機会があり、そのシンポジウムで川上未映子の話を聞いたのをきっかけに、彼女の考え方に興味を持ち、ヘヴンを読んで衝撃を受けた。まず、彼女の文章が持つ美しさ、繊細さに。そして、何よりパーソナルな問題に留まらない大きなテーマ性に。  ほどなく、この新作短編小説が発売され、また新しい衝撃を受けた。    7つのストーリーに貫通しているテーマは、パーソナルな小さな世界における別れである。最近に執筆された幾つかの話には、それぞれの世界の中でエピソード的に震災の出来事が挿入されるが、決して震災を経験しての劇的な世界の変化としては描かれていない。  ささいな日常を、繊細な感覚で生きている人にとっては、別れの後には「記憶」という厄介なものと対峙しなければならなくなる。アイスクリーム、庭の植物、お気に入りの作家、三陸のほたるいかの船、心血注いで手入れした一軒家・・・それは、時間を消費し、忘れる能力を無意識に会得した人間にとっては想像もできない世界なのかもしれない。作者は、そうした記憶を形作っているモノや景色に細やかで生き生きした感情を与えていて、昔国語の授業で習った「擬人法」という手法の存在する意味を体感させてくれる。    「十三月怪談」では死別をテーマに、生の夫と、幽霊(?)となった妻のパラレルワールドが描かれるが、これはまさに「記憶」の世界である。平野啓一郎的には「死者との分人」。死後を生きる遺された者にとっての「死者との分人」が、不可避的に小さくなっていく日常を見守る妻の言葉が、徐々に感情のみが短いひらがなのみで紡がれていくのは、これぞ女流作家の美しさだ。  「お花畑自身」では、まさに自分の庭の土と生きながらにして同化していき、「十三月怪談」では、愛した人と同化していく。死や別れが描かれているのに、美しい文体と繊細で愛情あふれる描写が、「開かれた終わり」を強く読者に印象を与える。そんな、「薄れ行く記憶の根っこにあるもの」は、言語化しがたいものであればこそ、小説のテーマとなっているのであろう。  一緒に暮らしていれば、お互いの所作や匂いが似てくる。そんな日常をおかしみながら大事に記憶に焼き付けていく。それが、「新たな震災前」を生きる私たちなのかもしれない。

Posted byブクログ

2013/04/18

ほんとうに感覚的な文章をかくひとだ、と、読むたびいつも思わされる。 例えば聞こえる音の全てが音階を持って感じられる「絶対音感」というものがあるけれど、 見えるもの、感じられるものの全てがことばとして感覚される「絶対語感」とでもいうべき能力を、このひとは持っているんじゃないだろうか...

ほんとうに感覚的な文章をかくひとだ、と、読むたびいつも思わされる。 例えば聞こえる音の全てが音階を持って感じられる「絶対音感」というものがあるけれど、 見えるもの、感じられるものの全てがことばとして感覚される「絶対語感」とでもいうべき能力を、このひとは持っているんじゃないだろうか。 例えば彫刻家が大理石から神様の姿を彫るのを見て、彫っているのではなくて埋まっている像を石の中から取り出しているだけなんだ、と感じたり、 もしくは画家が真っ白い紙の上にエンピツでデッサンするのを見て、もともと紙の上に描いてある絵を擦り出しの要領で浮かび上がらせているだけなんだ、と感じたりすることがあるけれど、 このひとが小説を書く行為はどのように例えられるのだろう? 「こういうときに比喩みたいなものがぱっと浮かぶといいのだけれど、わたしにはよくわからない。」 「うまく言葉にできないということは、誰にも共有されないということでもあるのだから。つまりそのよさは今のところ、私だけのものということだ。」 作中のこのフレーズは、そのまま著者本人への賛辞として贈られるべき言葉だと思う。

Posted byブクログ

2013/04/18

すんごく好きでした。長編小説も好きだけど、この短編集が一番好きになりました。お花畑自身はとても切実、十三月怪談はぐっと深いところに入り込まれて未だに出られない。描かれるディテールに、クラシックや、花の名前、センスがとてもゆたかになっている感じが成熟を感じます。何度も読み直すと思い...

すんごく好きでした。長編小説も好きだけど、この短編集が一番好きになりました。お花畑自身はとても切実、十三月怪談はぐっと深いところに入り込まれて未だに出られない。描かれるディテールに、クラシックや、花の名前、センスがとてもゆたかになっている感じが成熟を感じます。何度も読み直すと思います。

Posted byブクログ

2013/04/17

テリーとビアンカの話が面白かった。十三月怪談で描かれる死後の世界観は独特の切なさと温かさを併せ持つ、良い作品だった。

Posted byブクログ

2013/04/16

好きな作家だし全体的に良かったけど、とても短いページ数の『アイスクリーム熱』や『日曜日はどこへ』が良くて、改めて凄い作家だと。

Posted byブクログ

2013/03/31

今回これを読んで初めて川上未映子を「わかった」ような気がした。 今まで私の中で川上未映子は、なんというか、敵意とか愛情とか、自信とか羞恥とか、嫌悪とか憐憫とか、もっと言えば喜怒哀楽様々なの感情を針のように全身にまとい、ちょっとやそっとで共感しないでよ、と言っているような、そんな存...

今回これを読んで初めて川上未映子を「わかった」ような気がした。 今まで私の中で川上未映子は、なんというか、敵意とか愛情とか、自信とか羞恥とか、嫌悪とか憐憫とか、もっと言えば喜怒哀楽様々なの感情を針のように全身にまとい、ちょっとやそっとで共感しないでよ、と言っているような、そんな存在。 それが、この短編集を読んで、初めて自分と同じ地面に立ち同じ呼吸をしている一人の人だと、そこにいて私たちに向かって叫んでいる一人の人だと、「わかった」気がする。 生半可な共感を拒絶し続ける7つの短編を読むと、わからないけどわかる、そういう不思議な体験ができる

Posted byブクログ