ミューズ/コーリング の商品レビュー
初めて読む赤坂真理さんの、初期短編小説集。最も古いもので1991年、新しい「ミューズ」が1999年。 これはなかなか手強い、一筋縄ではいかない作品集で、どう評価すべきか迷う。もう少しこの作家の他の本も読んで、コンテクストを理解しないと自信を持って批評することは難しいと思った。...
初めて読む赤坂真理さんの、初期短編小説集。最も古いもので1991年、新しい「ミューズ」が1999年。 これはなかなか手強い、一筋縄ではいかない作品集で、どう評価すべきか迷う。もう少しこの作家の他の本も読んで、コンテクストを理解しないと自信を持って批評することは難しいと思った。「ミューズ」を読み始めてただちに気づくように、文体はやたらと先鋭的であり、かなり凝っている。故意に乱された意味内容の連なりを辿ることに多少なりとも困難を感じ、高度な文学的問題が提示されているのだろうが、一貫的なイメージを形成することが出来なかった。 女子高校生の身体的な感覚と意識とが鋭く描出されている。しかし物語としてはエロ小説に近いような場面を多く含むこの作品世界をどのように把握すべきか、解答が得られない感じだった。特に、主人公のずいぶんあやしげな宗教に凝っている狂気じみた母親が、どうしてこんな設定をされているのか、最後まで疑問に思った。 他の作品群も鋭い身体的感覚と自己意識に満ちていて、その点は非常に魅力的であり、奇妙な不安定さをもつ文体とあいまって、謎めいた不可解さを呈している。巻末に精神科医の齊藤環さんが解説を書いており、このような読解が必要とされるのかもしれないと感ずる。 同様に文体の先鋭さをもつ「乳と卵」の川上未映子さんの文章は「どうしてこういう風に書いたか、そのニュアンスが全部分かる」という納得をもたらしてくれるのとは全然異なっており、人間的に異質な何かがここにある。この「異質さ」はこれもまた貴重なものであって、文体に定着された不思議さの刻印ゆえに、私はこの短編集を凡百なものではないと考える。純文学である。 この赤坂真理さんは2012年の『東京プリズン』がヒットして有名であるようなので、それも含めて、もう少し読んでみたいと思う。
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極度に身体的で感覚的。そしてなんというか箍が外れたとはちがうんだけど、どことなくキマっている人が見てそうなものを端正に機械的に描写しているような。とにかく独特で、解説にもあったけれどこういう機械的な身体描写はこの人の独壇場なんだろう。あえて誰に似てるかといえばサルトルが思い浮かぶ...
極度に身体的で感覚的。そしてなんというか箍が外れたとはちがうんだけど、どことなくキマっている人が見てそうなものを端正に機械的に描写しているような。とにかく独特で、解説にもあったけれどこういう機械的な身体描写はこの人の独壇場なんだろう。あえて誰に似てるかといえばサルトルが思い浮かぶ。 「ミューズ」は通っている矯正歯科の先生に主人公である高校生の美緒が先生の手から漂うにおいがきっかけで惹かれていき、強引に関係を持とうとする話。母親が宗教狂いだったりテレクラでサクラをやっていたりと書かれた当時タイムリーだった要素も織り込まれているけれど、あまりにも感覚的な描写が圧倒的すぎてそういうのがかすむぐらい。 「コーリング」はすごく予言的。今ではリストカットという行為は結構認知度も高く、別に死にたいわけじゃ、というのはこういう行為に少し詳しかったり興味のある人なら知っているけれど、当時その感じをずばっと言い当てている、それもかなり手さぐり感というか「素手」の感じが伝わってきて興奮した。 でも私リスカの描写とか写メってすごく苦手だったりする。 ちょっとうぇってなりながら読みました。
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高校生で女優を目指してモデルをやっている主人公が憧れだった歯医者の先生と両想いになって診察が終わった後の診療室でエッチなことをしたり公園の人目につかないところでイチャイチャしたりデレデレしたりツンツンしたりして、初めはちょっと天然だと思ってた先生のSなところに気付いてキュンキュン...
高校生で女優を目指してモデルをやっている主人公が憧れだった歯医者の先生と両想いになって診察が終わった後の診療室でエッチなことをしたり公園の人目につかないところでイチャイチャしたりデレデレしたりツンツンしたりして、初めはちょっと天然だと思ってた先生のSなところに気付いてキュンキュンして私もMに目覚めちゃうというケータイ小説みたいな話。 湿った口の中をかき回す指の感じが妙にエロくて、そこにするりと挿し込まれる無機的な言葉の違和感が変に気持ち良い感じ。官能的なケータイ小説。 今の私にはあまりはまらなかったのだけれど、気になる作家さんなので他のも読んでみようかと思います。
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