女中譚 の商品レビュー
中島さんの女中シリーズはちょっと怖ろしい狂気じみた内容が入ってるのが好きです。 なんだか覗き見してる感覚。 嫌悪感ギリギリのような怖ろしいけど、見たい感覚 市原悦子の家政婦は見たがロングヒットだった理由が少しわかった気がするような本。
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90を過ぎた老女が語る戦前の女中時代の3つの逸話。架空の設定ではあるのだろうけど、全くもって綺麗事でなく、そもそもの老女がなかなかに浅ましく強かな女性。肉欲やズルさなどウェットな世界が明け透けに語られている。今の時代の道徳とかコンプライアンスとか全く通じない世界だが逞しい生命力を...
90を過ぎた老女が語る戦前の女中時代の3つの逸話。架空の設定ではあるのだろうけど、全くもって綺麗事でなく、そもそもの老女がなかなかに浅ましく強かな女性。肉欲やズルさなどウェットな世界が明け透けに語られている。今の時代の道徳とかコンプライアンスとか全く通じない世界だが逞しい生命力を感じる。ユニークな世界観。
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惨めな女を見ると虫酸が走るんだよ。 平気で惨めなまんまでいて、そのことで同情が買えると思う女が嫌いなんだよ。 (P.33) あの日ばかりがいまになっても、あたしがあの男を好きだったと思える最後の瞬間だ。 (P.63)
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すごく良かったです。面白かったし、レトロ感もすごく良いです。先に読んだ『樽とタタン』の語り手は女子小学生でしたが、『女中譚』の語り手は老婆。戦中を生きた老婆の若かりし日の話。近しい記憶に老婆が語り手という小説はありません。珍しいような気がします。今の私には小学生の語りより老婆の方...
すごく良かったです。面白かったし、レトロ感もすごく良いです。先に読んだ『樽とタタン』の語り手は女子小学生でしたが、『女中譚』の語り手は老婆。戦中を生きた老婆の若かりし日の話。近しい記憶に老婆が語り手という小説はありません。珍しいような気がします。今の私には小学生の語りより老婆の方がなじみます。老婆であるすみさんの性格と生き方がすごくイイです。良い人物というのではないのがイイです。
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え?!これアキハバラの云々を入れる意味なに?永井荷風のは面白かったけどアキバのくだりがいらなくて。最初の二編は戦争の不穏さが見え隠れする…という風に描きたいのだろうが、どうも肉薄した感じがない(直前に米原万理さんの凄まじい小説『オリガモリゾブナの反語法』を読んでたせいもあるけど…...
え?!これアキハバラの云々を入れる意味なに?永井荷風のは面白かったけどアキバのくだりがいらなくて。最初の二編は戦争の不穏さが見え隠れする…という風に描きたいのだろうが、どうも肉薄した感じがない(直前に米原万理さんの凄まじい小説『オリガモリゾブナの反語法』を読んでたせいもあるけど…)。昭和初期でそんな言葉使うか?みたいなところもあったりしてどうもキャラクターに入り込めなかった。ちいさいおうちは面白いのかな…読んでみよか…
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昭和初期を舞台に、ひとりの女中が見聞きし、経験した爛熟してすえたにおいを発した男女(でないのも1つあり)関係を淡々と描く。 解説を読んで知ったのだけど、3人の作家さんの作品へのトリビュートらしい。 時代背景のせいもあり、人の暗部から立ち上るどろっとした気持ち悪さが付きまとう。...
昭和初期を舞台に、ひとりの女中が見聞きし、経験した爛熟してすえたにおいを発した男女(でないのも1つあり)関係を淡々と描く。 解説を読んで知ったのだけど、3人の作家さんの作品へのトリビュートらしい。 時代背景のせいもあり、人の暗部から立ち上るどろっとした気持ち悪さが付きまとう。「小さいおうち」が表なら、こちらは裏の作品。
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三編の物語は、同じく三つの「女中小説」を下敷きにしているそうだ(解説より)。 現代の秋葉原から始まる物語は、アキバのオスミババアの一人語り。 物語のそこここに挟み込まれる事件は不穏なものばかり。 そしてその事件は、昭和と平成の違いはあれど、さして変わらない背景を持つ。 事件をよ...
三編の物語は、同じく三つの「女中小説」を下敷きにしているそうだ(解説より)。 現代の秋葉原から始まる物語は、アキバのオスミババアの一人語り。 物語のそこここに挟み込まれる事件は不穏なものばかり。 そしてその事件は、昭和と平成の違いはあれど、さして変わらない背景を持つ。 事件をよそに、オスミさんは語り続ける。 「ヒモの手紙」の信作は、どうしようもない男だ。 しかしオスミさんが言うように、相手の女も愚鈍で、まあ虐げたくなる気持ちにもなろうと言うもの。 イラつかせる女、そう、端的に言ってしまえばそれだ。 けれども、するりと人の懐に入り込んで、離れようにもどうにも離れがたい男もやはりいるわけで、たまたま自分がそいつに魅入られていないから幸運なだけかもしれない。 もし魅入られてしまえば、女をバカだなんだと言っている私だって、同じ穴の狢に違いない。 「すみの話」ではドイツ人と日本人の間に生まれたお嬢さんと、前任の女中の物語。 故郷が変わっていってしまう事を憂えるイルマ夫人。 一方それと対をなすように、ナチスを礼賛するようになっていくマリコお嬢さん。 彼女は自分の中にあるサディズムを持て余している。 ナチスに心惹かれ、素晴らしいと称賛するけれど、それは自分は安全な場所にいると思っているからこそ。 自分は本当は「合いの子」、つまり劣等人種とみなされる、ナチスから排除される側だと気付いていない。 愚かしさと、悲しみが交差する。 どこかそれは現代社会と似たような状況だ。 オスミさんは語り終えた後、アキバに消えた。 波は名もなき老婆をただ飲み込む。
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出だし、90歳のばあさんが秋葉のメイド喫茶でクダを巻くシーンで期待したのですが。。。 その90歳のばあさんが『小さいおうち』の主人公の一人だった女中のおすみさんの後の姿で、その回顧譚として3つの短編で出来ています。もっとも『小さいおうち』と重なるシーンはほとんど無く、それぞれ林芙...
出だし、90歳のばあさんが秋葉のメイド喫茶でクダを巻くシーンで期待したのですが。。。 その90歳のばあさんが『小さいおうち』の主人公の一人だった女中のおすみさんの後の姿で、その回顧譚として3つの短編で出来ています。もっとも『小さいおうち』と重なるシーンはほとんど無く、それぞれ林芙美子の『女中の手紙』、吉行信子の『たまの話』、永井荷風の『女中のはなし』をベースにするという中島さん得意の手法です。 どうも後味が悪いのです。 悪意とか嫉妬とか挫折とか、そんなものが強く表に出てきて、救いが無く。いつもの中島さんの作品にあるユーモアが感じ難く。。。。
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なんとなくタイトルに惹かれて読んでみるも、いやはや。これは。すごくいい!おすみさん90歳超の元リアル女中。昔懐かし雰囲気を味わいにメイド喫茶へ足繁く通う。そこで語られるすみさんの昔話。男と一緒に女を騙してみたり、ドSのお嬢に仕え百合の世界にちょっぴり足を踏み入れてみたり、奉公先の...
なんとなくタイトルに惹かれて読んでみるも、いやはや。これは。すごくいい!おすみさん90歳超の元リアル女中。昔懐かし雰囲気を味わいにメイド喫茶へ足繁く通う。そこで語られるすみさんの昔話。男と一緒に女を騙してみたり、ドSのお嬢に仕え百合の世界にちょっぴり足を踏み入れてみたり、奉公先の陰気な館の陰気な主人、ボロクソ言うも実は永井荷風、しかも気づかぬ内に小説に登場していたりと疾風の如く人生を駆け抜けたすみさん、たまらなくかっこいい。語り尽くしたのか最期、路上にうずくまり目を瞑るすみさん。私は惜しみない拍手を送る。
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昭和初期の、まだ華やかな雰囲気の残っている頃の、都市の影が存分に描かれている。 寅さんや両さんの出てくるような下町じゃなく、明治の貧民窟につながっているような町。 すみという女中も、陰影の深い人物。 秋葉原を漂う現在の姿も味わいがあるが、やはり若い時の、ふと心の中に兆す魔のような...
昭和初期の、まだ華やかな雰囲気の残っている頃の、都市の影が存分に描かれている。 寅さんや両さんの出てくるような下町じゃなく、明治の貧民窟につながっているような町。 すみという女中も、陰影の深い人物。 秋葉原を漂う現在の姿も味わいがあるが、やはり若い時の、ふと心の中に兆す魔のようなものにぞくりとさせられる。 エログロといわれた時代の雰囲気、こんな風だったんだろうな、と思わされた。
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