仕事なんかするより上司に気を使えよ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
著者はいくつか本を書いている人のようですが、意図してなのかどうか、基本原則に反した書き方をしているようです。本書のうちのかなりの部分が、著者以外の意見や文章です。これらの意見を自分の意見とない交ぜにして書いてあるため、油断して読み進むと一体本書が主張したいところはなんだったのか分からなくなってしまいます。 タイトルと書き出しは「会社員は会社や上司をクライアントにした商売だから、かれらが満足することが最終目的」「上司が評価しない仕事は独りよがり」という印象を与えるのですが、出てくる事例のほとんどは上司と戦ったり会社をやめた人の話ばかり。結局何が言いたいの、となってしまうのです。 著者の主張がどれだけ本気であるかは不明ですが、結局は「ライターの仕事は、出版社の満足いく売り上げを上げること」「部数が出ない本は意味がない」といったところなのでしょうか。多くの関係者をヨイショ、宣伝しながら読者を挑発することに腐心しているように伺えました。 本書の主張である「会社員は会社や上司をクライアントにした商売」というのは一面では正しいのですが、さてそれは経営者が望む会社員なのでしょうかねぇ。会社の慣行に従順で、下手に正義感を振りかざさないいわゆるプロの会社員だけになったとき、会社は危うくなるのではないでしょうか。公務員の皆さんやバス運転手が、学校の先生達が、上司を顧客としたプロになったら、国民や乗客や学生達は顧客ではなくなってしまうのだろうと懸念します。そして、書籍や映画やその他のメディアもまた、その方向に向かうことになるのかと、思われます。 個人の利益追求にこだわることが、結果として全体の最適解とは違ったところにたどり着くことにあえて気づかないことで成り立つ論理なのかと、残念な気持ちになりました。
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