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国際秩序 の商品レビュー

4.6

33件のお客様レビュー

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2015/04/22

 国際政治学と政治哲学を絡めながら、近世から現代に至るまでの世界史と国家論の変遷を追っていく。  カントに心酔……とまではいかなくても多大なシンパシーを感じている私は、「交渉手段としての背景にある武力・他国を手段としてのみ扱う外交」を肯定する筆者の立場に対して素直に頷くことは出来...

 国際政治学と政治哲学を絡めながら、近世から現代に至るまでの世界史と国家論の変遷を追っていく。  カントに心酔……とまではいかなくても多大なシンパシーを感じている私は、「交渉手段としての背景にある武力・他国を手段としてのみ扱う外交」を肯定する筆者の立場に対して素直に頷くことは出来ない。だが、カントのように「平和の可能性」をひたすら説くだけでも、暴力の連鎖が止まらないことも事実だ。  細谷博士のように柔軟に、これらの問題を見据えていきたいと思える一冊だと思う。

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2014/08/10

18世紀から現代に至る「国際秩序」の歴史を「均衡(バランス)」の体系、「協調(コンサート)」の体系、「共同体(コミュニティ)」の体系という3つの秩序原理の組み合わせから位置付ける試み。 ヨーロッパ世界においてはじめて「勢力均衡」が成立したのは、18世紀のスペイン王位継承戦争後の...

18世紀から現代に至る「国際秩序」の歴史を「均衡(バランス)」の体系、「協調(コンサート)」の体系、「共同体(コミュニティ)」の体系という3つの秩序原理の組み合わせから位置付ける試み。 ヨーロッパ世界においてはじめて「勢力均衡」が成立したのは、18世紀のスペイン王位継承戦争後のことであるが、こうした「均衡」の体系は、たとえば19世紀後半のヨーロッパ国際秩序である「ビスマルク体制」において典型的に再現される。 またその「ビスマルク体制」は、ナポレオン戦争後に成立したウィーン体制、すなわちヨーロッパにおける共通の価値(これは啓蒙の世紀である18世紀にスミスやヒュームらによって唱えられた「商業的社交性」の精神等によって支えられている)を前提に実現された「均衡による協調」の時代が徐々に崩壊(協調が失われ、剥き出しのナショナリズムが跋扈)していく過程で登場した。 第一次世界大戦は、天才・ビスマルクによるアートとしての政治が失われ、均衡が崩れたことによって出現した。大戦後には「共同体の体系」が、しかし「均衡」「協調」という重要な要素を欠きながら登場する。とくに1931年の満州事変はヨーロッパ的な国際秩序原理とは異質な大国の行動が国際秩序を崩壊させたトリガーとしての画期性をもつと分析される。 1931年の満州事変から10年後の1941年、英米による協調の精神を盛り込んだ「大西洋憲章」は第2次大戦後の冷戦期の「均衡の体系」の基礎となった。その後、ブッシュ(父)による「新世界秩序」構想、クリントンの「民主主義の共同体」構想を経ていく。 現在は第2次大戦後の「大西洋」中心の時代から太平洋を中心とした時代への転換点であり、日米中の均衡と協調が、今後の「国際秩序」の鍵を握る。 やや難解な部分もなくはないが、国際関係を2国間関係という点と点の関係の集合から理解するのではなく、面として一貫してとらえようとする著者の試みはひとまずは成功しているのではなかろうか。剥き出しの「均衡」と共通の価値観を背後にもつ「協調」が相即不離の関係で成立することが、今後の国際秩序を構想する上で非常に重要だということが、歴史的な視点から説得的に論じられている。

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2014/07/01

[世の軸足の探求]18世紀から21世紀にわたる国際社会とそのパワーシフトを概観しつつ、その時代の国家間関係を規律していた国際秩序にスポットライトを当てていく作品。「均衡」、「協調」そして「共同体」という体系を基に、時代的にも空間的にもマクロ的な視点から解説を加えていきます。著者は...

[世の軸足の探求]18世紀から21世紀にわたる国際社会とそのパワーシフトを概観しつつ、その時代の国家間関係を規律していた国際秩序にスポットライトを当てていく作品。「均衡」、「協調」そして「共同体」という体系を基に、時代的にも空間的にもマクロ的な視点から解説を加えていきます。著者は、ヨーロッパを中心とした国際政治を専門とする細谷雄一。 力や理性に対する考え方が大きく異なる3つの体系を用いながら、とことん丁寧に国際政治の沿革をなぞるバランスのとれた一冊でした。二国間関係が主になりがちな国家間の関係を、その射程を広げて地域、さらには世界規模から俯瞰していく様子はお見事。リアリストの著作の系譜にまた1つ傑作が生まれたと言っていいのではないでしょうか。 極めて客観的な視点で貫かれた記述ではありますが、下記のとおり、特に終章において述べられる細谷氏の主張は極めて明確。ある意味では「地味で面白みのない」提言のように思われるかもしれませんが、国際政治の背骨部分をしっかりと規律するものの味方を学ぶために非常に有意義な教訓が得られたと思っています。目まぐるしく外交が動く世の中にあって、改めて沈勇な姿勢が大切であることを痛感。 〜平和を永続させるための「協調の体系」や「共同体の体系」を確立するためには、「均衡の体系」を否定するのではなくむしろそれを基礎に置くことが重要となる。〜 それにしてもやっぱりメッテルニヒってスゴいな☆5つ

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2014/03/31

2014.3.31 世界史の授業で国際関係を話すのに役立つ。2世紀程度の長期的視野から概観するので、流れがはっきりする。 最終章3節からは今後のアジア、太平洋を考えるための材料が提示されている。 文章も読みやすい。

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2014/01/02

18世紀以降激動する欧州にあって、大国に踊り出、現在に至る英国のしたたかで骨太な戦略的思想と歴史が詳述されます。中国が喧伝する「戦後国際秩序」というテーゼが気になり本書を手にしました。こんな70年前の価値観で包囲網を成功させてはいけません。歴史に学び、新しい太平洋秩序を築く価値観...

18世紀以降激動する欧州にあって、大国に踊り出、現在に至る英国のしたたかで骨太な戦略的思想と歴史が詳述されます。中国が喧伝する「戦後国際秩序」というテーゼが気になり本書を手にしました。こんな70年前の価値観で包囲網を成功させてはいけません。歴史に学び、新しい太平洋秩序を築く価値観を示すこと。そして、多くの国々の共感・賛同を得ることこそ、我が国の立ち位置を獲得するバックボーンになるのでしょう。

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2013/10/28

中国が台頭する中で不安定化する国際秩序をどのように安定化するか、2国間関係でなく広い空間軸と時間軸で国際秩序を面で捉えようと訴える。スペイン王位継承戦争、ウィーン体制、ビスマルク体制、1・2次の世界大戦、冷戦、そして現代に至るまで、国際秩序がどのように変遷していったかを解説する。...

中国が台頭する中で不安定化する国際秩序をどのように安定化するか、2国間関係でなく広い空間軸と時間軸で国際秩序を面で捉えようと訴える。スペイン王位継承戦争、ウィーン体制、ビスマルク体制、1・2次の世界大戦、冷戦、そして現代に至るまで、国際秩序がどのように変遷していったかを解説する。 秩序原理にはホッブズの思想が土台にある均衡、アダムスミスやヒュームの協調、カントの共同体の三つの体系がある。 ヨーロッパ人としての紐帯と勢力均衡で「均衡による協調」を実現し、長い平和をもたらしたウィーン体制。「協調なき均衡」でビスマルク個人の資質に大きく依存した秩序をつくり、ビスマルク退任後に世界大戦が引き起こされたビスマルク体制。非ヨーロッパの台頭で国際秩序がグローバルなものになった20世紀。第一次大戦の後、「均衡なき共同体」を構築しようとして失敗し引き起こされた第二次大戦。均衡と協調の体系が結びついていた冷戦。「共同体の秩序」を実現したEU。 こうやって国際秩序を歴史的に説明してくれたことで、例えば子ブッシュ政権の戦争だとか自分にとってリアルタイムだった事件がどうゆう文脈で行われたのかとかがよくわかった。 国際秩序の構築には共通な価値観が必要であるが、今の東アジアにはそれが欠けている。国際政治の中心が太平洋に移っており、オバマ政権になってから太平洋にリバランスする米との同盟を安定強化し、台頭する中との均衡を回復し、均衡の土台の上に協調を築くことが太平洋に安定した国際秩序をもたらすために必要だ。

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2013/09/11

読後の感想としては、とにかくこれだけの濃い内容を、新書1冊にまとめた努力には敬意を払いたいと思った まず、序章で、3つの原理として「均衡の体系」「協調の体系」「共同体の体系」を説明し、2章以降で18世紀以降の主としてヨーロッパの5大国を例に挙げながら3つの原理のどれに比重を置い...

読後の感想としては、とにかくこれだけの濃い内容を、新書1冊にまとめた努力には敬意を払いたいと思った まず、序章で、3つの原理として「均衡の体系」「協調の体系」「共同体の体系」を説明し、2章以降で18世紀以降の主としてヨーロッパの5大国を例に挙げながら3つの原理のどれに比重を置いて国際政治を造ったか、その歴史を検証している。 人間は平和を望みつつ、その都度戦いを起こしてしまうが、第二次世界大戦後の不安定な中でも、局地戦はあっても大きな戦いがないことがある意味不思議に思えた。 個人的には、ビスマルクの「政治は、科学(サイエンス)というより技術(アート)である」という言葉が心に残った。日本の使節団にビスマルクは会ったそうだが、いろいろな意味で日本も国際政治に組み込まれていく様子がわかりよかった。

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2013/08/15

近代ヨーロッパが生んだ国際秩序の基本原理である「均衡」(ホッブス的な力と恐怖が支配する世界を前提とした、デヴィッド・ヒュームが言うところの「嫉妬深い競争心」に支えられた勢力均衡)、「協調」(相互に利益をもたらすような諸国の経済的つながり、アダム・スミスが言うところの「商業的社交性...

近代ヨーロッパが生んだ国際秩序の基本原理である「均衡」(ホッブス的な力と恐怖が支配する世界を前提とした、デヴィッド・ヒュームが言うところの「嫉妬深い競争心」に支えられた勢力均衡)、「協調」(相互に利益をもたらすような諸国の経済的つながり、アダム・スミスが言うところの「商業的社交性」に支えられた諸国間の調和と協調)、「共同体」(カントが想定した「共通の理性」「世界市民主義」「平和連合」による戦争のない国際秩序)の三つの体系を切り口に21世紀の国際秩序の方向性について論じた本です。これも飛行機の中で時間潰しのために読もうとして買ったものの積み残しですが、読んでかなり頭がスッキリしました。コストパフォーマンスかなり良かったです。 オバマ大統領の就任と中国の台頭によって、21世紀は「太平洋の世紀」になったが、東アジアでは中国の台頭が著しいにも関わらず、共通の価値や利益の共有がなされていないため(従ってこのままでは中国が周辺国に対して譲歩する可能性は極めて低い)、先ずは勢力均衡の回復が急務であり、それを基礎とした上で「大国間協調」や「東アジア共同体」の構築を目指すべきであると言っています。そして、東アジアに「力の真空」が生まれることで国際秩序を不安定化させないためには、アメリカの東アジア関与の継続、日米同盟の強化、日本の国力の強化が必要だとしています。その上で、東アジアにおける価値や利益を共有することで安定的な「均衡の体系」を構築し、その基礎の上に日中協力関係を発展させ、それによってこの地域の平和を確立させる必要があるというのが、この本の結論です。

Posted byブクログ

2013/08/11

国際関係について、「均衡」、「協調」、「共同体」の3つの概念を用いて歴史から関係性を論じた書。 世界の外交の歴史を題材として節目ごとに如何なる形態の国際秩序が形成されてきたかが記されており、今まで一つ一つの出来事としてしか捉えられていなかった事象を新しく再確認できる助けとなった。

Posted byブクログ

2013/08/08

均衡、協調、共同体という3つの国際秩序形成の原理の観点から、過去300年の国家間の秩序形成を整理し、論じている。新書にしておくにはもったいないぐらいのボリュームである。近視眼的に自分が所属する国、地域社会からしか世界を見ることをあまりしていないなぁ。他国の立場から同じ国際情勢を眺...

均衡、協調、共同体という3つの国際秩序形成の原理の観点から、過去300年の国家間の秩序形成を整理し、論じている。新書にしておくにはもったいないぐらいのボリュームである。近視眼的に自分が所属する国、地域社会からしか世界を見ることをあまりしていないなぁ。他国の立場から同じ国際情勢を眺めることの必要性を改めて認識させられる1冊。

Posted byブクログ