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アンデスのリトゥーマ の商品レビュー

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2020/10/13

木村さんの「翻訳に遊ぶ」を読んでいなければ、ここまでスペイン文学の入り込むことが無かったと確信する。我ながら不思議なくらい、スゥ~っとリョサに世界に歩み入れた。いつもながら木村さんの訳は読みやすく自然体。とは言うものの「自然災害など存在しない、全ては自分らを超える意思によって決ま...

木村さんの「翻訳に遊ぶ」を読んでいなければ、ここまでスペイン文学の入り込むことが無かったと確信する。我ながら不思議なくらい、スゥ~っとリョサに世界に歩み入れた。いつもながら木村さんの訳は読みやすく自然体。とは言うものの「自然災害など存在しない、全ては自分らを超える意思によって決まる」と考えるインディア。それを何とかなだめるしかないから「生贄を捧げる」文化を理解しなければならぬのが解る。リョサ作品ではレギュラーのようなリトゥーマ。一か所、何となく風貌が見える描写~目深にかぶった軍帽、高い頬骨と低い鼻、半ば閉じた小さくて黒い鋭い目―うん、解る! 行方不明になった3人,いてもいなくてもいいような輩ばかり。山津波・地震・大量虐殺が当たり前の風土。大半の作業員は服装もまともだし、洗礼も受けている・・のに何故、裸の食人種のようなことが出来るんだ・・と煩悶するリトゥーマ。同時進行のトマスの恋の状況。その底流にギリシア世界の話があるとは構成が巧みだ。名前の音で??とは思っていたけれど、インカの話にディオニューソス信仰を入れ込むとは! 「個性がない」インディオ 個人は集団に呑み込まれ、彼・彼らの行動を理解するにはそこを認識しておかないと彼らの行動を正しく理解できないだろう。 そびえたつアンデス山脈を日夜眺め続けている人間を少し見えた?

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2013/12/23

時間と場所の境界が分からなくなるクセになる文体、「アンデスの伝承の内容と現実世界との距離感のなさ」が表われている ギリシア神話のエッセンスが効果的に取り入れられている

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2013/01/17

今も昔も人身御供  人類は、共同体の維持・持続・発展のために生贄や人身御供を必要としてきたが、それはなぜだろうか。 おそらくは共同体の成員に対してあえて「平等な人為的脅威」を課すことによって、より共同体の精神的肉体的紐帯を緊密に強化しようとする政治的な深謀遠慮によるものだろう...

今も昔も人身御供  人類は、共同体の維持・持続・発展のために生贄や人身御供を必要としてきたが、それはなぜだろうか。 おそらくは共同体の成員に対してあえて「平等な人為的脅威」を課すことによって、より共同体の精神的肉体的紐帯を緊密に強化しようとする政治的な深謀遠慮によるものだろう。 「平等な人為的脅威」を天慮に置き換えるために、古代ギリシアなどでは共同体の誰を生贄にするかについて神託が下されていたが、近現代では血統や異民族や身体上の差異などに起因する共同体内部での差別が重きをなしてくるようである。 しかし時の歩みと共に共同体がゲゼルシャフトに転化しようとも、生贄による共同体維持のシステムは不滅であり、たとえば最近では芸能界を駆逐された山本太郎氏や大阪の暴力教室の自殺者などがその好例であろう。

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2012/12/15

複数の物語が会話の中に巧みに織り込まれて、その物語の場面が瞬時に入れ替わる手法が面白い。そして、アンデス山中に起こる数々の殺戮がどのような結末を迎えるのか、主人公の相棒の恋物語と並行して最後まで緊張感を保ち続けた。訳者解説が指摘しているように、アステカ族の生贄の儀式は「残酷で、血...

複数の物語が会話の中に巧みに織り込まれて、その物語の場面が瞬時に入れ替わる手法が面白い。そして、アンデス山中に起こる数々の殺戮がどのような結末を迎えるのか、主人公の相棒の恋物語と並行して最後まで緊張感を保ち続けた。訳者解説が指摘しているように、アステカ族の生贄の儀式は「残酷で、血を好み、しかも無知だった」からということではなく、太陽信仰がその根底にあったのである。かれらの考えでは、太陽の光がなくなれば農作物が育たず、種族が滅びてしまうのである。われわれ現代人も少なからず、ある種の迷信にとりつかれている。

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2013/01/30

ミステリ、伝奇、恋愛、自然、歴史、ノワール…… 様々な要素がぎゅぎゅっと詰め込まれており、 “これぞ小説界の濃厚とんこつラーメン全部乗せや!”といったところ。 アンデス美しい風景描写と、 残忍な時代の対比が緊張感を生み、 次が見たいけど見たくない、 人を惹きつける力のある内容...

ミステリ、伝奇、恋愛、自然、歴史、ノワール…… 様々な要素がぎゅぎゅっと詰め込まれており、 “これぞ小説界の濃厚とんこつラーメン全部乗せや!”といったところ。 アンデス美しい風景描写と、 残忍な時代の対比が緊張感を生み、 次が見たいけど見たくない、 人を惹きつける力のある内容となっています。 ミステリーのような構成で読みやすいので、 (ところどころのエグさを気にしなければ) 他人に薦めやすい小説でもあるのかなと。 主人公は同作者のほかの作品にも出てきているようですが、 この作品から入っても違和感ないですし、 読みにくさは全くないので、ここからの入門もありだと思います。

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