1,800円以上の注文で送料無料

パヴァーヌ の商品レビュー

4.1

14件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2013/03/07

2000年に亡くなったイギリスの作家が1968年に発表した作品で、 16世紀ヨーロッパに普及した行列舞踏の意。 英国女王エリザベス1世が愛好したために付けられたタイトルという。 史実と異なり、エリザベス1世が1588年に暗殺されたところから始まる物語で、 もし●●が××だったら―...

2000年に亡くなったイギリスの作家が1968年に発表した作品で、 16世紀ヨーロッパに普及した行列舞踏の意。 英国女王エリザベス1世が愛好したために付けられたタイトルという。 史実と異なり、エリザベス1世が1588年に暗殺されたところから始まる物語で、 もし●●が××だったら――という仮定の下に展開するオルタネイト・ワールド小説。 アルマダの海戦に勝利することもなく、スペイン無敵艦隊に侵攻され、 英国はローマ法王=カトリックの支配下に入り、故に科学は弾圧される。 従って産業革命も起きず、 テクノロジーといえば蒸気機関車のみが発達した程度の暗鬱な世界を舞台に、 そこで生きる人たちの姿が描かれる。 序盤、地味な話だと思っていたら、ちゃんと後半のドラマティックな展開への布石が打たれていた! というより、本文(エラナーのセリフ)にあるとおり、 始めから終わりまで『原因と結果』が見事につながっている(p.360)。 第一旋律(第一章)の主人公ジェシー・ストレンジが失恋し、 憂さを晴らすようにがむしゃらに働いた結果、 会社は大きく成長し、財を蓄え……そのことが、後で、 姪のマーガレットや、更にはその娘エラナーの役に立つのだった。 姪を静かに慈しむジェシーや、女城主となったエラナーを献身的に支える執事といった、 寡黙で器の大きいオジサンたちが素晴らしくカッコイイ。 というか、この執事=ジョン・ファルコナーこそが陰の主役じゃないかと思うのだけど。 第六旋律(第六章)でのエラナーとジョンの会話や大立ち回りには何度も鳥肌が立ったし、 叙景も心理描写も細かく丁寧で、猛烈に引き込まれた。 終楽章(最終章)での物語全体の〆は、ままあるパターンで、 読む人によって好き嫌いが分かれるだろうけど、もの悲しさを引き立てていて、凄くいいと思う。 それにしても、 独立した幻想短編としても読める第二旋律(第二章)は痛い描写てんこ盛りで本当に辛い(涙) しかし、これも一つの機能の終焉の予兆として、結果へと「見事につながっている」のだった。 【以下、詳細は非公開メモ欄へ】

Posted byブクログ

2013/01/10

ローマ・カソリックが世界を支配し、現代まで中世が続くもうひとつのイギリスを描いた一冊。名作といわれつづけていて、ずっと読みたかったのだが、やっと読むことができた。 機関自動車が走り、信号塔の通信網が英全土を覆う、もうひとつのイギリスにはわくわくさせられるが、同時に法が意味をもた...

ローマ・カソリックが世界を支配し、現代まで中世が続くもうひとつのイギリスを描いた一冊。名作といわれつづけていて、ずっと読みたかったのだが、やっと読むことができた。 機関自動車が走り、信号塔の通信網が英全土を覆う、もうひとつのイギリスにはわくわくさせられるが、同時に法が意味をもたない封建主義という暗黒面をも描いている点が素晴しい。 最終節の戦う王女には燃えますね! 原書のせいなのか、訳のせいなのか、ところどころ読みにくい文章があるのには気になった。

Posted byブクログ

2012/11/28

そうなんですよ、宮崎駿さんの映画みたい。機関車とか。それにサン=テグジュペリ「夜間飛行」を連想させるようでもある。

Posted byブクログ

2016/07/23

読了まで10日余り。苦戦しました。 仕事や家の事で考えなければ成らない事が多かったせいも有ります。そんな時、普通ならこんな重い本は止めて、サクサク楽しめる本に切り替えてしまうのですが、この本にはそうさせない魅力があります。 カトリックの強勢により、産業革命が部分的にしか進まなかっ...

読了まで10日余り。苦戦しました。 仕事や家の事で考えなければ成らない事が多かったせいも有ります。そんな時、普通ならこんな重い本は止めて、サクサク楽しめる本に切り替えてしまうのですが、この本にはそうさせない魅力があります。 カトリックの強勢により、産業革命が部分的にしか進まなかった20世紀の英国という「もう一つの世界」を描いたSF作品です。 各章(この本の中では「第x旋律」と記されます)で一人の主人公を題材に物語ることで、背景である「もう一つの世界」を見事に詳細に描き出し、さらに章を積み上げることにより、一つの家系を4世代に亘って描いく大河物語となっています。その見事さは、単純な「SF」では無く「SF文学」と称すべき価値があります。 如何にも中世(実際には20世紀なのですが)の英国的ないつも黒雲が低く立ち込めたような重苦しい雰囲気は苦手なのですが、久しぶりに本当に読み応えのある本を読んだ気がします。

Posted byブクログ