短編工場 の商品レビュー
「小説すばる」創刊25周年を記念して集英社文庫編集部が編んだアンソロジー、だそうです。収録された作品は2000年から2008年にかけて「小説すばる」に掲載された短編です。 同様のアンソロジーに「短編復活」(http://booklog.jp/users/hanemitsuru/...
「小説すばる」創刊25周年を記念して集英社文庫編集部が編んだアンソロジー、だそうです。収録された作品は2000年から2008年にかけて「小説すばる」に掲載された短編です。 同様のアンソロジーに「短編復活」(http://booklog.jp/users/hanemitsuru/archives/1/4087475174)がありますが、こちらに比べると、ちゃんと『本』になっているように思えます。まさかとは思いますが、集英社文庫編集部が短編集をまともに編めるようになったのは2000年に入ってからなのでしょうか…。 とは言え、「復活」のほうが「工場」より前、だとか、そもそも「短編『工場』」ってタイトルはどうなの、とか、まだなんだか釈然としない感はありますが。 特筆すべきなのは作者さんの豪華さで、12人中9人が直木賞受賞者という錚々たる顔ぶれです。そして、10年前の「短編復活」から連続掲載の宮部みゆきと浅田次郎はさすがです。 アンソロジーですが、収録された作品について、特にテーマは決まっていないようです。ですから、本としては「これまでに読んだことのない作家の中から、読んでみたい人を探すための見本誌」的な印象になります。東京駅で買って、新大阪駅で新幹線を降りるまでの車中のお供にいいかもしれません。 ただ、なんとなく「( ;∀;)イイハナシダナー」と思わせる作品が多めで、読んでいてほっとできます。特に、「ここが青山」から「日だまりの詩」までの流れは印象的です。 こういった構成のアンソロジーってあまり読む機会がなく、「短編復活」に続いて2冊目なのですが、やはり、収録されている作品は、それぞれの作品がもともと納められていたそれぞれの作者さんの本の中で読むのとは、印象が変わって面白いものだと思いました。 浅田次郎の「金鵄のもとに」なんかは、いい話にはさまれてちょっと肩身が狭そうですし、「陽だまりの詩」なんて、俺っていい話に混ぜて貰っていいの?って言ってそうです。 石田衣良とか、桜庭一樹とか、あまり読んだことがないので、これを機会に手を出すのもいいかもしれません。久しぶりに浅田次郎も読み返したいなあ…。 なお、「短編復活」同様、この本をネットで検索した時に、収録作品の一覧がなかなか見つからなくてイラッとしたので、以下に掲げておきます。 「短編工場」集英社文庫 収録作品一覧 桜木紫乃『かみさまの娘』 道夫秀介『ゆがんだ子供』 奥田英朗『ここが青山』 桜庭一樹『じごくゆきっ』 伊坂幸太郎『太陽のシール』 宮部みゆき『チヨ子』 石田衣良『ふたりの名前』 乙一『陽だまりの詩』 浅田次郎『金鵄のもとに』 荻原浩『しんちゃんの自転車』 熊谷達也『川崎船』 村山由佳『約束』
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いろんな作家さんの作品を読み比べられるこの手の短編集企画好きです! それぞれのカラーが出て面白いですね。
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「今回のことで、ぼくにはよくわかったことがある。名前ってぼくたちがやってるみたいに誰のものかあらわすだけじゃないんだ。何度も心のなかで呼んでみたり、歌うように繰り返したり、誰にも見られないように書いたりする。好きな人の名前って、それだけでしあわせの呪文なんだね。ぼくは朝世の名前が...
「今回のことで、ぼくにはよくわかったことがある。名前ってぼくたちがやってるみたいに誰のものかあらわすだけじゃないんだ。何度も心のなかで呼んでみたり、歌うように繰り返したり、誰にも見られないように書いたりする。好きな人の名前って、それだけでしあわせの呪文なんだね。ぼくは朝世の名前が好きだよ。うちにあるツナ缶やスパゲッティやプーアル茶のうえに書いたAだって、すごく気にいってる。部屋中全部Aと書いてあってもいいくらいだ」 朝世は涙をふいて、いたずらっぽく笑った。 「じゃあ、あの新しいテレビにもAって書いていいの」 俊樹も笑ってうなずいた。 「いいよ。まだ十ヵ月はローンが残ってる。書いてくれたらありがたい」 (ふたりの名前/石田衣良)
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宮部みゆきさんと乙一さんと石田衣良さんは読んだことあるけどやっぱり好きな話です。 それ以外のかみさまの娘とゆがんだ子供はひゃっとする余韻で、ここが青山とじごくゆきっは作者カラーがはっきり出てて笑顔になり、金鵄のもとにと川崎船はもうさすがとしかいいようがなく、約束としんちゃんの自転...
宮部みゆきさんと乙一さんと石田衣良さんは読んだことあるけどやっぱり好きな話です。 それ以外のかみさまの娘とゆがんだ子供はひゃっとする余韻で、ここが青山とじごくゆきっは作者カラーがはっきり出てて笑顔になり、金鵄のもとにと川崎船はもうさすがとしかいいようがなく、約束としんちゃんの自転車はたまらない気持ちになりました。とにかく全部すごいんです❗️
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2015年の33冊目です。 2000年代に「小説すばる」に掲載された短編作品から選ばれた12編が収められています。 名前は良く知っている何人かの作家の作品を、この短篇集で初めて読みました。 道雄秀介、奥田英朗、桜庭一樹、宮部みゆき、乙一、村山由佳といった作家の作品を初めて読みました。 どの短編もストーリーに引きこまれ、まったく退屈することがありませんでした。 印象に残った作品 ・「じごくゆきっ」桜庭一樹 女子高校生が、副担任の中村由美子先生の逃避行に泣きこまれ、夜汽車で鳥取まで揺られていく物語です。 逃避行の間、中村由美子先生の子供じみた現実逃避の心情を他人事のように受け入れていく”どうにもならない” 心情の描写が、他人事のように思えない。 ・「陽だまりの詩」乙一 人間がいなくなったと思われる世界に、人間が造った”人間の機能を持った”人間のような者が、 自分を造った”人”と”自分”の死に直面することで、感情という機微なものにそっと触れていく様が切なく描かれています。 ・「金鵄のもとに」浅田次郎 浅田作品はたくさん読んでいます。 私が知っている作家で、戦争、戦後の混沌を小説にできるのは彼しかいません。 戦後間もない街角で、南方戦線から復員してきた主人公が、傷痍軍人として物乞いをしている男を見咎めます。 彼の経歴に自分が所属していて玉砕した部隊の名前が使われていた。 私が想像もできない混沌とした戦後の時間を生きていた人々。 彼らの矛盾にも似た残忍でやりようのない感情描写がなされています。 それが、安穏な日々を送る自分をひと時、内観へと導きます。 おわり
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読んだことのなかった作家のなかでは桜木紫乃がよかった。かみさまの娘。伊坂幸太郎は久しぶりに読んだけど、絶望的な状況を軽やかに描いて、かつ希望を見せるのがうまいと思う。
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初めて読む作家の作品もあり、この人はこういう作風なのか、と知ることも出来た。 奥田英朗や伊坂幸太郎、桜木紫乃、荻原浩は良く読む作家だ。 ここが青山が面白かった。村山由佳は初めて読む。小学生が主人公だと好んで読まないのだが、なかなか良かった。 動物好きなので、石田衣良のふたりの名前...
初めて読む作家の作品もあり、この人はこういう作風なのか、と知ることも出来た。 奥田英朗や伊坂幸太郎、桜木紫乃、荻原浩は良く読む作家だ。 ここが青山が面白かった。村山由佳は初めて読む。小学生が主人公だと好んで読まないのだが、なかなか良かった。 動物好きなので、石田衣良のふたりの名前は泣けた。幸せな結末で泣けるのはいい。
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2015年5月13日読了。12人の作家の短編を集めた企画本。テーマを揃えたわけではないようだが、どの作品もうまくて感心する。特に石田衣良の短編には涙した。短編は、「インパクト勝負でオチでびっくりさせる」ものよりも、大人が共感するような人物・背景を整え、「シャレたいい話」として終わ...
2015年5月13日読了。12人の作家の短編を集めた企画本。テーマを揃えたわけではないようだが、どの作品もうまくて感心する。特に石田衣良の短編には涙した。短編は、「インパクト勝負でオチでびっくりさせる」ものよりも、大人が共感するような人物・背景を整え、「シャレたいい話」として終わらせるものの方が面白く読めるように思った。(SF的な舞台設定の話はあまり面白くなかった)たくさん読めるし、短編はいいものだ。
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今をときめく人気作家12人による短編集。ほとんどの著者の本は他に読んだことがあったが、短編はエッセンスが凝縮されているので、特徴が現れやすいようだ。ちょっと軽めの作家、病気ものが得意な作家、泣かせを入れる作家など、それぞれの持ち味が出ている。 こういう本を手がかりにして好きな作家...
今をときめく人気作家12人による短編集。ほとんどの著者の本は他に読んだことがあったが、短編はエッセンスが凝縮されているので、特徴が現れやすいようだ。ちょっと軽めの作家、病気ものが得意な作家、泣かせを入れる作家など、それぞれの持ち味が出ている。 こういう本を手がかりにして好きな作家を探すのはいいかもしれない。桜木紫乃、道尾秀介、奥田英朗、桜庭一樹、伊坂幸太郎、宮部みゆき、石田衣良、乙一、浅田次郎、荻原浩、熊谷達也、村山由佳の作品が収められている。 短編とはいっても各30ページくらいあるので、きちんとストーリーが完結していて、読後感爽快である。
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短編読んでみて、ほとんどの作品を長編で読みたかったなあ、と思った。 それは短編小説として成功なのか、それとも短編の中で満足させることが成功なのか。作者や作品によってもねらいが違うだろうなあと。 ジャッペと陽だまりの詩がよかった。
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