武士という身分 の商品レビュー
戦士なのか官僚なのか。大名家臣団の実像に迫る。 経済が発展し、町人の成長も著しかった江戸社会に、戦士でありつづけたのか官僚化していたのか。城下町での存在形態を通して、実像に即した大名家臣団の姿にアプローチ。勤番の仕組みや役所の勤務形態が明かされる。 ・武士の身分集団 プロロー...
戦士なのか官僚なのか。大名家臣団の実像に迫る。 経済が発展し、町人の成長も著しかった江戸社会に、戦士でありつづけたのか官僚化していたのか。城下町での存在形態を通して、実像に即した大名家臣団の姿にアプローチ。勤番の仕組みや役所の勤務形態が明かされる。 ・武士の身分集団 プロローグ ・「平和」な時代の家臣団 ・寄生化する家臣たち ・役所勤めの世界 ・城下町からみた家臣団 ・武士集団と近世社会 エピローグ 萩藩は、毛利氏が関ヶ原合戦後に防長両国に大幅に減封されて再出発したことから始まる。当初から台所事情が苦しかったわけであるが、度重なる財政改革に限度がくると、家臣の知行を二割収公したり馳走米を命じ家臣に負担を押し付けるようになる。 借金で首が回らなくなった家臣は、「扶持方成」という選択をしたという。知行を藩に返上し、生活に必要な扶持だけを受け取る。この間、藩の管理により借金を返済する。奉公が免除される代わりに、逼塞を余儀なくされるという仕組みである。また、城下町の萩では生活が成り立たないため、在郷に居住するものもあらわれる。本書を読むと困窮がモラルの崩壊を招き、御恩と奉公の形が崩れていくことがわかる。 著者は、藤井譲治氏の研究(江戸時代の官僚制「一般的には家格や身分に縛られ、極めて閉鎖的なものと考えられている」が幕臣の昇進の様子を調べてみると、実態は「昇進とそれに伴う加増によって武士のエネルギーを引き出し、幕藩官僚制を生きた運動体たらしめていた」というもの)を俎上にあげ、萩藩の蔵元役所の実態から疑問をなげかけているが、このあたりの議論は、かみ合っているとは言えない。萩藩の蔵元役人は100石以下のものが多く、中には無給通りという二人扶持と切米三石から四石程度(小役人)のものもいる。 (足高制により人材登用を進めた幕府の事例と諸藩の小役人の事例を比較することは適当とは言えまい。藤井氏も小役人の層をとらえて、実力により昇進と加増する社会だったと言っている訳ではなかったと思う。) 本書を読むと、大名家臣団(中堅以下、小役人)の実像に迫ることが出来て面白い。
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