鍵のない夢を見る の商品レビュー

辻村深月【著】

2023/11/03

5つの短編集。それぞれが犯罪に巻き込まれた人たちの心情を焦点に話題が進む。ただの痴話げんかも辻村マジックのごとく、登場人物の気持ちを文字に起こすと不思議と特別な事のように表される。「力のある作家ってすごい」と感じた作品だった。

2023/07/22

全5話のオムニバス。それぞれ若い女性の目線でストーリーが語られる。1つ1つを読み終えるたびにため息が漏れてしまった。最後の「君本家の誘拐」は結婚、妊娠、出産、育児を実際に経験している著者だからこそ、その心情を事細かにうまく表現していると感じた。

2023/06/28

2023.06 図書館借本
.
あまりハマらなかった。世の中このくらい生きづらい生活してる人もいるよなぁという感じで、自分が普通に生きられてるのが良かったなぁと思う。最後の話は育児してたら誰もが通りそうな道なのが怖いなと思った。

2023/05/14

「かがみの孤城」の映画で観て感動したので、辻村先生の他作品も読んでみようと思い拝読。
誰かに愛されることを知らない女性達が、恋愛や結婚に振り回され、最終的に道を踏み外してしまう話。
「自分がどんな男性と付き合いたいか」という指標を彼女達は持っておらず「周りが結婚を急かすから」「なんとなく処女のままでいるのが嫌だから」という理由で、半ば投げやりに身体を預けてしまう。
最近の若者は責任を取りたくないという話を思い出した。重要事項を決定する管理職や、負荷がかかる育児は精神的苦痛を伴うので避ける傾向があるらしい。それとは別にのびのびと主体的に生きたいと願う若者の矛盾を、この作品は見事に描いている。
右に倣えと教えられてきた日本人なら尚更コンフォートゾーンから抜け出すことに抵抗があるだろう。色々な人の助けを借りながら共に成長を実感できる、そんな優しい社会になってほしい。

2023/05/10

犯罪がテーマの短編集。短編らしくオチがきいていて秀逸な作品。
他人が自分のことをどんな風に思っているのか、本当はわからないけど、誰もが勝手に想像して落ち込んだり、怒ったりしているんだと思うけど、犯罪を犯す時は特にその想像が独りよがりになっていて、病的な程になっている事が多いのかもしれない。
辻村さんは感情の表現がすごく上手だと思う。読んでいると、登場人物と一緒に恥ずかしくなったり、居た堪れなくなったり、心が揺さぶられた。

2023/04/19

５つの短編集だが、どれも読み応えがあって面白かった。どの作品も（特に1話目の『仁志野町の泥棒』）、読み終わった後、辛いとも可哀想とも違う、なんとも言えない気持ちになった。

たぶん誰でも、自分のことはよく見えていなくて、自分が思っている自分と、他人から思われている自分は違うんだと思う。
自分を見つめ直して、「あの人変わってる』と思われないようにしたい。

2023/03/03

恋や愛などという感情、恐ろしすぎる 歪だなあ、いやだなあ、と思いながらも辻村深月の描写が上手いので一気に読んでしまった
179pの真ん中の3行がとても好きでした

2023/02/25

昔読んだことがある気がする
いろんな犯罪の背景や動機をリアルに表現
この作者さんは、人のもつ綺麗で優しい部分もドロドロした感情も上手に描くよなあって思う

2023/04/19

虚栄心を燻らせると人は堕ちてしまう。

読んで晴れやかになる本ではないが、人間の生々しい感情とそれに引きずられた愚かな行動を表現していて好きな作品だった。
普段人が目を背けている人間の野性的で本能的な部分にスポットをあてて、あなたにもこんな部分あるんでしょう？と言い当てられてドキリとする感覚。

他者の作品の名前を出すのはナンセンスだと思うが、「芹葉大学の夢と殺人」は湊かなえの「告白」を思い出した。

性的な表現が含まれるので苦手な方はその辺お気をつけて。

2022/10/15

　5つの短編から成る日常生活における女性の危ういこころの内をさらけ出した物語

　タイトルが素敵だと思って手に取った

そもそも　心の中で考えて夢見ることは内容に関わらず
自由だ
煌びやかな夢も　現実味を帯びた夢も　嫉妬心から起こった反逆を願う夢も　…どんな夢でもかまわない
想像の範疇を越えさえしなければ　誰にも分からないし
誰からも咎められない

　けれど　ポロッとその想像の範疇を越え　本当にポロッとだけど　夢の片鱗が言葉の端っくれや行動のしっぽに現れてしまうことがある

そう
夢に鍵をかけて閉じ込めてしまわなかったからだ
少しだけならいいんじゃないかと　夢の方から現実世界に　一歩だけなら…と足を踏み込む瞬間があるのだ

　鍵のない夢を見るのは危険だ
想像が膨らんだり　現実が苦しくなったり　逃げ出したい衝動に駆られたりすると　人はいっぱいいっぱいになって　もう　夢なんだか現実なんだか分からないくらいに混沌とした日常を生きて　夢の片鱗が出現したことを
後悔とともに受け入れるしかなくなる

　人の生活って外からしか分からないから　素敵で華やかで楽しそうで幸せそうに見えるかもしれないけれど
他人から見た自分もまた同じに違いない

　大人になって　学生時代のことがいろいろ改ざんされながら思い出されても　自分も相手も今やさまざまな経験を重ねて進化した自分で生きているのだから　過去を掘り起こしてもなんにもならない

　恋愛も結婚、出産も夢見たようにはならない
それらにおいて　世間体や見栄は全てを台無しにする
某CMではないが　『そこに愛はあるんか』という自身の充足感と相手への思いやりが大切で　虚栄心からくる夢物語に囚われていては危険だ

『女はすべて、小動物や子供を見たら無条件に「かわいい」と言わなければならないのだろうか。私は子供も嫌いだった。』
　　　（本文より）
これも　女性とはこういったものだと都合よく自分の思惑の中に収めたいがために決めつけた身勝手な女性論を夢みる人物がいる一例だ

『俺の好きな詩人の言葉でこんなのがあります。

しあわせは　いつもじぶんのこころがきめる』
　　　（本文より）

　考えさせられることの多い作品だった