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図書準備室 の商品レビュー

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24件のお客様レビュー

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2012/05/29

 「冷たい水の羊」について云えば、解説にも触れられているが、鳥居がある広場で松の木の下の根と地面との間の拳くらいの穴に蟻がたかっていた。それを見た父親が「ほう、たくさんいるもんだな、大きい松の木は力の弱い者のめんどうをみてるんだ。」と、それに対し、主人公の目は「枝葉が伸び過ぎたか...

 「冷たい水の羊」について云えば、解説にも触れられているが、鳥居がある広場で松の木の下の根と地面との間の拳くらいの穴に蟻がたかっていた。それを見た父親が「ほう、たくさんいるもんだな、大きい松の木は力の弱い者のめんどうをみてるんだ。」と、それに対し、主人公の目は「枝葉が伸び過ぎたかわいそうな大木を蟻たちが死なせてやろうとしているのだと」映った。という、夏休みの父との想い出として語られるシーンがある。  選挙がどうたらこうたらっていう家族の会話があったり、父親は代議士かなんかなのだろう?弱い者を守ろうとする強者として位置づけられるのだろうか。それに引きかえ生贄のごとくいじめの標的にされている一見、自虐的にもとれる主人公(息子)の言葉は、弱者として映し出される気がする。  その人の生き方、人生観によって同じものを見ても受け止め方が違ってくるのだろう。 彼をいじめる連中とか強い父親像と向き合い乗り越えなくてはならない。  ちなみに表題作「図書準備室」は、主人公の一人語りが、なんかくどくて飛ばし読みだった(^_^;)

Posted byブクログ

2012/05/24

「図書準備室」・・・「なぜ30歳を過ぎても、私は働かず母の金で酒を飲んでいるのか」という言い訳と屁理屈を延々と語る主人公。その才能は、商売になりそうです。 「冷たい水の羊」・・・いじめシーンがショッキング。経験あるのか想像力で書き上げたのか。作者の筆力に圧倒される。

Posted byブクログ

2012/05/04

どろどろとしたコンプレックスの大量のマグマが噴出してくるような小説。とにかく迫力はある。文章の力は確実にある作者。 ただ内容的に、この小説を読まなければいけない・・・というか読みたい理由が全く見つからない。 一つの文章が長く読点で区切ってつないでいき、なかなか句点が現れないの...

どろどろとしたコンプレックスの大量のマグマが噴出してくるような小説。とにかく迫力はある。文章の力は確実にある作者。 ただ内容的に、この小説を読まなければいけない・・・というか読みたい理由が全く見つからない。 一つの文章が長く読点で区切ってつないでいき、なかなか句点が現れないのも特徴。

Posted byブクログ

2012/04/29

単行本を買おうかと思っていたら文庫化しました。ということでさっそく購入です。『共喰い』に続いてまた2冊ほど単行本も出ていましたし、なかなか波に乗っているようです。話題の田中さんです。 ちょっとだけ読もうと最初の文章を読むと、文のつなげかたで「おっ」と思いそのまま読むのを進めまし...

単行本を買おうかと思っていたら文庫化しました。ということでさっそく購入です。『共喰い』に続いてまた2冊ほど単行本も出ていましたし、なかなか波に乗っているようです。話題の田中さんです。 ちょっとだけ読もうと最初の文章を読むと、文のつなげかたで「おっ」と思いそのまま読むのを進めました。「図書準備室」も「冷たい水の羊」も暴力とセックスが描かれます。暴力やセックスというのは文学でよく出てくるモチーフとも言えますが、それを描くこと自体が前景化しすぎているような小説は個人的にあまり読む気がしません。田中さんの場合は表面的にはそういうことを描いているのですが、こちらに伝わってくるものはもう少し深いところにあるもののような気がしています。そのため、この作家がとても気になっています。 それは何なのだろうと『切れた鎖』を読んだ時にも思ったのですが、今回も自分の中でしっかりとした結論は出ませんでした。ただ『切れた鎖』(とりわけ所収の「蛹」)などと合わせて考えると、この作家は「生命」に関心があるように思われます。もう少し言えば、心臓が脈打つ様とか、血が体内を巡るイメージを作品から感じ取れるのです。むきだしの内臓が蠢くような目を逸らしたくなるようなイメージまで喚起されるようです。畢竟「生きること」に関して多大なる関心を持っている作家のように思えます。そしてそれが読み手にも伝わってくるのでしょうか。何となくですが、姿勢を正して読まねばならないような気がしてしまうのです。 この姿勢を正さねばならない感じが個人的に嫌いではないので、この作家が気になるのかもしれません。そういえば解説を書いている中村文則さんもそんな作家のように思います。

Posted byブクログ