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雲をつかむ話 の商品レビュー

3.4

30件のお客様レビュー

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2013/01/20

多和田葉子の作品は、おそらく講談社文庫の『犬婿入り』以来で、多分10代のころ読んだその作品はカミュに熱狂していたその頃の私にはピンとこなかったのだろう、全く記憶にない。あるのはぼんやりとしたイメージだけで、つかみどころのない作家なのだろうと思っていた。 大晦日になって、2012...

多和田葉子の作品は、おそらく講談社文庫の『犬婿入り』以来で、多分10代のころ読んだその作品はカミュに熱狂していたその頃の私にはピンとこなかったのだろう、全く記憶にない。あるのはぼんやりとしたイメージだけで、つかみどころのない作家なのだろうと思っていた。 大晦日になって、2012年最後の読書をどうしようかと本屋で立ち止って、評判になっていたこの本を選んだ。理由は、現代文学で世間一般の文学ファンから評価を得る書き手の最新作に触れたかったから。 ついていけなかった、というのが感想だ。 勿論、とおりいっぺんの内容は理解したつもりだし、作者の技巧を意識して再読し、仕掛けを解きほぐそうとした。ただ、ドイツに長く住む著者の日本語へのこだわりの異質さに寄り添うことができず、ただ単に物語を楽しんだ、という程度に留まっている。たしかに物語は面白かった。だが、なんというか、憧れるほどのものではない。期待しすぎたのだろうか。もしかしたら、群像2012年1月号の沼野充義との対談の印象が強すぎて、作品と向かい合うことができなかったのかもしれない。 章別の「犯人」に関わる内容は以下の通り。(もちろん、この作品は「犯人」をめぐるばかりではない為念) 1.犯人(フライムート)からの手紙 2.文芸誌盗難 3.政治犯Z 4.牧師による殺人 5.マボロシさんのビデオ 6.亡命詩人 7.無賃乗車のオズワルト 8.夫殺しのベアトリーチェ 9.マヤと紅田① 10.マヤと紅田② 11.飛行機の中で私がナイフ所持 12.犬を放し飼い なお、8章までは実話だと本人が語っている(「群像」2012年7月号)。

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2012/11/23

「雲をつかむ話」(多和田葉子)を読んだ。とりとめもなく語られていく事柄が、実はある一点を軸に回っており、なにものかに囚われる漠然とした予感若しくは恐怖なのかもしれない。多和田さんの紡ぐ緩やかなうねりの中で心地よい「酔い」を味わうことができます。ラスト40頁にすべてが結実する傑作。

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2012/09/08

境界型の精神世界を、 小説という媒体を透してのぞかせてもらった気分。 最後の女医とのやり取りで、 自己同一性に対する不安や混乱が、 寛解に向かえば良いのにと思った。

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2012/09/04

この人の的確な表現力がまるで目の前にその情景が広がるような手触り感のある世界を創る。だから現実だと錯覚してしまいそうになるが、物語は過去か現在か妄想か又聞きのゴシップか、人物も出来事も錯綜していて、まさしくタイトルの『雲をつかむ話』に相応しい物となっている。

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2012/08/19

ただようような、透明な文体に惚れました。物語になるようでならないところも、すごくいい。久々に、好きな本に出逢えました❤敬愛する庄野さんにすこし近い気がする。

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2012/08/16

人は一生のうち何度くらい犯人と出逢うのだろう。犯罪人といえば、罪という字が入ってしまうが、わたしの言うのは、ある事件の犯人だと決まった人間のことで、本当に罪があるのかそれともないのかは最終的にはわたしには分からないわけだからそれは保留ということにしておく。

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2012/07/01

初めて読む多和田葉子。 新聞の書評で興味を覚えて読んでみたのだが、いつもこんな不思議な話を書く人なのだろうか? ドイツ在住の小説家の語りだったので、あら?これはエッセイだった??とはじめ戸惑った。 時間の流れや場面の変化がわかりにくく、ふわふわした浮遊感を感じながら必死に追いつ...

初めて読む多和田葉子。 新聞の書評で興味を覚えて読んでみたのだが、いつもこんな不思議な話を書く人なのだろうか? ドイツ在住の小説家の語りだったので、あら?これはエッセイだった??とはじめ戸惑った。 時間の流れや場面の変化がわかりにくく、ふわふわした浮遊感を感じながら必死に追いつこうとするが、夢の話だったり、現実の話だったり。 タイトル通り「雲をつかむ」ような話で、ちょっと苦手…。 つまらない、とかではなく、苦手なので星2つにしちゃいました、ごめんなさい。 他人の頭の中をのぞくとこんな感じなのかも。

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2012/06/10

相変わらず不思議ワールド。飛行機内で周りの乗客について思いを馳せるところが、多和田さんがいつもしている思考なのかなあと、作家の頭の中を覗いたような気持ちになった。

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2012/06/08

怖いもの見たさでついつい怖いものに近づきたくなってしまうという著者のキャラクターが呼び寄せるのか、この作品では著者自身の身辺に「犯人」たちが、次から次へとたち現れる。 その妄想とも夢ともいえぬドラマ性のある登場に、著者は翻弄されリアルな感情を引き出されていく。事件が人を呼び寄せ...

怖いもの見たさでついつい怖いものに近づきたくなってしまうという著者のキャラクターが呼び寄せるのか、この作品では著者自身の身辺に「犯人」たちが、次から次へとたち現れる。 その妄想とも夢ともいえぬドラマ性のある登場に、著者は翻弄されリアルな感情を引き出されていく。事件が人を呼び寄せるのか、人が事件に近づいていくのか定かではないが、あまたの数の殺人者や犯罪人が著者の人生に流入してくるところは実に怖い。 虚実ないまぜの混沌とした小説作品だ。それが空想の世界であるかどうかは著者以外に知りようがないのだが、、、まさにこれは雲をつかむ話。

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2012/05/19

+++ 人は一生のうち何度くらい犯人と出遭うのだろう――。 わたしの二ヵ国語詩集を買いたいと、若い男がエルベ川のほとりに建つ家をたずねてきた。彼女へのプレゼントにしたいので、日本的な模様の紙に包んで、リボンをかけてほしいという。わたしが包装紙を捜しているうちに、男は消えてしまった...

+++ 人は一生のうち何度くらい犯人と出遭うのだろう――。 わたしの二ヵ国語詩集を買いたいと、若い男がエルベ川のほとりに建つ家をたずねてきた。彼女へのプレゼントにしたいので、日本的な模様の紙に包んで、リボンをかけてほしいという。わたしが包装紙を捜しているうちに、男は消えてしまった。 それから一年が過ぎ、わたしは一通の手紙を受け取る。 それがこの物語の始まりだった +++ なんだか不思議な感触の物語だった。物語というよりも、エッセイのような語り口で、長い長い日記を読んでいるようでもある。語り手の「私」の心の底でいつもうごめいているのは、「禁固刑」とか「犯人」とかで、人生で何人の犯人に出会ったかと考えてみたり、狭い独房に入れられる自分を想像してみたりしている。そのせいか、そんな話題や出来事を引き寄せ、引き寄せられたりもするのである。夢と現の境目もあいまいなことがあり、現実のことかと思って読んでいると夢の中の話だったりして驚かされながらもほっとさせられることが幾度となくある。実際のところ雲をつかむような一冊である。

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