終点のあの子 の商品レビュー
終電のあの子
女子高生が主役の短編集です。 女子高育ちの方なら分かると思うのですが、進路に迷い、交友関係にギクシャクする青春時代のエッセンスが詰まった珠玉の短編集です。 柚木麻子の真髄はここにありといったかんじなので、ぜひ読んでみてください。
nawoo
よくある、ふとしたきっかけで仲良くなった友達とその後数年に渡って紡がれるドラマチックなお話、的なぬるい展開ではなく、あくまで根本が異なる人間同士は真に分かりあうことはできないという価値観のもとに物語が描かれているところが好きだった。自分が今体感している世界の認識と近いものを感じる...
よくある、ふとしたきっかけで仲良くなった友達とその後数年に渡って紡がれるドラマチックなお話、的なぬるい展開ではなく、あくまで根本が異なる人間同士は真に分かりあうことはできないという価値観のもとに物語が描かれているところが好きだった。自分が今体感している世界の認識と近いものを感じる。 物語において人間関係というテーマが描かれる時、末永く続く良好な関係や、壮絶な喧嘩別れ、そのあとの仲直りなどの分かりやすい場面がフューチャーされがちだが、今作はそうではない。それぞれの人物が交流するのは高校3年間の中でも限られた瞬間のみで、すれ違ってしまったあと、関係が修復しないままそれぞれの話は終わってしまう。後にふとお互いの間に起こったことを思い出すことこそあるかもしれないが、おそらく将来、彼女らが直接交流することはもうないだろう。 それでも、その交差した一瞬が彼女らの人生に与えた影響は少なくないはずだ。 後の人生を大きく変えてしまうようなわかりやすくインパクトのある転機より、この作品に描かれているような、直接的に未来に繋がるわけではないけど、その後の生き方に影響を与えるような未解決で煮え切らない出来事の方が、現実を生きている私にとってはリアリティがあり面白く感じた。 あと柚木麻子、人のプライドという目に見えない概念を具体的に描くのが上手すぎる。 敵に回したら怖いタイプの人物なのかも、と思った。
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私立女子校の生徒たちを中心とした連作短編だった。 その年頃の女の子たちの関心ごとや、クラスでのカーストや、成長過程における心の揺らぎがぎゅうぎゅうに詰まっている。苦しいこともたくさんあってあんまり楽しいことばかりではないけれど、彼女たちを見守るような気持ちで読んでいた。 特によかったのは『ふたりでいるのに無言で読書』の恭子と早智子。気取らずに時間を共に過ごせる2人が素敵だった。お互いを尊重していてこのまま親友みたいになれるかなと思ったけれど、学校のグループってのは本当に厄介で。簡単に抜けて別のグループの子と仲良くすることはできないのである。それはよくわかる。 ただ、恭子はこのままでいいの?と問いかけたい。学校を卒業したらグループなんて関係なくなるから、また仲良くなれたらいいのにな、と淡い期待をしておく。
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中高生の頃の、友達やクラスメイトにどう思われているか仕方がなかった感情を鮮明に思い出した。懐かしい気持ちになる小説だった。高校生の頃は教室でのポジションが人生のすべてだったし、周りから嫌われないように必死で窮屈だったと思う。私も小説の登場人物と同じように早く大人になりたいと思っていたけど、大人になっても意外と不自由だと思った。自由に生きていきたい。 私も朱里がいたら嫌いになる。みんなが普通でいようとしている中でわざと特別でいる様子が気に食わない。本当は自分も自由にいたいし羨ましいからだと思った。敢えて意地悪をする勇気はないが、関わりたい子ではないかも。大人になった朱里が最後、高校の頃の反省を生かして、杉ちゃんに自分から歩み寄っていたところが良かった。相手を見下していると自然と態度に出てしまって、相手も見下されてると気づいてしまう。気をつけないといけない。 ・あんな風になれるまで、一体どれくらいかかるのだろうか。自分の力で可愛いものや高いケーキが買える綺麗な大人の女性。ああなったら、友達をねたんだり、見下したりしなくてよくなるのだろうか。
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プロテスタント系のお嬢様学校が舞台。この年頃特有の自己顕示欲とか、友達との微妙な関係性とか懐かしく思いつつ読んだ。恭子と保田さんの話が1番好きだった。2人の友情がずっと続けばと思ったけど、グループが違うし、ひと夏の思い出で終わるのもあるあるかもしれない。
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人と違うことを認められるようになるのはいつからだろう。果たして今、真の意味で他人を認められているか。多様性を肯定できているか。一体誰が希代子を、朱里を、恭子を、責められるのか。良い人も悪い人もいる。「どんなに良い人間でも、きちんと頑張っていれば、誰かの物語では悪役になる」という。...
人と違うことを認められるようになるのはいつからだろう。果たして今、真の意味で他人を認められているか。多様性を肯定できているか。一体誰が希代子を、朱里を、恭子を、責められるのか。良い人も悪い人もいる。「どんなに良い人間でも、きちんと頑張っていれば、誰かの物語では悪役になる」という。作中みんなが頑張っているわけではない。それでも生きている。どうしようもなく他を、違いを意識しながら。違いを認識できるのは幸いにして不幸なのかもしれない。 柚木麻子のデビュー作でありながら、柚木麻子の作品だということを意識せずに純粋に楽しめた。胃もたれの度合いは低く、切ないがさらさらと味わえた。
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プロテスタント系女子校という舞台設定に惹かれて読んだ。 私もキリスト教の女子校に通っていたけれど、色々と違うなと思った。 高校生の時ってこんなに子どもだったっけ?中学ならわかるけど…と思ってしまった。 こんなスクールカースト意識したことなかったから、私が保田早智子みたいな周りを気...
プロテスタント系女子校という舞台設定に惹かれて読んだ。 私もキリスト教の女子校に通っていたけれど、色々と違うなと思った。 高校生の時ってこんなに子どもだったっけ?中学ならわかるけど…と思ってしまった。 こんなスクールカースト意識したことなかったから、私が保田早智子みたいな周りを気にしないキャラだったのかな…。 高校生か大学生の時に読みたかったな。その時の自分はどう思ったんだろう。 「桐島、部活やめるってよ」の女子校版って感じがした。
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出会えて良かった。大好きでした。 言葉の表現が繊細で、日本語って美しいなと思えた作品。 まんま自分の学生時代でした。 女の子の繋がりって、複雑なんですよね。 脆くて儚い。 嫉妬心や独占欲から、間違った方向に簡単に進んでしまう。 苛め自体許されたものではないと分かってはいますが...
出会えて良かった。大好きでした。 言葉の表現が繊細で、日本語って美しいなと思えた作品。 まんま自分の学生時代でした。 女の子の繋がりって、複雑なんですよね。 脆くて儚い。 嫉妬心や独占欲から、間違った方向に簡単に進んでしまう。 苛め自体許されたものではないと分かってはいますが、フィクションの世界なので許してください。経緯から、それすら美しく感じました。 だって希代子は… 『フォーゲットミー、ノットブルー』は、この先何度も読み返したいと思えた素敵な作品でした。 (2章と4章がいまいち好きになれなかったのは、男嫌いのせいかな)
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自分が高校生に戻ったみたいで悶えながら読了。いじめまで行かないでも確実にあるゆるい悪意に心当たり。複雑な家庭環境を「映画みたいだねー!」って珍しがって家まで見にくる感じがすごい私立女子校。それで傷つく相手がいることは想像できない、だって自分は絶対に守られてる存在だから。でもその守...
自分が高校生に戻ったみたいで悶えながら読了。いじめまで行かないでも確実にあるゆるい悪意に心当たり。複雑な家庭環境を「映画みたいだねー!」って珍しがって家まで見にくる感じがすごい私立女子校。それで傷つく相手がいることは想像できない、だって自分は絶対に守られてる存在だから。でもその守ってくれてる環境に対して窮屈さつまらなさを感じてる。それって驕りだし上から目線で世の中見ててキモいよ?
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とある中高一貫校の女子高に通う女の子達の物語。 このぐらいの年齢の子達の友情、嫉妬や羨望、劣等感といったような、ぐちゃぐちゃした難解な心の動きがとても細やかに描かれている。 何者かになりたい、と思い、もがき悩み、そして、痛い思いをし、やがて何者にもなれない、と気がつくときに大...
とある中高一貫校の女子高に通う女の子達の物語。 このぐらいの年齢の子達の友情、嫉妬や羨望、劣等感といったような、ぐちゃぐちゃした難解な心の動きがとても細やかに描かれている。 何者かになりたい、と思い、もがき悩み、そして、痛い思いをし、やがて何者にもなれない、と気がつくときに大人になった、というのかな、なんてね。
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