君が降る日 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
取り戻すことができない日常と、今目の前にある日常。その間に取り残された志保と、五十嵐。失意の中で癒えることのない傷を秘めて生きていく。読んでいくうちにどんどん傷が抉られていくような痛さを胸に感じ、読み終えた時にふと空を仰ぎ物語の続きを空想してしまいそうになる。
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『君が降る日』読了。 表題作だけかと思ったら短編集だった。 表題作を図書館でぱら読みして内容が気になったから借りてきた。 亡くなった恋人という存在に繋ぎ合わされた縁というのも皮肉なもの。 大切な人を喪った時の人間の抱えるやりきれなさ、切なさは筆舌に尽くしがたい。 志保は彼を喪い、...
『君が降る日』読了。 表題作だけかと思ったら短編集だった。 表題作を図書館でぱら読みして内容が気になったから借りてきた。 亡くなった恋人という存在に繋ぎ合わされた縁というのも皮肉なもの。 大切な人を喪った時の人間の抱えるやりきれなさ、切なさは筆舌に尽くしがたい。 志保は彼を喪い、五十嵐さんは幼い頃に両親を亡くし、そして大学の時に友人を自分の運転のせいで喪ってしまった。 五十嵐さんはとても重たいものを抱えた人で、多分その重たさは並大抵の女性では支えきれずに窒息してしまう程だろう。 結果的に志保が彼を選べなかったのも無理はないし、それは自然なことのように思う。 けれど私は読みながら身勝手にも、志保が彼の悲しみを癒して、彼が彼女の悲しみを癒してくれるんじゃないかと期待しながら読んでしまっていた。傷の舐めあいみたいになるけれど、五十嵐さんのほの暗さを、志保の明るさでゆるめてあげてほしかった。 まさかあんな半端なところでお話が終わっちゃうとはなぁ。もっとその後の二人のかかわり合いが見てみたかった。 五十嵐さんは島本さん作品の『波打ち際の蛍』の蛍に似ている。 とても孤独で、人の温もりを求めている人。 心の奥には鉛みたいに真っ黒い穴がぽっかりと空いているのに、それをそのまま、埋めようとも隠そうともしないで何もかも諦めてしまっているような。 そういう人って目が離せなくてつい気になってしまう。 『冬の動物園』は割とあっさりしたお話だった。いい意味で島本さんっぽくない。 『野ばら』は何だかままならないお話だった。佳乃のこと、絶対に祐は好きだっただろうに、佳乃は祐の兄の聖人を、聖人は佳乃の妹の深雪を好きってなぁ。 先に聖人と出会ったのは佳乃なのに。祐も、佳乃の優しさにいつだってやられていたし大切にしていたのに、肝心の佳乃が恋愛関係を祐に求めなかったばかりに二人は疎遠になってしまった、 これももうちょっと長編になっていたら、多分祐と佳乃は付き合っていたんじゃないかなぁ。というか、個人的にそうなってほしかった。
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恋人の死を題材に取り扱うこと、読むのに抵抗あったけど、切なくて痛々しくて、本当に死さえなければ進んだ変化したものだったかもしれないのに‥と感じる一編だった。でも決して不快ではない。なんでだろう。文章が優しくて、寄り添ってくれていたからかもしれない。
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他人同士が関係を結ぶ穴というか、孤独が伝わってくる話で良かった。冬の動物園がいい具合に休ませてくれるし。祐に惹かれる。
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表題作については、恋人を亡くしてしまった女子大生の悲しさや喪失感といったものよりも、自分を責めてしまう五十嵐さんの方に感情移入してしまった。 「冬の動物園」の年下君はとてもいい味出していて、好みのタイプ。 「野ばら」に一番切なさを感じた。 自分を想ってくれる人には恋ができず、その...
表題作については、恋人を亡くしてしまった女子大生の悲しさや喪失感といったものよりも、自分を責めてしまう五十嵐さんの方に感情移入してしまった。 「冬の動物園」の年下君はとてもいい味出していて、好みのタイプ。 「野ばら」に一番切なさを感じた。 自分を想ってくれる人には恋ができず、そのお兄さんの方を好きになるというのも、パターン化されているかもしれないけど、その上をいってくれました。
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恋人を事故でなくした彼女とその車を運転していた彼 お互いの共通点である「哀しみ」 そして惹かれあう2人 決してハッピーエンドではないけれどとてもせつなくてせつなくて、恋愛の単純ではない奥深さがココロに響いた本でした
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切ない・・・ 三話とも。二話目は、ラスト明るいけど。 設定としては、どの話も少女漫画にありがちなものなんだけど・・・ 心情の描写が、島本理生独特のしっとり感というか、冷んやりするのに、嫌じゃない不思議な感覚を何度か味った。 話も、表現もキレイで好きなんだけど、ちょっと美しく描き...
切ない・・・ 三話とも。二話目は、ラスト明るいけど。 設定としては、どの話も少女漫画にありがちなものなんだけど・・・ 心情の描写が、島本理生独特のしっとり感というか、冷んやりするのに、嫌じゃない不思議な感覚を何度か味った。 話も、表現もキレイで好きなんだけど、ちょっと美しく描き過ぎかなぁとも感じてしまう。「よだかの片想い」とか他の作品でもそれは、感じてしまった。 桜沢エリカのマンガのような感じかな。オシャレ感が抜けなくて、生々しさが希薄と言うか。 でも、こういうタッチで書ける人はなかなか居ないので、貴重な作家だと思う。
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悲しみを見ないふりするのは少しだけ上手になっていた。 自分で作った鈍感をオブラートにして、 感情も喜怒哀楽もすべて包み込んでしまえばいいのだ。 この言葉が物語る世界は、 現実そのもので、 物音鳴らすことなく 自分の近くで存在をあらわにするなあ、と 思ったのでした。
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「君が降る日」「冬の動物園」「野ばら」の三本立て。 「君が降る日」は大好きな彼が他界し、 空虚な気持ちをどこにもやれないまま日々を暮らす 主人公と、その彼が死んだ原因をつくった彼の友達が メインとなって織りなすストーリー。 気分がちょっと重くなる作品だった・・・ 他の二編は...
「君が降る日」「冬の動物園」「野ばら」の三本立て。 「君が降る日」は大好きな彼が他界し、 空虚な気持ちをどこにもやれないまま日々を暮らす 主人公と、その彼が死んだ原因をつくった彼の友達が メインとなって織りなすストーリー。 気分がちょっと重くなる作品だった・・・ 他の二編はくすっと笑えたり、若いなあいいなあって思えたり比較的ライト。 「冬の動物園」で年下の高校生の男の子が凄く大人びてて 主人公の美穂があれよあれよと結局彼のペースにはまっていくのが読んでいて面白い。
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よかった。一番好きなのは野ばらだった。大切すぎる異性の友達は本当に貴重で危ういもの。大切に思う気持ちのバランスの不安定さよくわかる。穏やかな終わり方でよかった。
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