江戸の流行り病 の商品レビュー
過去の日本で、しかも歴史上では比較的最近の江戸時代にフォーカスをあてた人々と麻疹との戦い方、付き合い方が興味深かった。禁忌として食べてはいけないもののリストが多いが、これは外食文化が花開いていた江戸や京などの大きな都独特のものというのが面白い。科学でメカニズムが解明されていなかっ...
過去の日本で、しかも歴史上では比較的最近の江戸時代にフォーカスをあてた人々と麻疹との戦い方、付き合い方が興味深かった。禁忌として食べてはいけないもののリストが多いが、これは外食文化が花開いていた江戸や京などの大きな都独特のものというのが面白い。科学でメカニズムが解明されていなかった時代、疫病との戦いはとても怖かっただろうと思うが、風刺画や戯曲など芸能にも取り入れられていたあたりに逞しさを感じる。
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江戸時代、麻疹(はしか)は命にかかわる病気で、20数年に一度のスパンで大流行する病気だった。本書では、江戸時代の人々が麻疹にどのように向き合っていたのか、医療行為・医術書・戯作・麻疹絵などを通して「江戸時代的麻疹世界」を見ていく。 麻疹の大流行を何度も経験するなかで、江戸時代の...
江戸時代、麻疹(はしか)は命にかかわる病気で、20数年に一度のスパンで大流行する病気だった。本書では、江戸時代の人々が麻疹にどのように向き合っていたのか、医療行為・医術書・戯作・麻疹絵などを通して「江戸時代的麻疹世界」を見ていく。 麻疹の大流行を何度も経験するなかで、江戸時代の麻疹治療や禁忌とされるもののの精度があがっていったこと、疫病退散に用いる絵や様々な創作物も、医学的知識を盛り込んだ実用的な内容に変化していったことなど、流行病との接し方が変化していく様は面白い。 流行病による困窮者の存在や、彼らへの救恤を官民あげて行っていたことも、現在に通ずるものもあり興味深い(有力商人による救恤は、打ちこわしされないための予防措置だろうが)。
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※このレビューにはネタバレを含みます
江戸の流行り病というテーマではあるが内容のほとんどは麻疹に関する記載である。麻疹以外にも天然痘や梅毒、インフルエンザ、コレラなど江戸時代には色々とエピデミックはあったはずなので、それらについて幕府や庶民にもどれ位の影響があり、それにどう対応して行ったのかも知りたかった。
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江戸時代は医療や養生のマニュアル化・商品化が進行した時代だった。医者もマニュアル化が進む。 疹毒を体から追い出すための麻疹禁忌は、瓦版などにもなって広く認知され実践されたが、これは特に都市部で広がっていた現象であり、古方派の医師には力のない後世派の医師のやることと批判されていた...
江戸時代は医療や養生のマニュアル化・商品化が進行した時代だった。医者もマニュアル化が進む。 疹毒を体から追い出すための麻疹禁忌は、瓦版などにもなって広く認知され実践されたが、これは特に都市部で広がっていた現象であり、古方派の医師には力のない後世派の医師のやることと批判されていた。 流行病は疫学的性質だけでなく、政治や社会のあり方にも強く規定される。
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これは実に面白い。江戸時代に数十年に一度流行した麻疹を当時の世の中がどうとらえたか、、という話。食事や房事の禁忌など、当時の医療風俗がよく理解できる。
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麻疹(の認識)という視点から見る江戸。 毎年流行る小児病、という今のはしかとは違い、江戸の頃の麻疹は20年くらいの周期で流行る怖い病気だった。 それだけ間があくと免疫のある人は少ないし大人がかかれば重症化するし医者だって慣れてない。 ということで江戸の麻疹はかなり大ごとのイベント...
麻疹(の認識)という視点から見る江戸。 毎年流行る小児病、という今のはしかとは違い、江戸の頃の麻疹は20年くらいの周期で流行る怖い病気だった。 それだけ間があくと免疫のある人は少ないし大人がかかれば重症化するし医者だって慣れてない。 ということで江戸の麻疹はかなり大ごとのイベントだったらしい。(明治以降、人の行き来が増えて毎年流行るようになってからは存在感が薄れ、ワクチン開発により脅威ではなくなった) 麻疹大流行で「摂るべきもの」が高値になったり「しちゃいけないこと」の商売(風呂屋魚屋吉原など)に閑古鳥が鳴いたりしたそうな。 今より死が近いから藁にもすがる思いで従うのだろうと思いつつ、今でもこの手の踊らされ方が繰り返されるのはもう「国民病」と言っちゃっていいのかね。 と、上から眺めていたのだけれど、騒ぎの様は最近みた光景にもよく似ている。 不安を煽る人がいて、善意で広める人がいて、便乗して商売をする人がいて(でもその人も騒ぎで職を失ったのかもしれない)、避けるべきことばかりが増えていく。 悪いらしいのはわかる。怖い。でもどうすれば防げるのかわからない。だから安心できそうなものに闇雲にすがる。 そういうのが理解できるようになってしまった。 悲惨なばかりではなく、笑ってしまうような強かさがあってほっとする。 儲けが減った人たちが麻疹神を殴ろうとするのを儲けた医者らがとどめる絵なんかがある。 揶揄しつつも儲けやがったやつらを倒せというヘイトに走らない(ように見える)のはすごいな。 仮想敵をまさに仮想の麻疹神に押し付ける平和の形は強い。 あとがきにある「医療史は生活史」という言葉がよくわかる面白い本だった。 関連 疱瘡絵「浮世絵のなかの江戸玩具」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4784509364
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江戸時代の年表には、時おり「麻疹流行」という記事が出てくる。それが周期的なものであることは江戸期から意識されており、少しずつ医学的知識が蓄積されていく過程を本書は明らかにする。一方、出版業界などはそれに便乗してひと儲けを企んでおり、パニックの要因ともなったという。このような麻疹に...
江戸時代の年表には、時おり「麻疹流行」という記事が出てくる。それが周期的なものであることは江戸期から意識されており、少しずつ医学的知識が蓄積されていく過程を本書は明らかにする。一方、出版業界などはそれに便乗してひと儲けを企んでおり、パニックの要因ともなったという。このような麻疹に様々な関するエピソードがあざやかにまとめられており、きわめて有用な本にまとまっている。 本来、江戸期の疾病史として企画されたもののようで、筆者には続けて他の病気に関する著作も期待したくなった。
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