豊臣平和令と戦国社会 の商品レビュー
10数年前に読了。 中世社会を覆う自力救済の考え方は、村落間紛争から大名間戦争に至るまで浸透していたが、全国統一を図る秀吉政権は喧嘩停止の法令を出し、政権が構築した「平和」の論理への服従と、それへの違反を私戦と位置づけ、政権への重大な敵対行為とみなす基本論理とした。但し、政権の認...
10数年前に読了。 中世社会を覆う自力救済の考え方は、村落間紛争から大名間戦争に至るまで浸透していたが、全国統一を図る秀吉政権は喧嘩停止の法令を出し、政権が構築した「平和」の論理への服従と、それへの違反を私戦と位置づけ、政権への重大な敵対行為とみなす基本論理とした。但し、政権の認める戦闘は公戦であり、つまり「戦争」を管理するという意思を上から一方的に定めたものである。 具体的には、大名へは惣無事令、村落へは喧嘩停止令、海の民へは海賊停止令となって発令される。有名なところでは、後北条氏と真田氏との名胡桃城問題に際しての、後北条氏滅亡にいたる端緒は、惣無事令違反を問うたものだ。また、喧嘩停止令から派生して、豊臣政権期と徳川政権期での刀狩の実相と意味の違いについての論述もなかなか面白かった。村落間紛争の論文は、学生時代に近世史ゼミで活用させてもらったような気がします。(笑) 戦国社会の果てしなく厳しい「自由」の論理に対し、統一政権が作り出す「平和」の論理の対峙を鮮やかに描き出した好著。
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