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解錠師 の商品レビュー

4

77件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

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  3. 3つ

    19

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2012/02/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

幼少時の事件がきっかけで自分の声を失った主人公・マイクル。 プロローグで、彼はどうやら刑務所の中で10年を過ごしてきたことがわかる。 彼はその時点でも声が出せない。彼がこれまで人生について述懐しようとするシーンでプロローグは終わる。 声を失ったマイクには、二つの才能が与えられた。 ひとつは絵を描くこと。もう一つはどんな錠でもあけることができる解錠師《ロック・アーティスト》となれたこと。 前者は彼の恋心を表現する唯一の手段であり、後者は暗い犯罪に身を落とす象徴のようでもあった。 1999年の夏と2000年の夏を交互に語る一人称小説であり、 主人公が口の訊けない人物である小説を書くとなると、高い技術を要すると思うがしっかり描きこめている。 ミステリというよりは青春小説に近いが、 トマス・H・クックの「緋色の記憶」「夏草の記憶」のようでありながら、 最後に希望を持たせる描写には胸をうたれた。

Posted byブクログ

2012/01/20

面白かった。ストーリーテリングに秀でているというわけでもないのだが、気がつくと読み終えていたという感じ。口のきけない少年、トラウマ、錠、犯罪者集団、恋──ありがちな要素が完璧な割合でブレンドされているので、ただのよくあるミステリでは決してない。 言葉を失った主人公の一人称が読...

面白かった。ストーリーテリングに秀でているというわけでもないのだが、気がつくと読み終えていたという感じ。口のきけない少年、トラウマ、錠、犯罪者集団、恋──ありがちな要素が完璧な割合でブレンドされているので、ただのよくあるミステリでは決してない。 言葉を失った主人公の一人称が読み手に与える印象は大きい。そこを最大限利用して、読者の共感を誘う作者の手腕が巧い。話せないハンデなどどこ吹く風、作中のストーリーは多くの動きや会話に支えられ、少年の語りと併せて、静と動の対比が作品にメリハリを与えている。 解錠師としてのテクニックや緊張感を描くシーンも面白いが、もうひとつのストーリーである少年と少女の恋物語に惹きつけられた。言葉の代わりに得意の絵で会話するシーンは素晴らしく、少年のトラウマの真相と共に、このふたりの行く末の吸引力は半端ない。 ラストのやりとりはやられた。脳裏に焼きつくイラストと、少年の決意が余韻となって長く残る。施錠されているのは金庫だけではない。頑なな少年の心もロックされたまま。ダブル・ミーニングなタイトルの意味と、地味に計算された構成の妙に感服する秀作。

Posted byブクログ

2012/01/16

過去の事件が原因で声を発しなくなった少年が、金庫破りの天才【解錠師】として活躍する現在の姿と、そこに至るまでの過去の出来事が交互に描かれていきます。 個性的な犯罪者達、犯罪組織内の軋轢、手に汗握る金庫破りが楽しいクライムサスペンスでもあり、過酷な現実を生きる少年の心模様や初恋が切...

過去の事件が原因で声を発しなくなった少年が、金庫破りの天才【解錠師】として活躍する現在の姿と、そこに至るまでの過去の出来事が交互に描かれていきます。 個性的な犯罪者達、犯罪組織内の軋轢、手に汗握る金庫破りが楽しいクライムサスペンスでもあり、過酷な現実を生きる少年の心模様や初恋が切ない青春小説でもありました。 全く喋らず容姿端麗で心に傷を持ち、絵と金庫破りの天才的な才能を持つという主人公はこれだけ聞くと超人化しているのですが、この一風変わった少年に対する周囲の反応と、少年の語りのギャップが楽しく嫌味がないです。 建屋に侵入し、セキュリティーと迫る時間に怯えながらの息詰まる金庫破りのシーンは緊迫感と迫力がありわくわくします。 ぴたりと時間が止まり、金庫と少年の「二人」だけになったような描写が美しく、没頭していく少年の姿がかっこいいです。 一方で、一途な少年が恋をした少女と絵で心を通わせていく過去の物語がロマンティック。 必ず幸せが待っているはずだと思わせるラストが爽やかでした。

Posted byブクログ

2012/01/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

どんないきさつで解錠師になったのか。 幼少の頃に受けたショックで口がきけない主人公の半生を描く。 終止しゃべる事のない、若き解錠師が中々ハードボイルドでいいキャラ。 彼女と絵で会話する所は結構好きなシーン。 もちろん南京錠や金庫などを解錠して行く様は、超一流の金庫破りに取材しただけあって、緻密でリアリティがあって醍醐味がある。 もう少し人物相関が緻密だったらという所だけが残念。 ミステリーというよりもむしろ青春小説といったテイストだった。

Posted byブクログ

2012/01/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

装丁のイメージとはちょっと違い、とても瑞々しい青春ストーリー。 幼い頃に心の傷を負い、言葉を話さない主人公。ひょんなきっかけから犯罪への道へと足を踏み入れてしまい今は監獄にいる。 どんないきさつがあって犯罪と関わるようになり今に至るのか、その前段で過ごしたまっとうな日々と彼女との出会い。2つの時間軸を交互に描きながらストーリーが展開される。 犯罪もからみ、ミステリ仕立てではあるが中心となる謎は犯罪自体ではなく主人公の過ごしてきた人生と未来。自分的にはとても活き活きとした物語だと感じた。 ただ、青臭い、僕と彼女の物語が好きでない人はそれほどおもしろくないかも。

Posted byブクログ

2012/01/09

Lock Artist8歳で親を亡くし、同時に言葉を失った少年マイクル。彼には、絵を描く、そして鍵を開けるという2つの才能があった。愛しのアメリアを危険から遠ざけるため、「デトロイトの男」に絡め取られ、転がる石のように犯罪に手を染めていくマイクル。彼はいつしか凄腕の金庫破りとなり...

Lock Artist8歳で親を亡くし、同時に言葉を失った少年マイクル。彼には、絵を描く、そして鍵を開けるという2つの才能があった。愛しのアメリアを危険から遠ざけるため、「デトロイトの男」に絡め取られ、転がる石のように犯罪に手を染めていくマイクル。彼はいつしか凄腕の金庫破りとなり、それ故にアメリアとは断絶した生活を送っていた。彼に明るい未来はやってくるのか。面白いけど、いまいち。まず2つの時系列を並行して進める書き方に特に効果が感じられず、ただ鬱陶しい。ヒロインのアメリアのメンヘルビッチなキャラクターを考えるとこんなオチはアンリアル。装丁はわりと好きです。

Posted byブクログ

2011/12/24

ミステリより青春小説のくくりにするべきかもしれない。 この年末にきて、2011年の海外ミステリのベスト1か2か迷う1冊に遭遇。 おもしろかったなー。 ミステリアスな主人公のマイクルは、幼少期のでき事で口をきくことができなくなった17歳の少年。解錠師としての天賦の才能から犯罪の道へ...

ミステリより青春小説のくくりにするべきかもしれない。 この年末にきて、2011年の海外ミステリのベスト1か2か迷う1冊に遭遇。 おもしろかったなー。 ミステリアスな主人公のマイクルは、幼少期のでき事で口をきくことができなくなった17歳の少年。解錠師としての天賦の才能から犯罪の道へ流されていくのが、思春期の少年の真っ正直な正義感やかたくななほどの矜持からだというのが切ないようです。 青春期のままならなさ、大人たちの狡知に抗えない幼さが、いっそいとおしいくらいで。 しゃべれないマイクルの心の中の独白という語りが、彼の繊細さをあぶりだすようで魅力的でした。 最終的に彼にもたらされた希望が、せつなくも美しいと思いました。 文句なく5つ星。

Posted byブクログ